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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ノンフィクションライターの、ノンフィクション。「最相葉月 仕事の手帳」  

最相葉月 仕事の手帳
最相 葉月



本書は、ノンフィクションライターとしての最相氏の仕事への思いや教訓、気づき等を綴ったもの。
いわば仕事の「舞台裏」であり、
だから本筋としては著者・最相氏の作品を先に読むべきである。当たり前の話だ。

ところが、その読むべき作品として「絶対音感 (新潮文庫)」をチョイス・購入しているものの、実は未読である。
妻に「何か面白い本ある?」と聞かれたので、積読中の「絶対音感 (新潮文庫)」を提示。
そのまま現在に至っている次第である。
このままではいつまで経っても読めそうにないので、
絶賛積読解消期間と決意した今、とにかく本書を先に読むこととした。
(しかも、なぜか、「東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか」(レビューはこちら)は読んでいる。読む順番がおかしい。)

さて、ノンフィクションについては様々な分類があるが、
その著者がどのような立場かという点でも区分できる。
すなわち、当事者か、第三者かということだ。
いずれの場合も一長一短あって、どちらが良いという訳ではない。

ただし、科学者や事件・冒険の当事者が、皆優れた記録者・語り手であることは当然無理である。
また、そもそも当事者には、自身の経験が語るべき価値があるとは分からない場合もある。

そうした面から、
第三者の立場からある事象を客観的に評価・取材し、
過不足なく語るノンフィクション・ライターの存在価値がある。

ところが日本では、
何でもかんでも一次資料に価値があるという信仰じみた習性があるのか、
第三者であるノンフィクション・ライターの評価が低く、
専業的ノンフィクション・ライターによる作品への関心も薄い。

だからこそ、本書のように、
ノンフィクション・ライターとして自身で歩み、
今なお第一線で活躍する方の思いや気付きが語られるというのは、
将来のノンフィクション・ライターを育てる面でも価値があるだろう。

さて、本書は大きく4部構成になっている。
特徴的なのは、様々な「執筆者以外」の立場を交えながら、
ノンフィクション・ライターとして、
最相氏が思う「在り方」を説明している点だ。
(「最相氏が思う」というのは、本書では別に最相氏がノンフィクション・ライターの一般的な理想像を語っているのではなく、
最相氏自身が理想とする在り方を綴っていることによる。)

まず第一部。
最相氏は編集者としてキャリアを始めたこともあり、
文章を生業とする点について、執筆者の視点と編集者の視点の双方を持っている。
そこで、最初はそうした編集者の視点も交えつつ、
ノンフィクション・ライターとしての姿勢等について綴る。

第二部では、1人のゲストについて4回構成でインタビューする、
ラジオ番組のパーソナリティとしての経験を踏まえたもの。
例えば三浦しをん氏へのインタビューを採録しながら、
その折々の自身の質問や発言を冷静に分析することで、
取材に欠かせないインタビュワーとしての心構え、
テクニック、気遣い等を説明する。

第三部では、「書くこと」について。
例えば「絶対音感」を書くにあたって、
どのように取材対象者に、自身の求めるものを説明したか。
また、星新一の評伝である「星新一 ―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)」を素材として、
その取材過程で、どのように取材対象である縁者と関わっていったかなどが説明される。

そして第四部では、「読み手」という立場によるものだ。
手掛けた書評を数本収録し、ノンフィクション・ライターの視点からの「読み」の事例を紹介する。

ノンフィクション・ライターになろうという方はもちろん少ないだろうから、
本書が直接的に役に立つということは、なかなか無いかもしれない。

だが、誠実に調べ、考え、発表するという営みについては、
形はどうあれ、多くの方が関係していることだろう。
本書では、「書く」という行為に対して、誠実であることの重要さが繰り返し語られているが、
それを学ぶだけでも、本書の価値はあるというもの。
ぜひ本書と、最相氏の数々の作品を併せて楽しんでいただきたい。

【目次】
1 仕事の心得
仕事を教えてほしいですか/格好いい人と出会っていますか/やりたいことをやっていますか/制約を生かせますか/上手に催促できますか/沈黙に耐えられますか 他

2 聞くこと
聴かせるインタビュー/作家 三浦しをんさん/写真家 野町和嘉さん

3 書くこと
科学について書く/人間を書く

4 読むこと
書き手が読むノンフィクション/『サンダカン八番娼館』/『田中角栄研究 全記録』/『ヤノマミ』/『藝人春秋』/『桶川ストーカー殺人事件 遺言』/『こんな夜更けにバナナかよ』他






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