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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

小説家が先端科学を聞きに行く。「科学の扉をノックする (集英社文庫)」  

科学の扉をノックする (集英社文庫)
小川 洋子


誰にも気づかれず世界のどこかに隠されたままになっている、新しい真理を発見しようと思ったら、理屈や常識を飛び越える感受性が必要になってくる。だからこそ、優れた科学者であるほど、豊かな情緒を備えている。(p79)



科学者に対するインタビュー集は、その聞き手の能力如何によって到達点が変わる。
最先端の科学者に対して素人がインタビューしても、その最先端の成果を、
正しく余すことろなく咀嚼し、文章化することはできない。

その点、本書を単なる「先端科学に関するインタビュー集」という枠で評価すれば、
残念ながら期待には応えられない。
どこまで本当かは分からないが(なにしろ小説家なので)、

もう一つ驚いたのは、太陽のような恒星が光を放っているのに対し、地球のような惑星は自ら光っていない、ということだった。(p15)



なのに、自分が将来何歳で何の病気で死ぬか、全部遺伝子に書いてあるのだとしたら? (p63)



といったように、学校教育レベルの科学知識を疑うような記述があるからだ。
本書を読み始めた際に感じた違和感もここにあった。
僕は単なる「先端科学に関するインタビュー集」として本書を読み始め、
インタビュアーにより、各先端科学を適切に紹介してくれることを期待していたからだ。

だが、おそらく本書の読みどころは、そこにはない。
本書著者は、「博士の愛した数式 (新潮文庫)」等の著書がある小説家。
だから本書は、「小説家・小川洋子が聞きに行くシリーズ」として楽しむべき本なのだ。
最終章の対象者が阪神タイガースのトレーニングコーチという点が、
それを如実に現しているといえるだろう。

そうして読むと、「小説家・小川洋子」がこう感じた、驚いた、という点や、
「小説家・小川洋子」に対して、各科学者が最も伝えたいと考えているポイントなどを楽しむことが可能となる。

また、取り上げられたテーマもスプリング8といったメジャーどころもあるが、
国立科学博物館の遺体科学者、粘菌、鉱物など、マニアックなものも少なくない。

各テーマについて本当に詳しく知りたいなら他書を探すべきであり、
小説家・小川洋子のエッセイとして楽しむのが、おそらく正解だろう。

【目次】
1章 宇宙を知ることは自分を知ること―渡部潤一と国立天文台にて
2章 鉱物は大地の芸術家―堀秀道と鉱物科学研究所にて
3章 命の源“サムシング・グレート”―村上和雄と山の上ホテルにて
4章 微小な世界を映し出す巨大な目―古宮聰とスプリングエイトにて
5章 人間味あふれる愛すべき生物、粘菌―竹内郁夫と竹内邸にて
6章 平等に生命をいとおしむ学問“遺体科学”―遠藤秀紀と国立科学博物館分館にて
7章 肉体と感覚、この矛盾に挑む―続木敏之と甲子園球場にて

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