ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

華やかな世界を彩る職業人。「オークションこそわが人生」  

オークションこそわが人生
ロバート・ウーリー



子どもがまだ仮面ライダーや戦隊モノにハマっていた頃。
X'masには当然それらのグッズが期待されるのだが、
そうしたグッズが販売されるのは、おおむね夏から秋。
12月には既に転売屋に買い占められ、高価格の出品しかなくなる。
だからX'masを見越して入手しておくのが、数年間の任務であった。

需要と供給が価格を決めるというのは仕方がないが、
こうした「プレミア価格」は、長らく日本では骨董品や切手・コイン等、
限られた趣味の世界だったと思う。

何でもかんでもプレミアがついたり、「プレミアがついて当然だ」と期待(または諦め)するようになったのは、
恐らく「開運!なんでも鑑定団」も一部影響しているだろう。

そして、プレミア価格という需要と供給によって決定される価格を、
リアルタイムで創出する場が、オークションである。

オークションと言えば、すぐ思い浮かぶのがChristie'sクリスティーズとSotheby'sサザビーズ。
美術品競売で著名だが、そのうち本書はサザビーズにおいて、
装飾美術品部門の責任者であり、また1974年には上席副社長にも就任した、
名物競売人ロバート・ウーリーの自伝である。
ロバート・ウーリーは特にロシアの装飾美術品が専門であり、まずはその価値を見抜き、高くオークションでさばくことによって高評価を得た。
本書前半部では、そうした「目利き」として成長してきた過程と、サザビーズでどう働き、
いかなる成果をあげたかが紹介される。
時代は1965年から70年代。サザビーズ自体もまだ現在のような大規模会社ではなく、
西洋絵画がほぼ中心だった時代だ。
だから、つまらない成功譚やビジネス論というより、過去の時代を振り返るスタンスで楽しめる。

そしてサザビーズにおいては、様々な顧客やオークションの話題。
ある個人の遺産全てをオークションにかけるハウス・オークションの段取り・テクニックなど、
全く今後の人生に役に立たないけれども、華やかなオークションの陰にこうした苦労(と楽しみ)があるのか、と興味深い。
登場する様々な大富豪の名前には日本では縁がないが、ちらほら、アンディ・ウォーホルやエルトン・ジョン等の名前もあって、アメリカの成功者たちの生活が垣間見える。

またロバート・ウーリーのオークションは、単なる進行役としてではなく(それでも十分な知識と技術が必要だが)、会場に参加している人々を直接煽り、誘い、促すことでオークションを盛り上げていく。
競売人がこうして関与するオークションはロバート・ウーリーが嚆矢らしく、
本書後半でもそのテクニックを用いて、様々なチャリティ・オークションに競売人として呼ばれている様子が伺える。

そう、本書を読んで最も驚いたことの一つが、オークションの「競売人」が単なる雇われ者ではなく、
彼自身が目利きであること、
そして「オークションという手段で多額の収益を上げるプロ」として、社会的な立場が確立されていることだ。
日本でもチャリティー・オークションは開催されているだろうが、
そこに「プロの競売人」が呼ばれ、積極的に多額の収益(チャリティーとしての収入)を得ようとすることは、まずないだろう。
だが、チャリティ・オークションを開くコストをかけるなら、最大限の収入を上げようとすることは、間違いではない。
日本だとなあなあと済まされるところだが、こうしたアメリカのリアリスティックな考え方は、とても好ましい。

さて、本書はこうした競売人の自伝としても楽しめるが、一方で、ロバート・ウーリーがゲイであり、エイズで死亡しているという事実が、かなり大きなウエイトをもって語られている。
1980年代以降といえば、ゲイに対するバッシングと理解、エイズに対する恐怖と受容など、
アメリカ社会でも激変期と言える時代だ。
その中にあって、サザビーズを代表する競売人であり、様々な階層と接する機会が多かったロバート・ウーリー。
だが彼は、自らがゲイであることを隠さず、常にオープンであった。
本書でも、真剣な恋愛と別れ(一人は相手がエイズにより死別するもの)が描かれているが、
男女間の恋愛と変わるところは全く無い。

あくまで競売人として人生を全うしていくロバート・ウーリーの姿は、
ゲイだとか何とかは関係なく、やはり一人の、とても特殊なビジネス界で成功をおさめた人間の物語として、
誰もが楽しめるだろう。

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