ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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生物の様々な器官は、どのようにして進化したのか?「爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った」  

爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った
更科 功



化石の分子生物学 生命進化の謎を解く (講談社現代新書)」(レビューはこちら)において、近過去から化石時代に至るDNA分析の事例、それらを通してDNA分析の技術発展、DNAの保存性、コンタミネーション(試料汚染)の問題など、冷静かつ丁寧な視点で説明してくれた著者によるもの。

「爆発的進化論」というタイトルだが、新たな進化論のスキームを提示するものではない(「爆発的進化論」という論があるわけではない)。

【目次】にも掲載しているが、細胞「膜」「口」、「骨」、「眼」…と、ヒトを含む現生動物に至る進化の過程において、
エポックメイキングな「機能」や「形質」が獲得された過程や意味を、個別に進化の視点から解説するものだ。
著者による独自研究をベースとするものではなく、
内外の最新の研究成果をうまく取捨選択し、現時点で最も妥当だろうと思われている説、
もしくは著者が最も妥当と思う説を紹介していく。

こういうタイプの本の場合、著者の考えへの我田引水の程度が大きく問題となるが、著者においては、
化石の分子生物学 生命進化の謎を解く (講談社現代新書) 」でも示されたとおり、他者の研究手法や成果に対するフェアな視点は担保されていると安心して良いだろう。

全体としては最初の生物の発生から人間による「生命」の再現という流れ、
また、ほぼ全動物にある形質(共通的なもの)から、ヒトや鳥など、特定の分類群に関係する特殊な形質という流れになっており、
通読することでヒトに至る進化の道筋が垣間見えるようになる。

もちろん「骨」において紹介される外骨格の獲得が、「眼」の獲得による生存競争が引き金になっている等、
相互に影響しあう形質もある。
ただ概ね、それぞれのトピックは独立して語られているため、各章ごとに分けて読んでも楽しい。

むしろ、非常にあっさりと解説されているが、そのベースになる研究や事実だけで一書が成立するようなトピックも多い。

例えば「眼」だと、「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」(レビューはこちら)だ。

また「羽根」だと、「羽―進化が生みだした自然の奇跡 」(レビューはこちら)が詳しい。

だが、まさに本書の目次が示すように、地球上の動物は、様々な形質が、それぞれの意味と必要性をもって獲得され、個々の種等の生態にあわせ、様々なバリエーションと組み合わせによって進化している。

おそらく個々の形質に着目した本だけでは、この地球上の動物の進化の妙を実感するには足りないだろう。

その導入として、本書はかなり有意義であるのだが、
そうするとやはり「爆発的進化論」という独自の説の本と誤解させるタイトルが、惜しい。

【目次】
第一章「膜」 生物と無生物のあいだに何があるのか
第二章「口」 よく噛むことはいいことか
第三章「骨」 爆発的進化はなぜ起きたのか
第四章「眼」 眼がなくても物は見えるのか
第五章「肺」 酸素をどう手に入れるか
第六章「脚」 魚の脚は何をするのか
第七章「羽」 恐竜は空を飛べたのか
第八章「脳」 脳がヒトを作ったのか
第九章「性」 男は何の役に立つのか
第十章「命」 生命は物質から作れるか
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