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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ここではない、何処かへ。「お父さん、フランス外人部隊に入隊します。 (廣済堂文庫)」  

お父さん、フランス外人部隊に入隊します。 (廣済堂文庫)
駒村 吉重



お父さん、フランス外人部隊に入隊します。契約は5年間です。申し訳ありません、どうしても言えませんでした。

愛媛で生まれ育った森本雄一郎氏が、大学の卒業旅行でアメリカに行くと称し、
実際はフランスへ渡り、外人部隊に入隊したのは、1995年(平成7年)のことである。

僕も同世代だったので覚えているが、ちょうど自分自身が学生の頃が、バブルであった。
高校・大学生の頃は、
好景気な世の中を見て羨ましいと思いながらも、
同時に、あまりにも浮かれている社会人を見ていると、
ちょっとその浅薄さが酷すぎるのでは、と感じることも在った。

そして、本書の主人公でもある森本雄一郎氏が育ったのは、愛媛県の旧城辺町。
愛媛県の南端に位置するそこは、陸の孤島とも言われるような地でもあり、
学校が地域の中心であるような旧い町である。

そこで雄一郎氏は、厳格な父の元、一家の長男として育つ。
その実直な性格とバブル景気は相容れる筈もなく、
日本と日本人に対する失望感が、雄一郎氏を「ここでない何処かへ」駆り立てる。
その先が、フランス外人部隊であった。

だが、一家の長男であること、
また旧い家・地域を思い返せば、家族の理解が得られる筈は、ない。

そのため雄一郎氏は、一人フランス外人部隊に入隊するための準備を行い、
上記の通り、アメリカに卒業旅行へ行くと偽ったまま、失踪してしまう。

そして冒頭の手紙は、入隊後の審査期間中、日本に帰国することとなった人に託した、
紙切れに書いた3行だけの手紙である。

この紙切れによって、父は雄一郎氏が、いつの間にか
身体的にも精神的にも、全く理解できない処に行ってしまっていることに気付く。

本書は雄一郎氏の失踪から、
フランス外人部隊を除隊するまでの5年間、父と雄一郎氏の間で交わされた手紙を中心とした、
父と子、家族と子の喪失と再生の物語である。

雄一郎氏の焦燥感と、家を守ることを自身の人生とした父。
その間にある溝は深く、
おそらく今もまた、多くの家庭に存在する溝だろう。

その溝が、何を破壊し、何を産んだのか。
本書はフランス外人部隊入隊という極めて特殊な事例乍ら、同時に極めて普遍的な物語でもある。

もちろんフランス外人部隊への入隊方法や審査内容、訓練状況など、
なかなか知ることができない内容もあり、読み物としても十分面白い。

だが、本書はそういう面を強調したキワモノではなく、
誰もが精一杯生きている家族の、
だからこそ生じた葛藤を記録した本である。

「ここでない何処かへ」という焦燥感に駆られている若い人、
そしてそうした子を持つ親。
それぞれの立場で、共感し、学ぶところが在る一冊だろう。


【目次】
手さぐりの対話
パリからの手紙
砕けた平穏
志願します!
父の煩悶
ケピ・ブラン
明るい知らせ
ギアナの暑熱
小市民的人生
桜花
除隊、それから
文庫のための短い終章 子わかれ
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category: ノンフィクション

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