ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

生々しい祈り、そのままに。「ミステリーな仏像」  

ミステリーな仏像
本田不二雄



「仏像」に対するイメージは様々だが、それぞれの姿を自由を描けるわけではない。
各仏―如来、菩薩、明王、天部や羅漢などに至るまで、
大系化された仏教世界においてその位置づけが定まっているように、
その形も定まっている。
だからこそ、その形からその仏像が「何か」を知ることができる。

ところが一方、人々の祈りは様々だ。
その祈りの受け皿となるべき「仏像」が在れば良いが、
それが合致しない時、人は新しい仏像を創りだすことがある。

そうした荒々しく、かつ生々しい祈りがイメージ化されたとき、
従来の仏とは異なる姿が現れる。
それを、無関係な第三者が容易に理解できるとは思えない。

本書おさめられているのは、そうした生々しい祈りの姿だ。


さて、本書を読む決め手は、
香川県観音寺市にある「大野原の生木地蔵」が収録されていたことだった。
もう何十年も前になるが、県内の保存木を巡った時期があり、
その中でこの仏像に出会った。
(観音寺市観光協会のHPで見ることができる。)

小高い丘の上、数々の墓石がある中に聳える、一本のクスノキ。
その一面は建物で囲われている。
そしてこのクスノキ、まだ生きているクスノキを抉り、
中に地蔵菩薩が掘り出されているのだ。

生きている木から仏像を掘り出す。
どれほどの想いが在れば、それほどの行為ができるのかと、
恐ろしくも感じたほどだ。

その由来も本書に記載されていた。
天保7年(1837)、病弱の娘の病気平癒を祈願し、四国八十八箇所を巡った森安利左衛門。
彼が伊予で見た生木地蔵を、娘のために故郷で刻んだという。
その結果、娘のナオは100歳まで生き、大正8年11月26日に亡くなったという。
その御利益が、この生木地蔵を今日まで遺している。

本書には、様々な「ミステリーな仏像」が紹介されている。

法然寺(香川県高松市)にある、法然上人像。
胸がカラクリ仕掛けのように開き、
中にもうひとつの合掌像が現れる。

また、仏像と言えば正面を見据えているものだが、
萬日堂(群馬県高崎市)の阿弥陀如来立像は左下を見ている。

さらに、ガリガリの姿の「黒ぼとけ」(応仁寺(愛知県碧南市))。

まるで人体模型のように、
仏像の内部に骨格・臓器を象った像が納められている栄国寺(愛知県名古屋市)の阿弥陀如来坐像。

いかなる祈りが、そのような姿を求めたのだろうか。
本書を紐解きつつ、もしお近くに在るのならば、ぜひその姿を拝んではいかがだろうか。

【目次】
【第一章】仏像が秘めていたもの
1 隠されていた裸形像
2 格納された秘仏
3 骨格・臓器をそなえた仏像
4 「八手観音」とその胎内仏

【第二章】ありえない仏像
5 ついに立ち上がったホトケ
6 振り返る仏像たち
7 膨張をつづける頭髪と童顔
8 知られざる「やせ仏」
9 何ごとかを告げる阿弥陀仏

【第三章】霊木からの化現
10 立木からあらわれたホトケ[一]
11 立木からあらわれたホトケ[二]
12 母なる円空仏
13 木とともに生き続ける地蔵尊
14 永遠に開眼しない観音像
15 無眼と閉眼の思想

【第四章】奇仏をめぐる旅
16 オールマイティな地蔵尊
17 東京の変わり地蔵めぐり
18 びんずるさんが愛される理由
19 ミステリーな東京仏
20 「家康大黒天」をめぐる謎
21 化け猫騒動と秘仏

【第五章】女神像の秘奥
22 ブッダを産む聖母
23 子守をする荒神
24 地母神か山姥か奪衣婆か
25 人髪が植えられた鬼子母神
26 異界の女神・八百比丘尼
27 怨霊になった小野小町

【第六章】神々を発見する
28 御神体の神像あらわる
29 鬼神の肖像
30 ビリケンさんの神々習合
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