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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

驚くべき多様性を誇ったアジアの初期人類は、消えてしまった。「我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)」  

我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)
川端 裕人



今生きているぼくたちは、DNAの上ではかなり均質で、生物学的には一つの種だ。
しかし、少し前の地球では、複数の別種の人類が共存していて、むしろ、それが当たり前だった。

(p18)


そもそも、僕たちが人類である限りつきまとう謎が在る。人類進化史だ。
しかもその謎は、大きく2つの面がある。
一つは、なぜヒトは2足歩行であり、なぜ知能が発達したのか等の、ヒトのデザイン面。
そしてもう一つは、なぜ今、ホモ・サピエンス一種しか存在しないのかという点だ。

もちろん、両者の謎は関連性があるだろうが、
それにしてもこうした大きな区分で考えることが、まず良いだろう。

そして現在は、こうした謎を解明するための人類進化史の研究史において、
最もワクワクする時代の一つであることは、間違いない。

その要因の一つは、もちろんDNAだ。
ネアンデルタール人との混血や、デニソワ人の謎。
そしてそれらから導かれるアフリカ単一起源説。
ネアンデルタール人は私たちと交配した」(レビューはこちら)は、この方向での最も誠実な一冊である。

そしてもう一つの要因は、アジアだ。
長らく人化石人類の研究の舞台は、アフリカだった。ルーシーを始めとして、
アフリカで発掘される種々の初期人類には驚かされるばかりである。
ただ、そうすると何となく、アフリカで進化して分散した―という単純なイメージだけが残る。

だが、現実はそう簡単ではない。
もちろんホモ・サピエンスがアフリカで進化し、世界に分散したのは事実だが、
その前段階の人類も、既に世界中に分散し、各地で独自の進化を遂げつつあった。

そして近年、そうした初期人類の多様性を最も如実に見せてくれるのが、アジアである。

人類進化史は、大きく初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人といった5段階に分類されるが、
このうち原人から旧人にかけてのステージで、アジアは多種多様な人類が併存していた。

すなわち、10万年程前。
アフリカではホモ・サピエンスが既に進化していたが、まだアフリカから出るには至っていない。
その頃アジアでは、まずユーラシア大陸のシベリアまで、ネアンデルタール人がいた。
そしてロシア・アルタイ地方にはデニソワ人。
また中国には、「中国の旧人」と呼ばれるグループ。
ジャワ原人もいて、フローレス島には極めて小型化した人類、フローレス原人もいた。
そして台湾付近には、澎湖人だ。
ホモ・フロレシエンシス
▲国立科学博物館のフローレス原人の模型。後ろは同時期にいた動物。
 身長160cm程度の目線からの写真なので、小ささが実感できるのではないだろうか。

なぜ、これほど多様化していたのか?
どのように共存/競争していたのか?
それぞれの違いは何か?
なぜ絶滅したのか?

謎は尽きないが、これらを解明できる唯一のフィールドは、ここアジアなのだ。

本書はこうしたアジアの人類進化学について、
科学ライターの著者が、国立科学博物館の研究者・海部陽介氏にインタビューしながら、
現在の到達点を的確平易に解説するもの。

海部氏の全面的な協力のもと、
時に模型を手にとり、
時には発掘現場を実際に訪れ、
そして新たな発見をリアルタイムで体感しながらと、
エキサイティングかつ丁寧な解説書となっている。

例えばジャワ原人の進化史や、
フローレス原人がホモ・サピエンスの病気個体ではないことの立証などについては、
それぞれ一章が費やされ、海部氏の論文をベースにして、非常に詳しく解説されている。

ただ、タイトルどおりのテーマであれば、「人類進化700万年の物語 私たちだけがなぜ生き残れたのか」(レビューはこちら)などが適当である。

ただし最新の人類進化学の成果と進捗をリアルに体感できるという点で、
本書は読んでおいて損はない一冊。
まさにブルーバックスの面目躍如といった本である。

【目次】
目次
プロローグ 「アジアの原人」を発掘する
第1章 人類進化を俯瞰する
第2章 ジャワ原人をめぐる冒険
第3章 ジャワ原人を科学する現場
第4章 フローレス原人の衝撃
第5章 ソア盆地での大発見
第6章 台湾の海底から
終章 我々はなぜ我々だけなのか




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