ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

50年前の遭難事故から、人は学んでいるのだろうか。「空と山のあいだ―岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間」  

空と山のあいだ―岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間
田沢 拓也



山へ向かえば、どんなに低くとも遭難の可能性は常にある。
(その事例は、例えば「ドキュメント 道迷い遭難 (ヤマケイ文庫) 」(レビューはこちら)に詳しい。)

ただ一般的に、高い標高、冬山や春秋であっても天候の急変、ルートの難しさ等から、遭難の可能性は高まる。
近年も様々な遭難事故が発生し、例えば羽根田氏によるケース紹介と分析が行われている。
(例えば「ヤマケイ新書 山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件--レビューはこちら)など。)

遭難記録の刊行とそれを読むことは、通常の読書とは異なり、やはり遭難防止という実務的な面もあるだろう。

ただ、岩木山で本遭難事故が起こったのは1964年。今から50年以上前でもあり、
装備・情報・テクニック等々は、余りにも変わっている。
(確認したら、Googleのストリートビューで山頂まで確認できたほどだ。)

だから、本書がこれからの遭難防止に直接的に資するとは、思えない。

だが、「高校生が、慣れ親しんだ山の山頂を、いつもと違う季節に仲間と共に目指す」という冒険は、
いつの時代も有り得るだろう。

本書は1964年(昭和39年)1月、秋田県大館鳳鳴高校の山岳部員5人が、
青森県の岩木山(標高1,625m)の山頂を目指し、遭難。
そして4人が死亡するという事故の記録である。

他の事故と異なる点は、生還者がいること。

それにより、遭難時の状況や経緯を具体的に把握することができ、
どのように遭難し、悲しい結末に向かっていったのか、
そして当時の警察等による捜索の不足点や限界など、多面的に事実を把握することができる。

もちろん、本書の記述から、「もしこうしていたら」という教訓を学ぶことは可能だ。

ただしそれがそのまま、遭難した高校生や、捜索に当たった人々に対する指摘には、おそらく成りえない。
やはり残念ながら、時代の限界もあったのではないかと思う。

斃れていく高校生の状況と、発見された時の状況から伺える事実を踏まえると(ぜひ本書で確かめていただきたい)、
本当に何とかならなかったのかという残念な思いで一杯になるが、本書の時代は余りにも遠い。

岩木山の遭難現場付近には昭和39年には慰霊碑が、また岩木山御倉石には別に慰霊碑が建立されており、
慰霊登山もなされているようだ。
その様子は、花一匁氏による「K・Hanadaのブログ」、2014/7/12の「大館鳳鳴高校岩木山遭難者慰霊登山・慰霊祭」で紹介されている。

今更ではあるが、命を落としてしまった4人の冥福と、
今後の遭難事故が一件でも減少することを祈る。

【目次】
第1章 北門鎮護
第2章 山頂のメモ
第3章 足跡を追え
第4章 奇跡の生還
第5章 最後の歌




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category: 事件・事故

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