ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

確かめることが、面白い。「〈オールカラー版〉 珍奇な昆虫 (光文社新書)」  

〈オールカラー版〉 珍奇な昆虫 (光文社新書)
山口 進



最近出版界が昆虫ブームためだろう、今まで地道に活動されていた諸氏や、マイナーな分野のスペシャリストによる本が相次いで出版されている。
昆虫という恐ろしく多様な生物を知るためには、情報は多い程良く、有り難い限り。

本書も、長年「ジャポニカ学習帳」の表紙写真に携わっていた方による一冊。
残念ながら僕自身は記憶に残っている写真はないが、
それくらい身近で日常的に目にしていたのだろう。

さて、表紙である。
ランに擬態しているとして有名なハナカマキリ。

だが本書第一章の最初の見出しでは、
「ハナカマキリはランにいない」。ええっ、そうなの、と驚いた。

著者は30年以上前、取材中にふと見た低い草のてっぺんに、
ハナカマキリの幼虫を見いだす。
その違和感を抱えつつ各地で取材を重ねるうちに確認されたのが、
「ハナカマキリはランにいない」という事実である。

現実にはランに来る昆虫は少なく、花期も限られるなど、
カマキリがランに擬態するメリットはない。

実はハナカマキリは、ミツバチに一般的な「花」と認識させている。
紫外線下では、ハナカマキリは蜜のある花と同様に見えるという。
そしてここが昆虫の楽しいところなのだが、
ハナカマキリの大あご腺から、ミツバチの集合フェロモンと同等の成分を含む物質が分泌されているという。

すなわち、まずは視覚によって「花」と認識させ、
近づくとフェロモンにより、ハナカマキリの正面から接近せざるを得なくなる。

ランに「擬態」するという消極的というか隠蔽的な方法ではなく、
極めて積極的にミツバチを狩っているのである。

こうした事実は、まさに昆虫を地道に追い続ける方でなければ見出せないだろう。

本書では長い取材遍歴の中から、
こうした様々な「珍奇な昆虫」が紹介されている。
特に、「形態」だけではなく、その形態を生むに至った「生態」が詳しく語られており、
この点でブームに乗っかっただけの類書とは一線を画す。

新書ながらオールカラー、旅行記としても楽しめる一冊である。

【目次】
第1章 東南アジア~最も多様性に富む地域
第2章 オセアニア~固有種の王国
第3章 中南米~巨大昆虫を育む森林地帯
第4章 アフリカ~砂漠に生きる小さき者たち
第5章 日本~意外な昆虫大国

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