ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

昆虫写真家ならではの観察眼が、楽しい。「虫の目になってみた: たのしい昆虫行動学入門」  

虫の目になってみた: たのしい昆虫行動学入門
海野 和男



昆虫はすごい (光文社新書)」(レビューはこちら)のおかげなのか、なんだか昆虫関係が元気である。

僕が昆虫に興味を持ちだしたせいかもしれないが、それにしても刊行される本やメディアで取り上げられる回数は増加している。
2016年には昆虫好きの(そんなの多分誰も知らなかった)香川照之 による、「香川照之の昆虫すごいぜ!」がNHK教育で放送された。
カマキリ先生となった香川照之が、バッタについて解説したり、野外で数時間バッタを探したりと、本当に好き放題やる番組であり、突き抜け具合は見ごたえがあったところである。新たなファンを獲得したに違いない。少なくとも僕の心は鷲掴みである。
番組ホームページはこちら。(2015年11月時点で確認。今のところ単発番組らしいので、いつまでHPがあるかは不明。)

さて、そうした昆虫の魅力を伝える方法の一つとして、昆虫写真がある。
さほど昆虫に興味がない方でも、ふと雑誌や広告で昆虫写真にでくわすことがあるだろう。
そこにクレジットされている多くは、今森光彦氏か、海野和男氏、栗林慧氏だろう(個人の見解です)。

これらの方々が地道に撮影した昆虫がいる世界は、間違いなく昆虫のイメージアップに寄与している。
また、志賀昆虫普及社を設立した志賀卯助氏により、日本に昆虫採集は学習・趣味であるというイメージが定着している。
これらの礎があってこそ、今のブームを受け入れる層がいるのだろう。

そして本書は、その海野和男氏による「昆虫行動学入門」である。
もちろん様々な写真が活用されているけれども、本書は写真がメインではなく、
あくまで「昆虫行動学」。
実際に国内外で多くの昆虫に出会い、撮影のためにじっくり観察してきた海野氏だからこそ描き得る、
昆虫の不思議かつ魅力的な生態が紹介されている。
上に紹介した「昆虫はすごい (光文社新書)」と同一の志向をもつ本であり、
同書が楽しかった人には、同じように楽しめる一冊になるだろう。

例えば昆虫の翅の動かし方について、
トンボのように飛翔筋が直接翅につながり、筋肉の収縮が翅を動かす直接飛翔駆動タイプと、
ハチやハエのように飛翔筋がまず外骨格を振動させ、それが間接的に翅を動かす間接飛翔駆動タイプがある。
ここまででも「へえ」というところだが、
一般に直接飛翔駆動タイプは不完全変態、間接飛翔駆動タイプ は完全変態が多いと言われると、
なにやら進化の謎の一端に振れる興味が湧いてくる。
(ただし、その答えは本書では示されていない。)

また、テントウムシの集団越冬も有名だが、
いったいどのくらい離れた地域から集まるのか、という単純な問に対する答えは得られていないようだ。
なるぼと確かにテントウムシにマーキングなんて聞いたことないし、
ましてそれを再発見するなんて、ほぼ不可能だろう。
だからといって謎のままというは、なかなか消化不良なところである。

さらに、カタクリの種。エライオゾームという物質によりアリを誘引し、運ばせるというのは知っていたが、
このエライオゾーム、匂いとしてはアリの幼虫に似ているという。だから誘引し、巣に運ぼう(連れ戻そう)という気にさせるのだ。
しかも24時間もすると、逆に死んだ幼虫の臭いに変化し、今度はアリに捨てさせるという。
これによってカタクリの種はアリの巣という遠方に運ばれ、かつ発芽可能な浅い場所に放置されることになる。
いやはや、昆虫と植物の関係は奥深いものである。

また花に擬態しているハナカマキリ。
昆虫は紫外線が見え、それにより蜜の有無を見ているが、
ハナカマキリは紫外線色まで擬態しているそうだ。
言われてみれば納得だが、それにしても自然界の妙と言うべきか。

こうした知識が詰まった一冊、
香川照之氏のように「昆虫大好き!」という方でなくとも、
手元において読む楽しさはあるだろう。

ところで香川照之氏は本書を読んでいるのだろうか。伺ってみたいところである。

【目次】
第1章 昆虫たちにとっての世界
第2章 昆虫たちが感じる世界
第3章 昆虫の運動能力
第4章 群と移動
第5章 昆虫の生活
第6章 昆虫のデザイン
第7章 オスとメス
第8章 隠れる擬態
第9章 目立つ擬態
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