FC2ブログ

ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

この視点は、もっと検証していく価値がある。「日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)」  

日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)
竹村 公太郎



時系列上における事象の積み重ねが歴史であり、
そのうち、人の営みに関するものを、とりあえず狭義の歴史としておく。

そうすると、人の営み―経済活動にしろ文化活動にしろ、
その全ては各自が活動する地域の特性に制限される。
単純に、赤道直下の国で、雪と氷の世界を前提とした経済活動や文化は生じ得ない。

もちろん人間は、その知恵と力によって道を作り、船を操る。
それにより、他の地域との交流と対立が起こり、更に複雑な歴史を紡ぎだすのだか、
それでも、その出発点の制約が「地形」であることには変わりがない。

ただ、人は「自分が生きている時代」をスタンダードと考えがちであるため、
過去を読み解く際に、その当時を正しくイメージすることが難しい。
特に、ついつい抜け落ちる視点が、テレビで正しく再現しえないもの、
言葉(発音)や気候、地形などである。

このうち地形については、近年NHK「ブラタモリ」https://www.nhk.or.jp/buratamori/のおかけで、
それを読み解く面白さが普及した。

本書の刊行は2013年とやや前であるが、
このブラタモリ的興味を充足させるものである。

家康にとっての江戸。
源頼朝にとっての鎌倉。
織田信長にとっての比叡山など、
誰もが良く知る日本史上のエピソードについて、当時の地形をベースにして、新しい視点を提供していく。
ネタバレになってしまうため、ぜひ末尾の【目次】を確認し、興味があれば楽しんでいただきたい。

例えば、名所江戸百景と江戸名所図会で、真逆の曲がり方に描かれている小名木川。
ところが実はこの川は、そもそも曲がっておらず、
ほぼ直線に造られて運河である。
そして、家康はなぜこの運河を関ヶ原以前、江戸入り直後に造ったのか。

また、奈良と京都が古代に首都として選ばれた地形的な理由。
風水的理由はよく語られるが、素直に交通的な利便性から説明し、
かつ、奈良から京都へ都が移転する経緯。

そして、忠臣蔵のもう一つの視点とも言える、吉良家と徳川家の確執など、
他書ではあまり見ないテーマも多く、歴史・地形好きには、
考えるヒントとしても楽しめるだろう。

ただし、著者の語り口がかなり独特で、
「皆が見過ごしてきたこんな事を見つけた!」という勢いがやや強すぎ、
ちょっと馴染み難い人もいるかもしれない。
また、著者は歴史専門ではないため、部分的な錯誤もある。

それらをもって著者の論を全否定することも可能だが、
こうした「地形からの説明」という視点までもバッサリと捨ててしまうのは、やや惜しい。

著者の提起を踏まえ乍ら、より多面的な考察を進めていくことが建設的だろう。

ところで、吉原の移転、
それによって吉原へ通う人々の往来による日本堤の補強を図ったという、
土木工事におけるソフト的解決というテーマについては、
明石散人が何かで書いていたような気がするのだが
(別に盗作とかいうのではなく、別に並列的に思いついても不思議ではないし、
そもそも、既に有名な視点なのかもしれない)、
探してみても見つからなかった。残念。

ところで、本書で地形の面白さを紹介しておきながら何だが、
新しい視点からの歴史研究という点では、明石散人の各著書も面白い。
講談社文庫に収録されている各本が手軽で良いが、
中でも金印は捏造されたものだとする「七つの金印 (講談社文庫)」、
写楽の正体を素直に立証した「
東洲斎冩楽はもういない (講談社文庫)」、
細川勝元が建立した龍安寺の庭におかれた15個の石の意味を解明する「龍安寺石庭の謎 (講談社文庫)」がお薦め。


【目次】
関ヶ原勝利後、なぜ家康はすぐ江戸に戻ったか―巨大な敵とのもう一つの戦い
なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか―地形が示すその本当の理由
なぜ頼朝は鎌倉に幕府を開いたか―日本史上最も狭く小さな首都
元寇が失敗に終わった本当の理由とは何か―日本の危機を救った「泥」の土地
半蔵門は本当に裏門だったのか―徳川幕府百年の復讐1
赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したか―徳川幕府百年の復讐2
なぜ徳川幕府は吉良家を抹殺したか―徳川幕府百年の復讐3
四十七士はなぜ泉岳寺に埋葬されたか―徳川幕府百年の復讐4
なぜ家康は江戸入り直後に小名木川を造ったか―関東制圧作戦とアウトバーン
江戸100万人の飲み水をなぜ確保できたか―忘れられたダム「溜池」
なぜ吉原遊郭は移転したのか―ある江戸治水物語
実質的な最後の「征夷大将軍」は誰か―最後の“狩猟する人々”
なぜ江戸無血開戦が実現したか―船が形成した日本人の一体感
なぜ京都が都になったか―都市繁栄の絶対条件
日本文明を生んだ奈良は、なぜ衰退したか―交流軸と都市の盛衰
なぜ大阪には緑の空間が少ないか―権力者の町と庶民の町
脆弱な土地・福岡はなぜ巨大都市となったか
「二つの遷都」はなぜ行われたか―首都移転が避けられない時





関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 歴史

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/911-907d05b6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

ジャンルランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム