ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)  

文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子
酒井 伸雄
【栽培植物が面白くなる度】★★★☆

文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)
(2011/08/26)
酒井 伸雄

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本書を一読し、あらためて自分の生活の多くが、
新世界起源の植物に依存していることを痛感。
これを品種改良し、また様々な加工法を発見してきた人間の知恵に驚くとともに、
大きな気候変化や流通事情の悪化が生じた場合には、
自分の生活は根本から崩れる怖さもある。
(本書では触れていないが、F1種の独占問題もある。)

さて、本書ではジャガイモ、ゴム、カカオ(チョコレート)、トウガラシ、タバコ、トウモロコシに焦点をあてる。
ジャガイモやトウモロコシのように、広範囲で栽培されることによって影響を与えた植物もあれば、
カカオやゴムのように、産地は限られているが用途が広い(使用量が多い)ことにより影響を与えている植物もある。各種の植物の栽培と活用史がコンパクトにまとめられ、読み物としても充実している。

本筋から離れるが、現在の大手会社(ゴムならグッドイヤー、ミシュラン、カカオならパン・ホーテン)が、それぞれ革命的な加工技術を発見した会社であった、ということは初めて知った。
逆に言うと、そこと張り合う日本企業はすごいものである。

あと、ポルトガル・スペイン間の南アメリカの領土の配分を定めた
「トルデシリャスの条約」
は、初めて知った。
南米がポルトガル圏とスペイン圏に分かれているのが、早い者勝ちだったにしてはちょっと等分だな、という感じを抱いていたので、納得であった。

栽培植物史を知りたい方には、特におすすめである。



【目次】
はじめに
第1章 ヨーロッパ発展の原動力ジャガイモ
第2章 車社会を支えるゴム
第3章 お菓子の王様チョコレート
第4章 世界の調味料になったトウガラシ
第5章 生活の句読点だったタバコの行方
第6章 肉食社会を支えるトウモロコシ
終章 コロンブスの光と影と
あとがき
引用・参考文献

【メモ】
p6
新大陸原産の植物の中でも、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシは、面積あたりのエネルギー収穫量の多さで、飢餓から人類を解放した。

p18
かつてヨーロッパでは、秋の終わりに繁殖用以外のブタは殺し、塩漬けにして貯蔵していた。
ジャガイモができることによって、オオムギやエンバクが人間の食料から飼料となり、
また余ったジャガイモも飼料となることで、冬にも家畜を養うことができるようになった。

p21
文明が発達するためには、食料の生産と供給のシステムが整う必要がある。
イモ類は重く、穀物に比べて腐りやすいため、輸送手段が発達していないと再配分は難しい。
世界的に見ても、イモ類をエネルギー源として国家らしい体制ができた例は少ない。

(アンデスのティワナク文明とインカ文明 は、ジャガイモしか選べなかった。
p26
アンデスでは、ジャガイモを真冬にさらし、凍結→日中解凍を繰り返し、
ブヨブヨになったものを踏み、水分を抜く(これでアク抜き)。
それを乾燥させた、「チューニョ」という乾燥ジヤガイモを作っている。
これは有害物質が除かれ、保存性に優れ、運搬しやすい。)


P23
かつて、ほとんどのイモ類は有害物質を含んでいて、アク抜きが欠かせなかった。
(ジャガイモなどは品種改良されている)
動物の食害を避けるため。自然薯以外、ほとんどの野生イモは有害か味が悪い。

P30
ヨーロッパでジャガイモが移入された当初、ゴツゴツの風貌から、
ジャガイモを食べるとハンセン病になるのでは、という風評が立った。
(アクにあたって湿疹を発症する者も絶えなかった。)

p32
ドイツでの普及は、フリードリッヒ2世(フリードリッヒ大王)の普及策による。
救荒作物として注目し、栽培令の徹底を図った。

p36
アイルランドではジャガイモの栽培が普及し、18世紀末の依存度はきわめて高くなった。
しかしジャガイモの病気が5年間も連続発生し、飢えが原因で死んだのは150万人に達し、
ほぼ同数が新大陸へ渡った。→アメリカへの移民の増加。

p37
熱帯のパナマ地峡の高温多湿な気候はジャガイモ栽培に適しないため、
アイルランド移民から北アメリカでジャガイモ栽培が広がった。

p41
ジャガイモに含まれるビタミンc
35mmg/100g
熱に対して比較的安定していて、加熱しても失われるビタミンcは少ない。
熱によってアルファ化したでん粉が糊状になり、ビタミンcが水中に流出するのを防いでいるのではないかと思われる。


p66
チャールズ・グッドイヤー
 ゴムと硫黄を混ぜたものを加熱することによって、四季を通じて堅さが変わらないゴムを作った。
(生ゴム+1~5%の硫黄を圧力をかけつつ加熱することで、-30~130で堅さが変わらない弾性ゴムができる。)
 この「加硫法」は、ゴム加工技術の中でも最大の発明。

p71
フランスのミシュラン兄弟
 自転車で生まれた空気入りタイヤを、(より重い)自動車に取り付けることに成功した。


p73
ゴム+カーボン・ブラック
 最初は種類を見分けるためだけだったが、これによって通常のゴムタイヤよりも10倍以上
耐摩耗性の強いタイヤができた。

p80
 マレー半島でゴム生産が盛んとなり、
1922年には全世界の93%、1932年には98%を作っていた。(残りはブラジル)
第二次世界大戦で日本がマレー半島を占領するまで、イギリスは世界の天然ゴムを独占していた。

p85
 合成ゴムは、様々な用途に応じて作成できる。しかし、ある部分の特性を伸ばすと、他の特性が損なわれる。
天然ゴムは、どの性質をとっても80点以上のよさを持っている。
どうしても天然ゴムしかできないもの
・飛行機のタイヤ 高度1万m以上の-50~60度という低温から、着陸時の衝撃、高温に耐える。
・コンドーム ピンホールも存在せず、0.03mmの薄さを保てる


p95
 カカオ豆
果皮の中に、甘酸っぱい汁を含んだ果肉があり、その中に30~50粒の種子(カカオ豆)がある。
この豆を手作業で取り出すのは困難。
ただ、果肉を大きな木の箱の中で放置すると発酵し、果肉が液化して、簡単に取り出せる。
また、発酵が始まるとカカオ豆は発芽する。
しかし進むことによって温度が50度を超えると、豆は死ぬ。
ところがこの発芽過程がないと、美味しいチョコレートができない。
発酵中にカカオ豆のえぐ味が除かれ、色調もいい香りのもともこの時にできる。

p104
 1494年、ローマ教皇の仲裁のもと、スペインとポルトガルの間で
「トルデシリャスの条約」
が交わされた。
アフリカ沖のベルデ岬諸島の西方370レグア(約2000km)の地点、
西経46度30分を走る経線を境界線として、
その東側で発見された土地をポルトガル領、
西側で発見された土地をスペイン領とした。

この結果、カカオ豆の産地は全てスペインの勢力圏となり、スペインが独占した。

p111
スペイン
 カカオ豆の産地との結びつきが強かったため、(飲料としての)チョコレートが普及。
イギリスは東インド会社を通じた中国、日本との結びつきで紅茶が普及。
フランスはコーヒーを産出する植民地が多かったためコーヒーが普及した。

p113
 カカオから不要物を除去したニブ(実)にはカカオバターと呼ばれる脂肪分が55%程度含まれている。
そのため、油っこく、濃厚な味。
オランダの科学者コンラート・バン・ホーテン
1828年、ニブからカカオバターの2/3程度を搾り取る方法を考案し、ココア粉の製造法の特許を取得した。
さらに、ニブにアルカリ溶液を加えると、酸が中和され、刺激性の味がなくなることを発見。
今でもココア粉の製造は、
・ニブにアルカリを反応させる
・カカオバターを搾り取る
という工程が基本。

p114
 スイスのアンリ・ネスレ
牛乳から粉ミルクを作る方法を発明。

p133
 ニワトリはトウガラシを好んでついばむという。
「和漢三才図会」や「大和本草」でも、トウガラシは鳥が好むことが書かれている。

ペンシルバニア大学の研究員メイソンの話
鳥は2%のカプサイシン溶液(溶解度の限界)を与えても平気。
人間がカプサイシンの辛味を感じる濃度
 15~20ppm(1万分の1%)でも辛味を感じる。
2%=1000倍

p135
 世界中で栽培されているトウガラシ:分類学上は4種しかない。
現在でも、3種は南米大陸のごく一部でしか栽培されていない。
1:アンデスの高地
2:南米大陸
3:アマゾン流域

4 カプシカム・アンヌーム Capsicum annuum
 世界各地のトウガラシは、すべてメキシコ原産のアンヌーム種の仲間。
アンヌーム種の特徴
 滑らかで光沢のある厚手の果皮をもっている
果実の中には果肉がなく空洞である
空洞には数十粒の種子が入っている

p153
 李氏朝鮮時代に編纂された「芝峰類説(チボンリユソル)」1613
トウガラシは日本から伝わったので、俗に倭芥子と呼ばれている、との記述がある
(「食文化の中の日本と朝鮮」) 





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