ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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今だからこそ、知っておきたい。「「よど号」事件122時間の真実」  

「よど号」事件122時間の真実
久能 靖



よど号ハイジャック。
1970年3月31日発生。日本初のハイジャックである。

僕が生まれる前の事件であるし、物心ついた時にはもう過去の事。感覚的には関ヶ原の戦いと同次元の、教科書上の出来事だ。

だが、本書冒頭でも触れられているとおり、9.11という同時代の事件がある。
ハイジャックという犯罪は、おそらく今後も世界各地で発生するだろうが、
日本における端緒として、やはり「よど号事件」を知っておく必要があるのではないか。
そうした澱のような感覚があったところに、出会ったのが本書である。

著者は、当時よど号事件を放送したテレビキャスターであった、久能 靖氏。
僕としては、皇室に関する報道で目にする機会が多いキャスターという印象だが、
それだけにおそらくは中立・冷静な立場での書となっていると期待できる。

本書は時系列に沿って事件を辿る。
羽田空港から離陸直後の発生。
そして福岡での給油、北朝鮮への着陸、そして帰還だ。

恥ずかしながら、北朝鮮に迎う途中、韓国へ着陸していたなんて知らなかった。
どうも韓国の空軍や空港関係者が偽装していたようだが、
それが当該空港関係者の間独断なのか、日本政府も関与していたのかは判然としない。
だが本書を読む限り、当時の国際情勢の中、当該空港関係者の独断というか、
北朝鮮へ向かう不明機は着陸させるという韓国側の不文律によるものという印象を受ける。

また丁寧なインタビュー、記録等から、
当時の北朝鮮での機長らの待遇や、着陸したは良いがスターターが無く離陸できない状況を打破する技術者の動きなど、
今なお伺しれない北朝鮮の状況が垣間見える部分もある。

また日本初のハイジャック事件とあって、
混迷する政府、独自に動く日航、
そして犯人の赤軍派に共感してしまう「ストックホルム症候群」の顕著な事例など、興味深いエピソードも多い。

さらに恥ずかしいことながら、
この赤軍派が現地で結婚し、その子供たちの一部は日本に戻っている(正確には「戻る」ではないが)など、
報道されているはずなのに、自分が認識していない状況があることにも気づかされた。

どの世代においても、やはり生まれる前の出来事に対する関心は薄くなりがちである。
だが、過去の出来事が現在の礎であることを踏まえれば、
やはり「知らない」というのは問題だろう。

特に、日本が荒れていた時代については、僕の世代は他人事のような感覚がある。
それを反省させられる一冊でもあった。

同様な事件のルポとして、「狼の牙を折れ: 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部」(レビューはこちら )もある。
この事件も、現在まで伏流水のように続いていると言えるだろう。

なお、よど号事件は、以降の北朝鮮による拉致事件へ発展していく。
それについては「宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫)」に詳しく、その事実にさらに驚かされるのだが、レビューはまた後日。



【目次】
1 事件勃発
2 福岡
3 ソウル(第一日)
4 ソウル(第二日)
5 ソウル(第三日)
6 ソウル・ピョンヤン(第四日)
7 ピョンヤン(第五日)
8 ピョンヤン・東京(第六日)
9 代議士と機長その後
10 ピョンヤンの赤軍派その後


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