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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

想像を超える技術開発が、世界では進んでいる。「合成生物学の衝撃」  

合成生物学の衝撃
須田 桃子



ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える」(レビューはこちら)でも書いたが、
ヒトのDNAに対するアプローチには、「理解」と「応用」がある。

二重らせん構造、PCR法、iPS細胞等。
これまで一般社会にインパクトを与えたのは、全て基本的に「理解」であり、「応用」はそこから派生していた。

だが現在、極めて効率的な遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)が発明されたこともあり、
世界は「理解して応用する」のではなく、
「応用を通して理解を深める」というアプローチを採りつつある。

その最先端が、本書のテーマである「合成生物学」である。

旧ソ連では、複数のウイルスをミックスした、全く新しい病原体の作成も研究されていたという。

そして日本では殆ど知られていないが、既にパソコン上でDNA配列を決定し、
それに対応した短いDNAを作成する技術は確立している。

全く新しい病原体を創るという発想と現在の技術。
生物兵器の研究に繋がってもおかしくはない。
ただ、もちろん生物兵器は当然禁じられている。
しかし、その防御手段を研究することまで禁止はされておらず、
またアメリカでは国防総省の一機関であるDARPAが、
合成生物学研究に多大な資金を提供し、研究のイニシアティブを握っているという現実。

また、ヒトゲノムを解読した研究者は、
次のインパクトとして、ヒトゲノムの作成も提唱している(現在は「ヒト」にのみは拘っていないようだが)。

さらに、ヒトゲノム解読計画で公的チームを出し抜いた研究者クレイグ・ベンターは、
自身が中心となった研究所において、既に0からDNAを合成した人工生命体「ミニマル・セル」を創りだすことに成功している。

日本では殆ど話題とならないが、現在の世界の潮流はDNA編集・合成なのである。

本書は、DNA編集・合成に携わる、特にアメリカの研究者・機関について直接取材し、
現時点の彼らの動向と思想をまとめたもの。
技術的な面もさることながら、倫理面からの評価も盛り込まれているのが特色であり、
また価値あるところだろう。

日進月歩の時代の中、おそらく数年後に新しい局面を迎えることは間違いない。
その時に右往左往しないよう、まず本書でDNA編集という技術に対して理解しておき、
自身の倫理観のベースを培っておく必要があるだろう。


【目次】
プロローグ わたしを離さないで
第一章 生物を「工学化」する
第二章 人工生命体プロジェクトはこうして始まった
第三章 究極の遺伝子編集技術、そして遺伝子ドライブ
第四章 ある生物兵器開発者の回想
第五章 国防総省の研究機関は、なぜ合成生物学に投資するのか?
第六章 その研究機関、DARPAに足を踏み入れる
第七章 科学者はなぜ軍部の金を使うのか?
第八章 人造人間は電気羊の夢をみるか?
第九章 そして人工生命体は誕生した
エピローグ マダムはなぜ泣いたのか?
あとがき
主要参考文献 証言者

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