ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ニセモノだからこそ、面白い。「ニセモノ図鑑: 贋作と模倣からみた日本の文化史 (視点で変わるオモシロさ!)」  

ニセモノ図鑑: 贋作と模倣からみた日本の文化史 (視点で変わるオモシロさ!)
西谷 大



ゼロ THE MAN OF THE CREATION」という漫画がある。
天才的な技術と豊富な知識、圧倒的な記憶力によって、依頼された品を完璧に複製・再現する人物の物語だ。
いわゆる贋作モノだが、ゼロが創るものは「本物」であるとされる。
なかなか面白い漫画なのだが、これが楽しいのは、現実世界でも常に真贋の問題があるためだ。

実際、驚異的な贋作者もいれば(未読だが「ピカソになりきった男」など)、杜撰なモノであっても、人を「騙す」ことさえできれば本物として通用し、社会を混乱させうる(例えば、「偽書「東日流外三郡誌」事件 」(レビューはこちら )など)。

また贋作は美術作品に限らない。
むしろ実用品であればこそ、ニセモノが介入する余地もある。
特に金銭に直結するモノ、例えば遺言書(「筆跡鑑定入門──ニセ遺言書、文書偽造を見破るには」(レビューはこちら ))にもニセモノは有り得るし、
ずばり偽札(「」レビューはこちら)になれば、国家レベルでの贋作づくりも有り得る。
(第二次世界大戦中の日本の偽札作りについては、「陸軍登戸研究所“秘密戦”の世界―風船爆弾・生物兵器・偽札を探る」(レビューはこちら) )でも取り上げられている。)

人の営みが損得勘定に左右される以上、ニセモノは人々の生活から切り離すことはできない。

そうすると、人がニセモノを造り、買い求め(騙される場合もあれば、知ったうえでの購入もある)、活用する姿というのは、まさに人の「民俗」そのものと言えるだろう。

本書は、「本物」を収集・展示することが使命の一つである国立歴史民俗博物館が、
あえてニセモノに注目した企画展、
「ジュラ紀から現代まで」とうたった「大ニセモノ博覧会」 から、そのエッセンスたる展示物を紹介したものだ。

例えば戦前までの日本では、ある程度の家には座敷があり、床の間があった。
床の間には春夏秋冬、また祭事に応じて掛け軸―書画をかける。
その「家」が地域を代表する資産家であれば、その書画は「由緒正しい作品」である必要がある。
そこに、ニセモノが介在する余地が発生する。

また、「由緒」といえば、そのものずばり「家の由緒」「特別扱いの由緒」もニーズがある。
本書で紹介されている例は、先祖が武田家に仕官したという「由緒」や、
また甲斐国で行われた特殊な換金法に基づき、年貢が低率になることが保証される「恩借証文」などだ。
精巧なものから稚拙なものまで、こうした偽文書造りが一般化していたことが伺える。

ちょっと脱線するが、「東日流外三郡誌」事件を引き起こした和田氏も、
こうした「古文書偽造」を商いとする系譜に連なる人物だったのだろう。

さて、本書で面白いのは、本物が存在しないニセモノ、すなわち空想の動物も取りあげている点だ。
具体的には「人魚のミイラ」である。
ペリーの航海誌には、和歌山を通過する際に「人魚のミイラを作っている」と記述があるらしく、
どうも人魚のミイラは特産物の一つだったようだ。

「大ニセモノ博覧会」の開催にあたり、人魚のミイラを借りることができなかったため、
筆者らは新しく作っていまう。
その「正しい作り方」を知っている人がいたというところが、面白い話である。

サルの上半身と鮭の下半分を組み合わせるといった基本的な技法は知っていたが、
実際に作るとなると、さらに様々なテクニックがあって興味深い。

生の素材をミイラ化させるために漬け込む液、その期間。
サルだと腕が長すぎるため、それを短くする配慮。
そしてミイラに古色をつけさせめための方法など。

いやはや、ニセモノ造りは奥が深い。


【目次】
第1章 ニセモノとおもてなし
第2章 なぜ偽文書は作られたのか?
第3章 パクリかパロディか
第4章 ニセモノを創造する
第5章 ニセモノから学ぶ

▼手軽に楽しめる。


▼未読。いつか読みたい。


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