ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

東京湾、やっぱり面白い!! 「都会の里海 東京湾 - 人・文化・生き物」  

都会の里海 東京湾 - 人・文化・生き物 (中公新書ラクレ)

木村 尚



テレビ番組というと、NHKに代表されるような知識を提供するスタイルか、
民法のように一時的な笑い・感動を誘う番組が多い。
その中において、知識を実践するワクワク感を提供する稀有な番組の一つが、おそらく「THE! 鉄腕!DASH!!」ではあるまいか。
コーナーによる落差はあるとはいえ(0円食堂はちょっとなぁ…)、
様々な知識と技術を元に、「壮大な実験をやってみる」というのは、子供の頃に憧れた生活スタイルの一つである。

さて、そのコーナーの一つに、2009年4月に始まった「DASH海岸」がある。
東京湾に面したゴミだらけのヘドロ海岸を、生き物溢れる古の東京湾に戻すという試み。
人工干潟を造り、魚礁を据え…と、様々な工夫を重ねながら、
徐々に環境が改善されていく。

またそのスピンオフとして、多摩川や東京湾各所の生き物調査も行っているのだが、
それらに同行しているのが、本書の著者 木村尚氏だ。
現在の肩書はNPO法人海辺つくり研究会の理事(事務局長)とのことだが、
若い頃からNPO畑を歩いていたわけではなく、まずはサルベージ会社に就職。
だが、海を良くしたいという想いから、海洋調査コンサルティング会社を仲間と起業する。
しかし直接海を再生する事業に携われないもどかしさから、「人生は一度きり」と、40歳の時に会社を退職。
その後、横浜市の海域環境創造事業等に関与しながら、2001年から現在のNPO法人海辺つくり研究会として活動している。

温和な風貌ながら、「海を良くしたい」という熱意から40歳で退職するという行動力は、やはり並大抵のものではない。
その熱意により、人工海浜やアマモ再生の技術力を培い、NPO法人海辺つくり研究会として10年目の活動を迎えようかという時期に、「THE! 鉄腕!DASH!!」の「DASH海岸」が始まる。
まさに「機が熟した」と言って良いタイミングだ。

本書は、そうした木村氏から観た生き物の住む東京湾の現状を伝えるもの。
「THE! 鉄腕!DASH!!」で上陸した第二海堡、「すだて遊び」を行った盤洲干潟など、同番組で取り上げられた情報も多く含む(ただし、番組エピソードとかは無い)。
その上で、番組では伝えきれない部分、例えば過去からの経緯や、現在の「分断された干潟」の位置関係、またそれぞれの干潟で増えている貝類などの話が盛り込まれており、
かつての生きもの溢れる東京湾と現在の落差が痛感される一冊だ。

それでも最近の印象として、東京湾に流れ込む水は改善されたし、生き物も戻りつつあり、
東京湾は良くなっていると感じることも多い。

だが木村氏は、本書冒頭で明言している。
「東京湾はよくなっていない。
 東京湾に残された傷跡は余りにも深く、自然治癒は期待できない。
 何もしなければ、現状維持どころか、さらに悪化する恐れもある。」
と警鐘をならしている。

東京湾から、何が喪われてしまったのか。
復活させるために、どんな手段があるのか。
それを考えるヒントが、この一冊だろう。
「DASH海岸」という追い風に乗って、これまで東京湾の環境を気にも留めなかった層が、本書を手に取ることを期待する。

なお、巻末に枡太一アナウンサーとの対談がある。
お二人とも本当に海の生きものが好きなんだなあと、ほのぼのと読み閉じられる構成。

【目次】
序章 東京湾はよくなっていない
1章 東京湾と私の夜明け前
2章 都会の里海 東京湾 前編
3章 都会の里海 東京湾 後編
4章 東京湾の生き物
5章 よみがえれ、東京湾
生物多様性対談 この夏は、干潟にダッシュ!

枡太一氏については、下記の本がお勧め。
改めて、枡氏と木村氏が同時期にマスコミに露出するって、
沿岸環境の改善のために、時代が要請したメッセージだなと感じる次第。

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category: 環境

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