ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

理想の日本犬は、アメ細工。「秋田犬 (文春新書)」  

秋田犬 (文春新書)
宮沢 輝夫



秋田犬は近代の日本人が理想の日本犬を追い求め、作り上げた品種です。
作品と言ってもいいでしょう。(本書p76)


昨年から犬を飼っているが、やっぱり可愛い(←親馬鹿)。
朝は5:40から散歩。
帰宅時には(散歩は家族が先にいっているので)、しばらく遊ぶ。

今の犬は元野良犬(仔犬の時に拾った)である。
子どもの頃はヨークシャーテリアも飼っていたし、
近所の野良も居付いていた。
阪神・淡路大震災の被災犬を貰ったこともあったし、今の実家にはパピヨンがいる。
猫も何匹か飼った。
振り返ると色々な犬・猫に出会ったが、
皆性格も違い、面白かった。
それは個体の性格もあるだろうし、犬種そのものの気質もあるのだろう。

そして、様々な犬種が世界に溢れている中、
近年、評価が際立ち、世界中に愛好家が続出している犬種がある。
秋田犬である。
先日も、ザギトワが秋田犬を飼いたいと思っていることが話題となったところだが、
2016年には、イタリア1国で日本の犬籍登録数を上回り、
ペットビジネスを強く意識した中国の影響もあり、
秋田犬保存会の最高峰である秋保名誉賞クラスの犬は、1~2千万で取引される例もあるという。

その評価は形質はもとより、その素晴らしい性格によるものだ。

 「外見はかわいくとも真剣な犬なので、常に尊敬の念をもって当たらねばならない」(プーチン)。
 「高潔な日本の犬」「孤高の犬」(リチャード・ギア)
 「他の犬では絶対に同じだけの優しさを感じることはない」(ヘレンケラー)

これほど評価が高い秋田犬だが、
どのような犬種かとなると、少なくとも僕は、具体的には分からなかった。
漠然とハチ公のような「秋田犬」を思い浮かべ、
そうした犬種が遥かな過去から連綿と続いていたというイメージだったのだが、
実は秋田犬はそのような犬ではない、
それどころか、その犬種像じたいが時代によってかなり変動しており、
他の日本犬に比して、極めて人為的な犬種であるという実態を示す。
(ただし、批判や暴露本ではない。
 秋田犬を正しく理解し、今後にいかに遺していくかを問いかける本である。)

本書によると、秋田犬は、東北の土着犬のうち、マタギが使った犬が土台である。
その後、闘犬が流行ったことから体格の良い犬が交配され、
明治前半にはドイツ人鉱山技師が連れてきた超大型犬(マスティフ系といわれる)、
日露戦争後には樺太犬とも交配。現代に通じる秋田犬は明治時代に誕生した。
また大正期には土佐闘犬に負けたことから、土佐闘犬の血も導入された。
(土佐闘犬は四国犬に洋犬を交配させたもの。)
この頃、日本犬ならではの立耳・巻尾の特徴はなくなっていた。

一方昭和に入り、日本古来の土着犬が洋犬との交配で減少し、
山間僻地に遺った日本犬だけが残っていた。
そこから日本犬を天然記念物に指定しようという動きがでるが、
実は、洋犬との交配が進んだ秋田犬は一度見送られている。

そこで愛好家が立ち耳・巻尾の秋田犬を探し、交配により元の秋田犬を復元させていく。
ところが、(歴史的に)正しい秋田犬の姿を誰も明確に把握しておらず、
また秋田犬の定義もない中で、「日本犬唯一の大型種」として復元された。

その復元も、僻地のマタギ犬、北海道犬などとの交配によるもので、
「アメ細工」と表現されるほど、人間の意志が色濃く反映された犬種となった。

その成果もあって、日本犬唯一の大型種である秋田犬は、
日本犬として最初の天然記念物の指定を受ける。
(ちなみに、天然記念物として指定された日本犬は6品種、
 秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬(指定順)である。)

ただ、そもそも「秋田犬」という名称自体、
1931年(昭和6年)の天然記念物指定時につくられたものである。
それまでは大館犬、鹿角犬、南部犬などと呼ばれていた。

さらに、そうした人工的な復元もあったことから、
秋田県犬が品種固定されたのは、「おおむね1980年頃」と言われる程だ。
この頃から、耳の立たない犬や黒マスクと呼ばれる黒い口吻のイヌは出なくなったが、
今でも樺太犬由来の「長毛犬」はでる。
これが、テレビで有名な「わさお」だ。

長毛犬は嫌われ、かっては間引きの対象とされたもの。今でも秋田犬の品評会では失格。
しかし、そもそもかなり人工的な犬種であるため、遺伝子的に出ることは当然という。

また、1900年(明治33年)当時、大正天皇に献上された秋田犬は黒と白の斑。
現在は斑の秋田犬が出ることはないが、白黒の斑が古来の秋田犬として普通だったという事実もある。

こうした課題があれながらも、
世界各国から評判の高い秋田犬。
それは形質もさることながら、
ハチ公で象徴化されたような忠犬性、性格の素晴らしさがあるのだろう。

だからこそ、
理想的な形質を定めた秋田居犬標準に基づき、
秋田犬の質を保ちながら犬籍登録を行う秋田犬保存会の存続と、
秋田犬という犬種は、一体不可分の関係にある。

しかし世界的な流行による各国支部それぞれの志向、日本での後継者不足など課題も多い。

形質的には「アメ細工」のようでありながら、
それでも「理想の日本犬」として確立された秋田犬。
これを維持していくためには、
まずは多くの人が本書のような事実を知り、
秋田犬の成り立ちと課題に向き合うことが必要だろう。

なお、本書は、秋田犬という全般的な話しだけでなく、
後半ではハチ公についても詳しく紹介されている。

「知ったつもり」でいた秋田犬について、
気軽に読み始めながら、ぐんぐん惹き込まれる一冊だ。


【目次】
はじめに 孤高の日本犬―プーチンから聖女までが虜に
第1章 秋田犬はなぜ世界中で人気なのか?―日本的な凛々しさの魅力
第2章 秋田犬はどこから来たか―史実を読み解き、科学で迫る
第3章 忠犬ハチ公の誕生―空前絶後のスター秋田犬、その生と死
第4章 秋田犬の危機―世界での隆盛、日本での衰退
あとがき 「日本の宝」に魅せられて
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