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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

河童図、天狗の骨、供養絵額。「荒俣宏妖怪探偵団 ニッポン見聞録」  

荒俣宏妖怪探偵団 ニッポン見聞録
荒俣 宏,荻野 慎諧,峰守 ひろかず



博物学者というより「博物学」学者の感があるが、
それでも図抜けて横断的知識を持つ人である。
特に、政治経済的といった実社会的な知識ではなく、
民俗学やオカルト知識である点が良い。
そっち方面について大量の知識を持ちながらも、
その思考はオカルトとは一線を画している。
こうした才人がいることは、現代日本の幸福である。

その荒俣氏が、東北を練り歩く。
縦軸は妖怪、横軸は民俗学である。
同時に、宮沢賢治―南方熊楠、柳田國男―佐々木喜善といった人の繋がりにも焦点をあて、
何かを「解明する」というよりも、
こうした視点から岩手の妖怪遺物を見て歩く、といったもの。

それでも荒俣氏が足を運ぶだけあって、
出てくる妖怪遺物も興味深いものばかり。

多種多様な河童図、天狗の牙、天狗の骨、
カメ化石、岩手中央部だけで一時期流行った供養絵額、
方斎の幽霊画、死者が朽ち行く様を描いた九相図等々。

カラーの図版も多く、見るだけでも楽しくなる。
また、それぞれの来歴を踏まえながらも、
荒俣氏や同行の諸人が"ブツ"を客観的・冷静に分析するのも楽しい。

例えば「天狗の骨」は、実はイルカの骨であった。
だがそれで終わるのではなく、
どうしてイルカの骨が「天狗の骨」と誤解されたかとか、
平賀源内も「天狗の骨」=イルカの骨と分かっていたが、
あえて「天狗の骨」としておこうとしたのではなど、
その"ブツ"の背後を推測していくところが、荒俣氏らの視点で楽しいところである。

惜しむらくは、本書が峰守ひろかず氏が同行の語り部となって書下ろしているものであり、
現場現場の荒俣氏や諸氏の語りを再現している点。
もちろん臨場感があって楽しいのだが、
たぶん荒俣氏が直接筆を執ったら、より広範雑多な広がりをみせただろう。
(まあ、昨今の荒俣氏のメディア露出からすると、そんな時間はとれないだろうが。)

宮沢賢治―南方熊楠の繋がりにしても、
それがあったという手掛かりは随所で示されるものの、
荒俣氏が最初のそれを着眼した契機とか、本書以外での分析・考察等は示されておらず、
全般的に消化不良というか物足りない感じがする。

ただそれでも、岩手県の様々な「奇妙なモノ」を巡りながら、
豊富な知識に裏付けられた雑談を読むのは、楽しい時間である。
ちょっと変わった紀行文として、気軽に読むことをお勧めしたい。

それにしても、荒俣氏がいなくなったら、
こういう立場と知識から解説するの、誰が跡を継げるのだろう?

【目次】
第1章 探偵団、まずは岩手で妖怪を考える
対談 宮沢賢治×南方熊楠談義―岩手と和歌山をつないだ超絶な日本人
第2章 地獄と極楽、この世とあの世。探偵団、死後の世界を歩く
第3章 君はもう見たか!?好奇心が爆発する殿様の博物コレクション
第4章 対談 京都vs東北―中央から見た鬼の国
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