ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

災害下で伝えることの、苦しさ。「河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙」  

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙



日常では滞りなく受信・発信がなされるが、
未曽有の大災害の中では、情報をどう確保するかが、生死を左右する。
どこが安全なのか、どこに救助が来ているかという情報はもちろん、
発災時には、「何が起きているのか」といった基本的な情報すら、
一個人が掴むことは困難だ。

東日本大震災においては、ラジオが役に立ったという話があったが、
だが、着の身着のままで放り出されたり、
電気の確保すら困難な状況下では、ラジオも難しい。

日常的メディアで、(利用時に)電気を使わないもの。
そうすると「新聞」というのが真っ先に思いつくが、
誰もが被災者という状況であり、新聞社も記者も、例外ではない。
東日本大震災。
死者15,000人を超える大災害の中、地元の新聞が発行できなくても、それを咎める人はいなかっただろう。

だが、「情報を伝えること」を日々の使命として生きている河北新報社の人々は、
様々な苦難と葛藤の中、被災者の目線から、大震災を伝える新聞を発行し続けた。

僕らは「新聞」という成果物だけを見るが、
その一文字、写真、レイアウト、印刷。輸送に至るまで、
数多の人々が関わっている。

本書は、未曽有の大災害の最中、
被災者のための新聞を発行し続けた河北新聞社のドキュメンタリーである。

美談や成功譚ばかりではない。

自身や関係者も被災者・犠牲者である苦悩、
被災者のために、何を、どう伝えるかという苦悩。
「伝える」ことを優先する葛藤もあれば、「伝えたが救えなかった」苦しみもある。
それらも含めて、全てを記録したのが本書だ。

今後も大災害は起こる。
その中で、情報の断絶は必ず発生するし、地元紙が同様に新聞を発行できるとは限らない。
本書のとおり、「被災地で新聞を発行すること」は、とてつもない困難を伴うからだ。

そうであればこそ、本書は他と代え難い、貴重な記録である。

また、「伝えること」に真摯であるがゆえ、
東日本大震災を機に人生が変わってしまった人々も少なからずいる。
本書は、記者に限らず、「伝えること」を志向する人々―、
特に若い人々に、ぜひ読んでおいていただきたい。

【目次】
第1章 河北新報のいちばん長い日
第2章 気仙沼から届いた手書きの原稿
第3章 死者と犠牲者のあいだ
第4章 配達が大好きだったお父さんへ
第5章 窮乏するロジスティクス
第6章 福島原発のトラウマ
第7章 避難所からの発信
第8章 被災者に寄り添う
第9章 地元紙とは、報道とは
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category: 事件・事故

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