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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

離島に伝えられる古代日本の姿。「千年の田んぼ (国境の島に、古代の謎を追いかけて)」  

千年の田んぼ (国境の島に、古代の謎を追いかけて)
石井里津子



「五年先があやういですよ。一〇年持つかなあ」 (p93)



日本の風景として撮影されるもの。
桜、富士山島様々有るが、コンテストを開けば必ず在るだろうというのが、
「田園風景」だ。
「田」というのは、米を主食とする日本人には欠かせないものである。

我が家の近くの田は、未だ未舗装の畦で区切られている昔ながらのものだ。
田植え前の水張り時期には蛙が騒ぎ出し、亀が道路を往来する。
耕うん中にはアオサギが後を追い、秋にはスズメが騒いでいる。

こうした風景を何十年、何百年と繰り返してきたのが、日本である。

ただし、同じように見えても、それは全く異なるものだ。

田は日本人の生活の根幹であった。
だからこそ、その収量を上げるための工夫は絶えず続けられ、
その時代時代の要請・工夫によって、田はその姿を変え続けている。
近現代でいえば、コンクリート舗装の水路、畦。
また、耕うん・収穫が機械化された際にも、その機械にあわせた田の改良―小さい田の集約や、
機械で耕作しやすい形への変更がなされている。

すなわち、目の前に在る田は、100年前の田ですらない。
あまり意識することはないが、田も進化しているのである。

さて、著者の石井氏は地域社会・農村をテーマとする編集者であり、ライター。
全国を巡ってきた石井氏は、山口県の日本海沖にある見島で、
不思議な形状の田に遭遇する。
それは、短冊状の田に、小さな三角形のため池が付随する不思議なものだった。

「八町八反」と呼ばれる、その地。
なぜ、大きなため池を造らず、小さいものを点在させたのか?

その疑問を解くべく見島に渡り、取材と調査を重ねていく。

その結果見えてきたのが、その土地にあった水源確保としての「小さなため池」の必然性。
そして、その「小さなため池」が付随している田の形状から、
実はこの地域が、律令制に基づく「条里制」によって整然と構築された田であることに気付く。
こうした田を造るためには、膨大な労力が必要な筈だが、
なぜ、日本海の小さな島に、「条里制」による田が在るのか。
いつ作られたのか。
どのような人々が造ったのか。

次々と浮かぶ謎に、著者は先人の足跡を辿りながら、ついにある仮説に辿り付く。

本書は全国学校図書館協議会選定図書であり、
また青少年読書感想文全国コンクール<中学校の部>の課題図書にもなっている。
ルビも付された平易な文章で、気軽に読み進むことができるのだが、
その内実は優れた古代史探究ノンフィクションである。
中学生だけに読ませるのは勿体ない、
日本における「田」の継続性について考える契機になる一冊だ。

そして冒頭に引用したとおり、
その1000年以上続いた田も、我々の世代で途絶える危機に直面している。
日本の農業政策だけでなく、文化的政策面からも、
この厳しい現実をどう打開するか、考えていく必要があるだろう。

【目次】
はじめに―一三〇〇年前の田んぼ
謎その1―不思議な三角ため池
謎その2―お米づくりと「八町八反」
謎その3―八町八反開田の謎
謎その4―誰が、八町八反をつくったのか
おわりに―一三〇〇年の希望
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