ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

私たちにできること。 新型インフルエンザとの戦い (NHKプロフェッショナル仕事の流儀)  

私たちにできること。 新型インフルエンザとの戦い
進藤奈邦子
【前向きになる度】★★★☆



パンデミックを阻止せよ」でも触れられていた、
2010年にはWHOインフルエンザ担当官であった新藤奈邦子氏による本。

WHOでの活動概要だけでなく、新藤氏がなぜ医学を志し、どのような過程を経てWHOに至ったかを照会する。職場としてのWHOの話など、他では知ることができない情報も多い。
WHOの感染症対策がどのような努力と対策によって行なわれているかということも分かる。
数年前の新型インフルエンザの際にも、WHOの対応や方針決定がよくニュースで行なわれていた。
それに対していろいろなコメントがあったが、
本書のような裏話を読むと、その大変さを改めて痛感した。

また本書を読むと、新藤氏が順風満帆にWHOまで到達したのではなく、
様々な挫折と、その中でも続けてきた努力の成果であったことがわかる。
特に女性ならではの苦労も多く、その点を詳しく解説している。
そのため、本書後半は(これから)働く女性へのメッセージブックともなっている。

また、能力さえあればWHOが日本人には開かれた職場であるということも紹介している。

医学・インフルエンザだけでなく、WHOという国際機関について知ることができ、また「働くこと」「生きること」について、良い参考となる。
一読しておいて損はない一冊であろう。

【目次】
プロローグ プロフェッショナルの現場から
1章 私たちが知っておくべきこと
 インフルエンザ・パンデミック
 WHOとはどんな機関か
 21世紀感染症の現状
2章 私たちにできること
 ともに戦った仲間の死
 プロフェッショナルの矜持
3章 私たちは感染症とどうつきあうべきか
 人類と感染症の戦いの歴史
 感染症をめぐる大国の思惑
4章 私を突き動かしてきたもの
 「医師になる」という使命感
 脳外科医としての挫折
 私を勇気づけた恩師の言葉
5章 私が働く人たちに伝えたいこと
 国際機関で働いてみませんか
メンターをもつ
仕事とプライベートの両立

【メモ】
新藤奈邦子氏
2000~国立感染研究所感染症情報センター
2002~WHOに派遣
2009 新型インフルエンザ対策チーム統括

p45
WHO 加盟193国
日本は大口ドナー国(資金提供国)
アメリカ、ビル・ゲイツ財団、イギリス、日本(4位)
全世界のWHO職員 約2,500名、日本の拠出額に見合った職員の敵整数は150名程度だが、
実際は35名、部長職以上の幹部は2名にすぎない

拠出額と職員数でランク分け(A,B,C)
日本はA(5ヶ国のみ)、「アンダー・リブレンテッド」資金貢献に比して職員が少ない国
よって、能力さえあれば日本人に開かれた職場

p72
もともと日本では、インフルエンザは子どもの病気という認識
感染の「増幅」集団である小学生に予防接種しておけば社会全体の感染爆発を予防できるという考え方
=欧米諸国でも注目されている考え方
他の先進国では、インフルエンザは高齢者や免疫弱者の命を奪う病気=高齢者に予防接種
→日本では逆に、高齢者にも予防接種するよう変化した


p80
WHO ジュネーブ、アジア諸国と連絡するときはジュネーブ時間で早朝から昼、朝6~7時に勤務開始
現場がカナダなどに広がると夜間にも対応

p82
SARS 重要な発生情報 ハノイのWHO事務局で働いていたカルロ・ウルバニ医師
新藤氏と連絡を取っていた、高機能マスクが届く前にSARSに感染して死去


p1070-
日本では戦後の公衆衛生学が非常にうまくいき、乳幼児の死亡率も減少
予防接種も効果的だった
(旧ソ連崩壊後、予防接種率が落ちた旧ソ独立諸国では感染症が爆発的に増加した)
予防接種で守られている社会は、予防接種無しには国民の健康を守ることはできない。
現在感染症で命を落としたり、重症の後遺症で苦しむ子どもがほとんどいないのは、予防接種のおかげ。
しかし、世の中から感染症がなくなったかのように考える、認識の欠落がある。

WHO
ロジスティシャンという職種がある
世界中のどんなところでも生活空間をつくりあげる専門職

p17
WHO研修(現場に向かうセキュリティ研修)
Q 長い市街地戦の跡地で、地雷がある可能性が高い地域
トイレに行きたい時はどうすべきか
・道路脇のブッシュ ・道の真ん中 ・近くの村
こうした研修を実際に経験する

Q 国連で指定された危険地域内のホテルで宿泊
 何階に泊まるべきか
A 2~7
1=侵入者の可能性
8~ はしご車がとどかない。また7以下なら、車の屋根めがけて落ちれば助かる可能性がある

 このエントリーをはてなブックマークに追加
映画「感染列島」を見たが、これで出てくるWHOの女性は、もろに新藤氏をモデルにしている。
あたりまえだが、映画よりも新藤氏の生きてきた歴史のほうが、力を与えてくれる。
映画を見た人は、ぜひ本書を手にとっていただきたい。
関連記事

category: 感染症

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/99-68f6a630
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム