FC2ブログ

ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

次の時代を拓く技術は、これだ。「ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える」  

ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える
小林 雅一



DNAの二重らせん構造が発見されたのが1953年、
キャリー・マリスがDNAの効率的な増幅法であるPCR法を報告したのが1983年。
ヒトゲノムが解読されたのが2003年。
現在、DNAに対する理解はDNAそのものだけでなく、
DNAのメチル化やヒストン修飾等による表現型への作用、エピジェネティクスに及んでいる。

感覚としては、こうした「理解」の方向が進んでいくものと思っていたが、
最近、高効率なゲノム編集技術、CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)が見出され、
「理解」だけでなく「応用」面も格段の進歩を遂げている。

本書は、なぜクリスパーが従来の遺伝子組み換えや遺伝子編集とは優れているかを始めとし、
そのゲノム編集技術をベースに、今世界がどのような潮流の中にいるかを簡易に解説したガイドブックである。

第1章ではクリスパーの概要、
第2章では、そのクリスパーが革新的技術であるが故に、すでに特許紛争や産業界を巻き込んだ争いが巻き起こっていることを示す。

一方第3章以下は、ゲノム編集という技術が、今後我々の生活をいかに変える可能性を秘めているかと、
社会の受容についてである。

比較とされるのは、GMO。
遺伝子組み換えについては社会的にも良くも悪くも話題となり、その結果、
個々に精査することなく、一般社会には
「遺伝子組み換え」=「危険」というレッテルが定着している。

そして、次の技術がゲノム編集である。
当然、その技術を用いた食品の安全性という課題もあるが、
GMOで失速した産業界が、いかに対策を行ってくるかという問題がある。
また消費者側も、様々な環境・食糧問題が発生している中、それを解決手段として有効かもしれない技術について、
GMOと同様に「何もかも危険」と思考停止して良いのかという問題もあるだろう。

本書ではその点について、中立的な問題提起がなされている。

そして第3章。応用面において、ゲノム編集がGMOと根本的に異なるのは、
遺伝子編集による「種」の操作が、現実的になった点にある。

その一例が遺伝子ドライブ。詳細は本書を読んでいただきたいが、
ゲノム編集により、例えば特定の蚊を数世代で根絶することも理論的には可能となっている。

また、ゲノム編集を医療面に応用すれば、様々な遺伝子病を受精時点で防ぐことが可能となる。
だが同時に、効率的なゲノム編集技術は、「望ましい遺伝子」を手に入れることも可能とした。
いわゆる、ゲノム編集ベビー(デザイナー・ベビー)が現実的となった時、
例えばスポーツでは、「生まれる時点での遺伝ドーピング」も可能となった。

よもやそんなことは、と思うかもしれないが、
かつて東ドイツでは、8歳以上の有力選手全てに薬物を投与した事例もある。

人類がPCR法を手にし、DNAの「理解」面での応用が格段に進んだのと同様に、
クリスパーはDNAの「応用」面を進める可能性が高い。

だが、「理解」と「応用」は、全く異なる意味を持つ。
ヒトが他種や自らのDNAをダイレクトに編集する際に、どのような倫理観が必要となるのか。

本書は、「これから来る時代」を包括的に理解するために最適だろう。

なお、本書とは「合成生物学の衝撃」(レビューは近日)を併せて読むのが良い。

【目次】
【第1章】 ゲノム編集クリスパーとは何か
【第2章】 クリスパーを発明したのは誰なのか? ─ゲノム編集の基本特許を巡る争い
【第3章】 ゲノム編集は私達の「食」をどう変えるか ― GMOの過ちを繰り返さないためには
【第4章】 ゲノム編集はこれからの医療をどう変えるか ―「遺伝子格差」社会への警鐘
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 技術

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/931-f32d53c8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム