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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本のマンボウは、実は2種あった!「マンボウのひみつ (岩波ジュニア新書)」  

マンボウのひみつ (岩波ジュニア新書)
澤井 悦郎



今、マンボウが熱い。

死因に関するデマ(本書に詳述)ばかりが先行し、
「弱くて鈍くさいマンボウ」というイメージが定着しつつあったマンボウ。
しかし「分類」「バイオロギング」という2つの点で、
生物好きにとっては極めてワクワクする存在となっている。

その魅力をギュッと詰め込んだのが、本書。
岩波ジュニア新書は、時折り、大人向け一般書を凌駕する良書が刊行される傾向があるが、
本書もアタリの一冊である。

さて、ここまで何の断りもなく「マンボウ」と書いてきたが、
本書では、それが実は正確ではない、という研究結果が示されている。驚愕である。

本誌表紙のイラストをよく見ていただきたい。
可愛らしいタッチのくせして、実はきっちり正確なのである。さすが岩波。
中心のマンボウ。下方の人間と比較すると、極めて巨大である。
そのマンボウと左上に描かれたマンボウ、様々な点で違いがあることにお気づきだろうか。

実は、これまでマンボウと一括りにされてきた種だが、実際は3種が含まれている。
小さい頃は見分けがつかないこと、そして成長後の差は成熟個体の特徴と考えられていたためだ。
だが、日本における数代の研究者の積み重ねにより、
日本にいるマンボウも、上記3種のうち2種であることが明らかにされた。

すなわち、従来「マンボウ」と呼ばれていたもののうち、全長3 m前後の大型個体については、
その成熟後の形態、生息域、DNA等の違いから別の種であり、和名「ウシマンボウ」が提唱されたのである。

学名でいえば、マンボウ Mola mola の一種だけと思われていたのが、
マンボウ Mola mola と、ウシマンボウ Mola alexandrini の2種だったのである。

この違いについては、著者にインタビューしている次のHP(WITH NEWS)が、
非常に分かりやすい図入りで解説してくれている。
マンボウに「ギネス塗り替える」発見!「おっとっと」への影響は?

あれ程大きく、親しまれている魚なのに、正確に分類されていなかったとは、驚きである。
マンボウはその大きさから採取・標本可化が難しく、実は研究が難しい種だったというのも一因だったらしい。

本書著者が最終的に「ウシマンボウ」を記載したのだが、本書では、そこに至るまでの研究史が詳しく語られている。
これだけでも、生物好き―特に分類学に興味がある者にとっては、大好物だろう。

しかし本書はそれに留まらず、
現時点で得られている、いわゆる「マンボウ」に関する様々な知見を、これでもかと盛り込んでいる。

また、マンボウはバイオロギングによる調査の対象としても、取り上げられている。
巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)」(レビューはこちら)を初めとする各書(末尾に掲載)でもその成果が語られているが、本書をあわせて読めば、その面白さも増すことだろう。

本書を読めば、マンボウを見る目が変わる。
お薦めの一冊である。

【目次】
はじめに
マンボウ図鑑
マンボウなんでも博物館
マンボウ料理

I 体のつくりを徹底解剖
 1 マンボウが魚であることの証明
 2 マンボウのかたち
 3 マンボウの解剖(内部形態)
○トピック
 1 魚の絵や写真はなぜ左向き?
 2 魚の模様と方向
 3 魚の計測
 4 どっちが雄でどっちが雌?

II 化石もあるマンボウの仲間
 1「マンボウの何が知りたい?」アンケート
 2 種と分類
 3 和名と学名
 4 現生種と化石種
 5 現在も存在する種
 6 現在は存在しない種
 7 マンボウはフグの仲間
 8 フグはどうやってマンボウに進化した?
○トピック
 5 沖縄にいる赤いマンボウとは?

III ウシマンボウの謎
 1ずっとマンボウが好きだった
 2 分類の世界的基準
 3 マンボウ研究は難しい
 4 広島大学初代マンボウ研究者の時代
 5 二代目の時代
 6 三代目の時代
○トピック
 6 生き残った個体

IV バイオロギングが暴く生態の謎
 1 可能性のツール「バイオロギング」
 2 疑問を持つことから研究は始まる
 3 浮力はどこから得ているのか?
 4 尾鰭なしでどうやって泳いでいるのか?
 5「のろまなマンボウ」は本当か?
 6 東日本大震災に負けない
 7 バイオロギングが解き明かした謎
 8 昼寝の謎
 9 回避の謎
○トピック
 7 分類屋vs.生態屋
 8 魚も寝る

V みんな気になる生態の最新情報
 1 天敵・捕食者
 2 摂餌・食性
 3 寄生と共生
 4 分布域
 5 成長過程
 6 成熟・産卵
 7 視野・視力
 8 重さ・長さ
○トピック
 9 鰓に入り込むコバンザメ

VI マンボウと人がつむいできた歴史
 1 マンボウ塚
 2 人類最古のマンボウの記述と絵
 3 学名の語源
 4 日本最古の記述と絵
 5「マンボウ」という名が全国普及した理由
 6 和名の語源と命名者
 7 水族館の挑戦
 8 変わりゆくイメージ
 9 絶滅危惧種指定
 10 食材としての歴史と可食部位
 11 食卓のマンボウ
 12 毒はあるのか? 薬効は?
 13 漁獲方法と数え方
○トピック
 10 マンボウの地方名
 11 町のシンボル

VII マンボウの民俗今昔―伝承から都市伝説まで
 1 夜に光り輝く?
 2 禁忌
 3 大漁祈願
 4 魚をいやす海の医者
 5 おぼれた人を助ける
 6 死ぬ瞬間に目を閉じる
 7 切り身は一晩放置すると水になって消える
 8 死因にまつわる都市伝説
 9三億個産み生き残るのは二匹
 10 ライフル銃でも貫通しない?――皮膚は弱いのか?
○トピック
 12 マンボウを研究するには?

おわりに
 マンボウが見られる水族館/図版出典・提供/参考文献

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