ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本の恐竜発掘の黎明期を辿る。「フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ」  

フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ
長谷川 善和



国立科学博物館へ行けば、やはり目につくのがフタバスズキリュウ。
恐竜ではないものの、日本の古代動物に興味があれば、
なにはともあれ真っ先に思い浮かぶシンボリックな化石である。
DSC_0698.jpg

ニッポンの恐竜 (集英社新書 483G) 」(レビューはこちら)でも紹介されているとおり、日本でも恐竜・首長竜等の化石は近年多数発掘されている。

特に、「ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで 」(レビューはこちら)のように、恐竜の全身骨格化石まで発掘された。
ハドロサウルス化石の発掘でも並大抵ではない苦労があったが、
それなら今から約50年前、1968年(昭和43年)に発見された日本最初の首長竜では、どのような発掘状況だったのか。

それを明らかにするのが、本書である。

一読、やはり驚くのは隔絶たる時代。
高校生の鈴木直氏が化石の一部を発見し、伝手を辿って国立科学博物館の著者へ連絡。
著者も急ぎ駆けつけ、首長竜の化石であること、しかもほぼ全身が残っていそうだと判明。

ところが、その発掘費はおろか、出張費すら自腹であった。
(博物館からは出なかった。)
そこで現地の石屋さんに発掘を依頼した。

今では考えられないような状況である。
だが、日本本土から中生代の大型爬虫類の化石が発見されるはずがないという考えが定説だった時代、
こうした「出るかどうかも分からない」化石研究に研究費を費やす必要はないという風潮だったのだろう。

だがその結果、頭骨の特徴的な部位やその他の部位が失われるなど、多くの損失が生じてしまう。

一方では、発掘現場は日々見物人が押し寄せる状況。
また発掘現場の目前でかって子供が溺れたからと、急遽「お祓い」をする。
化石のクリーニングにあたるのは「考古学専門の学生」だ。

今となっては考えられない話ばかりだが、
当時としては出来る限りのことをしてくれた、というべきだろう。

その結果得られたのが、冒頭に掲げた新属新種の首長竜化石である。

科博に展示されているのはレプリカだが、その復元も簡単にはいかない。
何しろ日本初の首長竜、参考になる見本も無い。

何とか海外の首長竜のレプリカを入手したりと、前人未到ならではの苦労を重ねながら、
今、僕らは科博でフタバスズキリュウを見られるのである。

本書刊行は2008年。

資料不足等もあり、正式な記載がなされていなかったフタバスズキリュウがFutabasaurus suzukiiという学名が確定したのが2006年5月であるから、この記載を踏まえての総括、という位置づけでもあるのだろう。

こうした第一歩を踏み出した当時の状況は、当事者でなければ語ることができないことを考えれば、
発見から40年、よくぞ刊行してくれた、と感慨深い。

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