ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

植物と昆虫の、ダイナミックな共生を観る。「地球200周!ふしぎ植物探検記 (PHPサイエンス・ワールド新書)」  

地球200周!ふしぎ植物探検記 (PHPサイエンス・ワールド新書)
山口 進


…本書の執筆を機に陸路、海路まで含めて概算したところ、地球を約二〇〇周という答えが出てきた。
…つまり二〇〇周のうちの大半は単に探索と観察に費やされたのだ。
…しかし今振り返ってみると、この無駄の繰り返しがいかに重要であったかが身にしみてわかる。無駄のように感じる時間を過ごしてこそ、独自の視点が生み出されるのだ。



どうも今は使っていない学校もあるようだが、
かつては小学校のノートといえば、「ジャポニカ学習帳」(ショウワノート)の独壇場だった。
そして、勉強に集中できない僕は、教科書に落書きするか、ジャポニカ学習帳の表紙の珍妙な生きものや植物を見て、不可思議な空想に耽っていたものである。

このジャポニカ学習帳の表紙、「世界特写シリーズ」は、1978年以来、本書の著者山口進氏が担ってきたものだ。
昨今の美麗な写真と比較すると、さほど「美しい」ものではない。
だが思い起こせば、それらは全て、その生きている姿をありのままに伝えてくれるものだったと思う。

その旅のうち昆虫に関する話題については、「〈オールカラー版〉 珍奇な昆虫 (光文社新書)」(レビューはこちら)で詳しく紹介されているが、
本書は植物を中心にしたもの。
地球200周分の撮影旅行を行ってきた中から、
特に著者が惹かれた「ふしぎな植物」について、
その撮影に至るまでの旅行記、実際に見つけるまでの苦労、
そして発見してからの観察記録と気付き・驚きが綴られている。

撮影の苦労も確かにあるのだが、著者は「見つけたら撮影」というスタンスではなく、
開花する前の個体を見つけ、それを24時間観察できるベースを近くに作り、
そこでじっくりと狙った植物の開花を追う。
その過程でもちろん撮影もなされるのだが、それよりも本書で伝えられるのは、
じっくり観察することで初めて得られる発見の数々だ。

特に著者は、植物と他の生物との共生・共進化という観点をテーマにしており、
本書で取り上げられた様々な植物でも、
その花粉を媒介する生き物は何か、
そしてそのために植物はどのような特殊な進化を遂げているかを詳しく見ていく。

世界一大きな花、ショクダイオオコンニャクでは、その開花しきった時に立ち上る、
もうもうたる湯気。
温度計ではこの時、花穂は摂氏39℃にもなるというが、
この湯気こそ強烈な腐敗臭を遠方にまで行きわたらせる秘密であり、
これによって花粉を媒介するアカモンオオモモドシデムシが引き寄せられるという。
この臭いは約3時間で弱くなってしまうので、
これなどは開花をリアルタイムで見なければ実感できない状況なのだ。

そしてその瞬間をじっくり観察するからこそ、花粉媒介者であるシデムシの動きも観察できる。

またその経験があればこそ、
他の夜間に開花する植物は同様に発熱により臭いを拡散するものが多く、
それゆえに花の寿命が短いのだろう、という類推が成立する。

こうした視点と理解はほんの一例で、
本書ではこうした視点から、多数の不可思議な植物の魅力が紹介されている。
また同時に、それぞれの植物の原記載にあたった当時の博物学者の物語なども挿入されており、
博物学的な視点からも楽しめるようになっている。

山口氏の著作は、間違いなく昨今の生物学ブームのおかげで世に出たものだろうが、
こうした長い経歴と独自の視点を持つ人の観察記録が読めるのは、本当にありがたい話だ。

【目次】
世界一大きな花
巨大花ラフレシア
ハチと交尾するラン
土のなかで咲くラン
もっとも巧みな送粉術―中南米のバケツラン
どう見てもキノコにしか見えない花
アンコールワットの絞め殺しの木
「奇想天外」という名の植物
水上の覇者オオオニバス
世界一乾燥した大地の花
アリ植物
中国の青いケシ―雨傘植物との出会い


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