FC2ブログ

ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本の科学研究の底力が、ここに在る。「理化学研究所 100年目の巨大研究機関 (ブルーバックス)」  

理化学研究所 100年目の巨大研究機関 (ブルーバックス)
山根 一眞



科学や技術は、裾野を広げ全体の底上げをすることも大事ですが、だれかが上を強く引っ張り続けないと、社会全体の三角形は大きくならないでしょう。そういう頂点のつまみ上げは、理研だからこそできるんです。徹底してやれるところまでやっていきますよ。
p231


コピー機のRICHO。
乾燥わかめの「ふえるわかめちゃん」は、株式会社リケン。
これらの企業は、理化学研究所から生まれた。

理化学研究所とは、日本唯一の国立の自然科学系総合研究所。
基礎研究から応用研究まで幅広くターゲットとし、その過程で得られた成果はかつて理研産業団(理研コンツェルン)により産業化され、現在は前述の企業のような活動にも活かされている。

一般的には馴染みがないが、
スーパーコンピュータ「京」、113番元素「ニホニウム」の元素合成などで、
理化学系分野での話題は、何かしら理研に関係していると思って良い。
大半の研究者は1年ごとに評価される1年契約であったり、
また独自の研究室を持つことになっても、その研究室は1代限り(創設者が退職すれば廃止になる)など、
日本の終身雇用的な研究機関とは異質なシステムで運用されている。

それが多種多様な研究を可能とし、また最先端を走る原動力ともなっている。
残念ながらそれが完全に裏目に出たのがSTAP細胞事件であったが、
それを踏まえた組織改善はもちろん必要であるものの、理研という研究システムまで放棄することは、
日本の科学界にとっても大きな損失となるだろう。

とはいえ、一体その組織はどのように運営されているのか、
またその歴史、研究施設、
現在の主要な研究テーマなどは、なかなか一般が知る機会は少ない。

ただ、理研のホームページhttp://www.riken.jp/には、様々な情報がアナウンスされている。
それを一般人が積極的に見ないのが悪いのだが、
そこで必要となるのがマスコミ。
理研に限らず様々な研究機関の活動や存在意義、研究状況をフォローし、
うまく一般にアナウンスするのが科学ジャーナリズムの仕事だろう。

ただそれには、相当の素養と丁寧な取材を必要とする。

そういう意味で、なかなか日本に専門的な科学ジャーナリストはいないのだが、
その数少ない一人が本書著者、山根 一眞氏である。

例えば「スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち」(レビューはこちら)では、超大型電波望遠鏡アルマ天文台について紹介されていた。

そして理化学研究所である。
研究所と言いつつ、実は取材当時の研究室数は450。
それらの分野は多岐にわたり、しかもそれぞれが最先端。
しかも100年の歴史を有する、日本最大規模の自然科学系研究所となれば、
簡単に紹介しきれるものではない。

それに対し、山根氏は70人以上にインタビューし、
本書により理化学研究所の概観を示すことに成功した。

最先端の科学研究の舞台と状況が分かるとともに、
様々な政治的力学により、その舞台が何度も存亡の危機に瀕したことも示す。

日本の国家による基礎科学の軽視、マスコミによる目先の報道ネタ重視が言われて久しいが、
本書により、それらが如何に愚かであるかが実感できるだろう。

取り上げている研究テーマは、
スプリング8、113番元素、スパコン「京」など報道で目にしたことがあるものから、
バイオリソースセンターとしての活動など、全く知らなかったものまで様々である。
科学研究の最先端の舞台を知るには、最適の書であるだろう。

【目次】
第1章 113番元素が誕生した日
第2章 ガラス板の史跡
第3章 加速器バザール
第4章 超光の標的
第5章 100京回の瞬き
第6章 スパコンありきの明日
第7章 生き物たちの宝物殿
第8章 入れ歯とハゲのイノベーション
第9章 遺伝子バトルの戦士
第10章 透明マントの作り方
第11 章 空想を超える「物」

関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 技術

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/960-f1356607
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム