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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

知らないのは、罪だ。「絶滅危惧の地味な虫たち―失われる自然を求めて (ちくま新書)」  

絶滅危惧の地味な虫たち―失われる自然を求めて (ちくま新書)
小松 貴



メクラクラチビゴミムシは地域おこしには使えないし、 マスコットにもならない。しかし、その土地の成り立ちを知る「生きた歴史書」である。その歴史書を後代に残さずして、 この世から永遠に抹消してしまうことは、あまりにも罪深い。



環境庁(当時)により作成された「絶滅のおそれがある動植物のリスト」、通称「レッドリスト」と、それを文献化した「日本の絶滅のおそれのある野生生物」(通称レッドデータブック)。
1991年の刊行から改訂を重ね、また各都道府県ごとのそれも作成されることによって、
良くも悪くも日本の環境保護行政を牽引してきた。

「良くも」の最たる点は、保護対象生物の明確化(いわゆるお墨付き)だろう。
全く生物に興味が無い層に対しても、「レッドデータブックに載っているから」「絶滅危惧種だから」と説明すれば、かなりの説得力を発揮することとなった。

「悪くも」は、その裏返しである。
レッドデータブックという「お墨付き」ができたことで、
逆に、主に次の二つのバイアスが、多くの人々の判断にかかっている。
①レッドデータブック非掲載種は、保護する必要はないだろう、という考え。22
②もう一つは、レッドデータブック掲載種は保護されている(筈だ)という考えだ。

いずれも正しくない。

①については、そもそも、どの種を掲載するかが、
その分類群の研究の進展と、実際の選定者の質に依存しているシステム自体の問題である。
その根は深いが、ここでは措いておく。

②の課題が、本書の出発点となる。
大形種、美麗種ばかりに眼が行きがちな世の中にあって、
レッドデータブック掲載種といえども、実際に保護されるのは際めて限定的だ。
その多くは、実は「掲載したこと」が到達点となり、そのまま放置されている。

特に、研究が進み、微小な種や地味な種の把握が進んでいる虫(昆虫やクモ等)においては、
せっかく選定者によって絶滅の危険性が認識され、レッドデータブック掲載種となったにも関わらず、
全く顧みられていない種が多数存在する。

そして、それらの種は特殊な環境に特化している場合が多いため、
何も知らない人々によって生息環境ごと破壊されつつある。

それに対する回答の一つが、本書である。

著者は、昨今の昆虫ブームの中でも、
その知識と行動力により、特にマイナーな種・テーマに対して抜群の紹介者である。
例えば先行書に「虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)」(レビューはこちら)があるが、
その濃さは、これまでの昆虫本とは異なるものだった。

そしてその力を、レッドデータブック掲載種のうち、
誰にも気にされていない極めて微小な種に注いだのが本書である。

ぶっちゃけ、出てくる虫のほぼ全てが、聞いたことも無い種。
洞窟性の種や水生昆虫になると、探すことすら大変だ。
だが、というか、だからこそ、
著者は知識と力の限りを尽し、その種を見つけ出す。

その上で、著者は語る。

絶滅危惧種が絶滅危惧種になってしまった理由の最たるものは、生き物に対する一般の人々の無理解・無関心にあると、私は考えるからだ。現在、環境省レッドリストに掲載されている昆虫類の大半は、小さくて人目を引かない種である。そして、それらの生息する主な環境は、人里近い草原や湿地、林、河原に海岸だ。こうした環境は、遊んでいる土地だから、危険だからと何かにつけ理由をつけられ、すぐに埋められたりコンクリートで固められたり、 家や道路ができたりする。



無関心がいかに絶滅に拍車をかけているか。
実際、僕も本書で初めて、
香川県の女木島だけに棲むチュウジョウムシGalloisiana chujoi、別名メギシマガロアムシの存在を知った。

誰もが本書を読むと、自身の近くの「知られざる絶滅危惧種」の存在に気付くかもしれない。
それを知っているかかどうかが、当該種が次世代まで生き残る否かを、大きく左右する。


なお、著者のブログはこちら。「Ⅲ月紀
世界の生物に対する著者の「体験」が見られる。

【目次】
1 コウチュウ目
2 チョウ目
3 ハエ目
4 カメムシ目
5 ハチ目
6 バッタ目とその仲間
7 クモガタ類
8 多足類の仲間など

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category: 昆虫

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