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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

多くの人に知ってほしい、盲導犬の誕生史。「盲導犬チャンピイ―日本で最初にヒトの眼になった犬 (新潮文庫)」  

盲導犬チャンピイ―日本で最初にヒトの眼になった犬 (新潮文庫)
桑原 崇寿



盲導犬を見た事がない人は多いだろうが、少なくともその存在を知らない人はいないだろう。
だが、日本における導入史を知っている人となると、
ほとんどいないのではないだろうか。

僕も漠然と、ヨーロッパやアメリカで発達し、それを学んだ有志が日本で始めたのではないかと思っていたが、
事実はそうではない。

戦後間もない1950年(昭和25年)、
日本シェパード犬協会の訓練競技会で優勝した事もある犬の訓練士である塩屋賢一氏が、
栄養失調により失明した少年を見たことを契機に、
「盲導犬」という言葉のみを手掛かりに、盲導犬を育成することを決意。
自身がタオルで目隠しをし、愛犬アスターと文字通り手探りで、
盲導犬はどんな働きが必要か、
そのために、どんな訓練を行う必要があるか、等々を考え乍ら、
全くゼロから始めたのである。

まだシャパード犬という犬種自体が珍しい時代に、
タオルで目隠しをして、商店街を歩く塩屋氏。
もちろん周囲の眼は、厳しい。

それでも、盲導犬が必要であり、自身しかその訓練は成し得ないという責任感から、
塩屋氏は盲導犬育成を勧めていく。

そして、ある程度方向性がみえた段階で、初めて盲導犬としての訓練を依頼されたのが、
チャンピイである。
限りない愛と、文字通り全身全霊をかけ、
また、盲導犬を用いることになる河相洌(かわい・きよし)さんにも盲導犬を用いた歩行指導を行い乍ら、
ついにチャンピイを、立派な盲導犬に育て上げることに成功する。

その後、塩屋氏は盲導犬育成を続け、またアメリカ等の施設も見学し、
日本での盲導犬育成事業を進めていく。

だがそんな中、盲導犬育成事業を巡るトラブルにより、
育てていた指導員全てが去るなど、想像しない苦難が襲ってくる。
その結果、塩屋氏の頭髪が、一夜で真っ白になったという。

それでも盲導犬育成を生涯の仕事として続けた塩屋賢一氏の活動が、
現在の公益財団法人アイメイト協会へと発展していくのだ。

75歳になった時、塩屋賢一氏は盲導犬1000頭を目指ししているが
実際に2007年には1000頭を突破。盲導犬チャンピイの誕生から50周年であった。
塩屋賢一氏は2010年9月12日、88歳で永眠したが、
公益財団法人アイメイト協会の活動はもちろん現在も続き、アイメイト協会の卒業だけでも、
2018年7月14日現在で1,357 組有るという(最新状況は、ぜひ公益財団法人アイメイト協会公式ホームページhttps://www.eyemate.org/で確認していただきたい。)。

本書は、こうして現在は社会の一員として定着した盲導犬を、
日本でゼロから生み出した塩屋賢一氏の物語である。
こうした本に巡り合えることこそ、喜びである。

〈補足〉
「盲導犬」は、犬が導くと捉えがちだが、
実際は視覚障害者の方も歩行訓練を受け、犬との共同作業を行っている。
その意味で、塩屋氏自身がアイメイトと呼ぶことを提唱されている。
ただし本記事では、書名が盲導犬であることから、盲導犬という呼称を用いている。
アイメイトという呼称を無視・否定する意図は一切ない。

〈補足2〉
本書に収録されている話題や河相氏の話などが、
公益財団法人アイメイト協会公式ホームページhttps://www.eyemate.org/
60周年ライブラリhttps://www.eyemate.org/history/に、貴重な写真付きで掲載されている。
ぜひご覧いただきたい。

【目次】
愛犬アスター
訓練犬チャンピイ
頭上の障害物
盲導犬チャンピイ
彦根への旅立ち
挫折を超えてアメリカ視察へ
再びの苦難、そして裏切り
希望つなぐアイメイトの絆
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