ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

夢を追え!! 「バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)」  

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
前野ウルド浩太郎



研究者は論文を出してナンボという世界である。
それは八百屋が野菜を売ってナンボ、という程に当たり前の話である。

だが、研究は八百屋とは違う。
極めて高い専門性ゆえに、門外漢には何が目的で、何が課題なのかを想像することすらできない。
だからこそ、まずは「何がワクワクして研究しているのか」が知りたいのだ。

ところが昨今、特に生物研究者が元気である。
ダイオウイカを初めとして深海生物。日本の恐竜。昆虫。鳥類。
本ブログでも紹介した本も多いし、いわゆるベストセラー的売り上げを記録しているものすら、ある。

以前より、研究者が恵まれているのか?
以前より、劇的に研究が進んだのか?

様々な要因があるだろうが、根本的なことがある。
それはおそらく、「これ(研究、研究対象)が好きだ」という素直なメッセージを、社会が求めているからだろう。

端的に言えば、「夢を追う姿」だ。

現実社会は、閉塞感に溢れている。就職も厳しい。
独身、結婚、子育て、介護、いかなる選択肢をとっても、昔のような「平穏な日々」は期待しがたい。
誰もが、夢を追うことを恐れている。

その中で、研究者は夢を追うことに人生を賭けた人々だ。
だからこそ、その活動を知ることが、自分たちの人生の支えとなる。

もちろん研究対象の面白さもあるが、どうも多くの読者は、こうした夢を託す物語を欲しているのではないかと、思う。

その意味で、本書は突き抜けた一冊である。

著者はバッタ好き。バッタ好きが嵩じてバッタアレルギーになるなんて、
研究者として死活問題ではないかと思うが、それほどバッタ好きである。

そして、そのバッタを研究することに、人生を賭けている。

きっかけは、ファーブルだという。
子どもの頃に読んだファーブルの伝記。その姿に憧れ、自身も昆虫学者になるのだという決意。

これこそ、「夢」だろう。

だが日本の現実は、諸外国に比しても特に研究者に厳しい。

博士号を取っても、もちろんすぐに就職口は無い。
論文実績がなければエントリーすらできないが、論文を書くデータを得るには、研究が必要だ。
だが、研究できる環境が無い、という負のスパイラル。

この中で、著者は2年間の任期で380万円(生活費+研究費)の支援が得られる制度(これも倍率20倍)を利用し、
研究対象であるサバクトビバッタの本場、
モーリタニアの国立サバクトビバッタ研究所へ、単身飛び込んだ。
それが31歳の時である。

日本人すら稀なモーリタニア。
言葉も通じない国で、とにかくサバクトビバッタのフィールドワークに駆ける日々。

だが、数多の苦難が(本当に神様もイジワルと思うくらいの苦難が)著者を襲う。

そうした日々を、著者がどう生き抜いてきたのか。
サバクトビバッタの研究という本職における論文もさることながら、
なぜ本書「バッタを倒しにアフリカへ」という新書を出すに至ったのか。
そして、そもそもなぜ著者の名前は「ウルド」が入っているのか。

こうし疑問は、本書を読み進めることで笑いと涙(これは大袈裟だが)の中で、
納得していただけると思う。

本書は、決してエキセントリックな売名本ではない。
ファーブルに憧れた少年が、昆虫学者を夢見て、
そして実際にその道の途上で邁進する物語である。

緑の全身タイツに身を包み、神々しく見えるほどの男の生き様、
ぜひ本書で味わってほしい。

なお、著者のブログはこちら(「砂漠のリアルムシキング」)である。

また、フィールドワークの詳細については、「孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)」も刊行されている。
この本も読みたいと思っているんだけど、後回しになっちゃった。


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category: 昆虫

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