ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

エンジェルフライト 国際霊柩送還士  

エンジェルフライト 国際霊柩送還士
佐々 涼子
【読んでおくべき度】★★★★【殿堂入り】




海外で亡くなった日本人を受け入れ、遺族まで運ぶ。
また、日本で亡くなった外国人をエンバーミングし、国外へ送り出す。
こうした仕事が必要であることはわかるのだが、
これまで全く意識することは全くなかった。

本書は、日本で初めてこの「国際霊柩送還」専門に設立された、
エアハース・インターナショナル株式会社の仕事のルポである。
海外旅行が普通となった今、こうした国際霊柩送還の現実を知っておくことは、
非常に重要である。

また国際霊柩送還に限らず、
本書によってエアハースという存在を知ることができて、本当に良かったと思う。

この分野だけでなく、その質、心もまさしくトップランナーである。
単に遺体を整えるだけでなく、遺族がきちんとお別れをできるよう、
心をこめて行なわれるエンバーミング。
そのクォリティは、まさに日本人ならではであり、
同社を設立した山科・木村両氏の人格に負うところが大きい。
お二人と、お二人に続く同社の方々の働きぶりに、
人として教えられることが多くあった。

一人でも多くの方に、お読みいただきたい。
僕としては、今年のベストの一冊である。

【目次】
遺体ビジネス
取材の端緒
死を扱う会社
遺族
新入社員
「国際霊柩送還」とはなにか
創業者
ドライバー
取材者
二代目

親父
忘れ去られるべき人
おわりに

【メモ】

P16
「特に国境を越える遺体は、海外でどんな扱いをされようと遺族の目が届きにくい。
 そんな状況に加えて、死を語ることを極端に避ける日本の国民性が加わり、国境を越えての遺体搬送の現場を「未開」ともいうべき混沌とした状態にしている。信頼できる人のアドバイスをもらえた遺族は幸運だが、たまたま悪質な業者の手にかかったら、いったい何が正常なのかの判断すらできないまま、不当な扱いを受けることになる。」

P28
外国人や日本人の遺体を故国に搬送する会社
 :エアハース・インターナショナル株式会社
 =日本初の国際霊柩送還専門会社、2003年設立
会長 山科昌美氏
社長 木村理惠氏

P31
日本は他国と陸続きの国境を持っていない。そのため国際霊柩送還が発達せず、専門的な知識を持つ業者がいなかった。だから未だに海外搬送のための知識が一般に乏しく、取り返しのつかないミスが繰り返されているという。


P94
エアハースへの依頼
①保険ケース
 海外旅行傷害保険加入、または海外旅行傷害保険付きのクレジットカード所有者、勤務先がアシスタンス会社と契約
②プライベートケース
 個人で依頼 

個人が自分だけで行なうのは、手続き、金額で大きな負担


P97
国際霊柩送還の重要な仕事
・遺体や遺骨の処理
 公衆衛生上の観点から、エンバーミングしていない遺体は航空機で運べない。
現地でエンバーミングされるが、貨物室内での気圧差や、長時間の輸送が遺体に損傷をあたえる
現地の業者も様々、技術・方法もばらばら

アメリカ:ライセンス制
 南北戦争が契機、国土が広いためエンバーミングが発達
 90%以上がエンバーミングされる
日本・韓国
 アメリカでライセンスをとったエンバーマー、ただ日本はアメリカほど発達していない
ギリシャやイタリア
 技術が未熟な場合が多い
インド・ネパール・スリランカなど
 処置自体がおざなりな場合が多い

P122-123
非非日常的な葬送儀礼=眼に見えるかたちでこの世とあの世をつなぐ
因習=過去の葬送の記憶=かつて親類縁者を送り出した儀式
それによって、家族は先祖と同じところへ旅立つことを悟る
地域での代々続く葬儀業=そうした葬儀の形を伝えるもの
振興企業の参入によって、失われつつある


P125
遺体に触ったこともない葬儀業者がいる
葬儀社はイベント司会業ではない(エアハース:山科)


P131
スマトラ沖大地震
日本人観光客も多数死亡、2005年の発表では死者40人、不明者2人


P135
東日本大震災以前にも、世界各地では悲劇が繰り返されてきた。

「他人事(ひとごと)」という名の楽観と麻痺


P269
ジャーナリスト山本美香氏の事件
父親のコメント
「…凶弾に倒れて無念ではございますが、実家に帰ってきて昼過ぎまで寝ていて、『眠い、眠い』と言っていたときと同じような顔で帰ってきてくれた。それがせめてもの救いです」

P274
「生きなさい。ふり返っていのちを無駄にしたと後悔しないように。
 生きなさい。してきたことを悔やみ、別の生き方を望むことのないように。
正直で、じゅうぶんな人生を生きなさい。
生きなさい。」
エリザベス・キューブラー・ロス(「人生は廻る輪のように」上野圭一訳)

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