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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

生きている姿は、生痕化石が伝えてくれる。「恐竜探偵 足跡を追う 糞、嘔吐物、巣穴、卵の化石から」  

恐竜探偵 足跡を追う 糞、嘔吐物、巣穴、卵の化石から
アンソニー・J・マーティ



博物館等へ行けば、数多の化石を目にすることができる。

その多くは骨の化石であり、僕らは想像の中でその骨に肉付けし、生きている姿を思い浮かべる。
もちろん骨化石に対する研究も日々進んでおり、
化石中の有機物を検出する試みもなされているものの、
化石として残るのは、通常は骨や殻などであり、軟組織は残りにくい。

だが、その軟組織の表面が土に転写され、それが運よく残れば、
僕たちは本来残り得ないモノを見ることができる。

素直に考えれば、一体の動物が残す骨は、当然一体分だ。
だが、その動物が生涯にわたり、土地や他の生物に刻みつける「生活の痕跡」は、
相当な量になる筈だ。
そして、そうして残った「生活の痕跡」の化石、すなわち「生痕化石」は、
骨たけではわからない生き様を、僕たちに見せてくれる。

本書はその生痕化石の研究者である著者が、様々な事例を紹介しながら、
生痕化石の意味や読み方、そしてその成果を紹介してくれるものだ。
あたかも探偵が犯罪現場から数々の手掛かりを見いだし、
それを総合することで犯人の行動を浮かび上がらせるように、
著者はいくつもの生痕化石から、様々な恐竜の日常を読み解いていく。

例えばその事例として、大型で巨大な竜脚類の「増巣方法」がある。

博物館でよく出会う、見上げるほどの竜脚類。
幸いなことに、現在いくつも巨大な竜脚類のものと判明している巣があるが、
極めて大きな体で、どのように巣を造ったのだろうか。
こうした生態や特定の行動について、目の前にある骨化石が語り得ることは少ない。

これについて、生痕学者は、現生カメ類に着目した。
カメ類は、その後ろ足で地面を掻き、掘り進め、それによって凹地を造る。

そして、カメ類と竜脚類は、その脚の構造がとてもよく似ているのだ。
そこから導き出される結論は、「ひっかいて掘る」という行動だ。
後ろ足でひっかいて掘ることにより、一定規模の大きさの凹地を造ることができる。
そしてそれこそが、竜脚類の巣となったのである。

また別の事例では、地中の穴跡を発見する。
その穴の最奥はやや広くなり、そこに同種の恐竜の成体と幼体の化石があった。
ここから生痕学者は、その恐竜のサイズと穴のサイズの関係について、
現生動物との比較等を行い乍ら検討する。
そして遂に、この穴は小型恐竜が地中に造った巣穴であると結論づけるのである。

かと思えば、化石店等でよく見かける「胃石」について、
その「すべすべした石」を「胃石」と認定することの困難さを示したり、
恐竜の糞石の中に昆虫やカタツムリ類を見出し、
その糞が当時の環境においていかなる価値があったかを示す。

本書はこのように、様々な生痕化石の「見方」について、
最新の知見と、生痕学者の慎重なスタンスを実感させるものだ。
昨今の恐竜ブームにより、いわゆる「骨化石」については一般によく知られるし、
イベントでの展示も多い。

だが、過去の動物が、実際に生きていた姿を読み取るには、
骨だけでなく生痕化石も重要なのである。

現在の日本における恐竜ブームの中で、
見落としがちな、だが極めて重要な生痕化石の存在について、
本書ほど適切に紹介しているものはないだろう。


【目次】
第一章 恐竜を追う
第二章 この足は歩き、走り、すわり、泳ぎ、群れをなし、狩りをするために作られた
第三章 ラーク採石場の謎
第四章 恐竜の巣と子育て
第五章 地下にもぐる恐竜
第六章 折れた骨、歯型、歯に残された痕跡
第七章 なぜ恐竜は石を食べるのか
第八章 当時の名残――恐竜の吐物、胃の内容物、糞、その他、虫の知らせ
第九章 壮大な白亜紀を歩く
第一〇章 わたしたちの中に恐竜の足跡を辿る
第一一章 恐竜の景観と進化の足跡
訳者あとがき 恐竜の足跡は日本でも
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category: 恐竜

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