ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

古代、想像を超える精密機械が創られていた。「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」  

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ
ジョー・マーチャント



オーパーツという言葉、そして「アンティキラ・コンピュータ」と呼ばれる不可思議な遺物を知ったのは、
若い頃に読んでいた雑誌「ムー」であった。

この機械は、地中海に沈没していた古代ギリシャの船の積み荷の中から発見された。
ブロンズ製の小さな遺物だが、それは大小さまざまな歯車が精密に組み合わされ、
明らかに何かの「計算機械」のように見える。

だが、古代ギリシャにこうした「機械」がある筈もない。

そうした考えにより、「アンティキラの機械」は説明不可能なオーパーツの類とみなされ、
雑誌「ムー」の格好のテーマとなったのである。
もちろん、同誌に展開される宇宙人が作ったとか現代人がタイムトラベルした等の話を信じるわけはないが、
それにしても「アンティキラの機械」は、ストーンヘンジやピラミッドと同様、現実に存在する。
そうすれば、そこには現実的な回答がある筈だ。

「アンティキラの機械」が発見されたのは、1901年。地中海における水中考古学のまさに黎明期だった。
だが引き上げられて以降、きちんと精査されることなく、博物館の倉庫で長年眠っていた。

だがこの魅力的な遺物の存在を認知した者は、その謎を解明したいという欲求に駆られる。

本書は「アンティキラの機械」の発見から、様々な人々がこの遺物に魅せられ、その謎を解明すべく挑み、
そしてついにその構造、そして目的をほぼ解明するに至るまでのドキュメンタリーだ。

各部品が錆に覆われ、脆くなっている「アンティキラの機械」を解明するには、
高精度のX線装置やCT、撮影した画像をデジタル処理により明瞭化できる現代のテクノロジーが不可欠だろう。

だがそれが理解できるのは、我々が現代に生きているからだ。

例えば本書の主人公といって良い研究者、マイケル・ライトは、
深度を変えたX線写真を撮影すること自体が困難であり、現像にも細心の注意を要していた時代から
この機械に魅了されてしまった。

様々な人々との出会い、そして協力研究者からの裏切りや博物館からの解雇。
古代のロマンに憑りつかれた人々の例にもれず、
マイケル・ライトも孤独な戦いを強いられる。

先行された「誤った解釈」を正すべく、一人孤独に研究を続け、
やっと光が見えたと思えば、
最新テクノロジーを用いた研究グループが参戦する。

「アンティキラの機械」の謎の解明もさることながら、
この謎を解明するための先陣争いも、また稀有のドラマだ。

そうして様々な人々の人生を犠牲にし乍ら、
ついに解明された「アンティキラの機械」は、古代ギリシャ時代の天文学をベースにしつつ、
任意の時の太陽・月・惑星の状態を確認すると共に、
将来の惑星の運行や日食・月食を正確に予測できる機械だった。

当時の最先端の天文学に基づき、天体の動きを精密に再現する驚異の機械。

天動説に基づくとはいえ、実際の天体の動きと矛盾のないシステムは、
バビロニアから古代ギリシャへ続く、知の系譜の結晶と言えるだろう。

また、「アンティキラの機械」がオーパーツと認識された所以は、
これほどの知識が突如発生する訳はなく、
また一度獲得された高度な知識が失われるはずはない、という考えによる。

だがその点についても、本書は古代バビロニアでの天体観測の知識や、
古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスや哲学者ポセイドニオスの到達点等を踏まえ、
むしろ当時までに得られた知識が蓄積がこの機械に活かされていること、
そしてこの機械の機構が様々な道具(例えば天体観測に用いられたアストロラーベ等)に活かされ、
それが最終的に時計の爆発的な発展に繋がっていくことを示している。

さらに詳細な研究により、この機械が「いつ」「どこで」作られたかについても明らかになりつつある。

古代ギリシャでは多数のブロンズ像が作られたが、
その多くは金属の再利用のため失われた。
いわんや、これほど小さく(両手で抱えられる程度だ)、しかもそれほど数多くは無かっただろう機械が、
現代まで残っていた方が、考えてみれば奇跡だ。

だがそのおかげで、我々は2000年前の人々の知の結晶を見ることができる。
そして本書は、それを解明しようとした現代人の苦闘の記録だ。
こうした「物語」は、そうそう在るものではない。

それにしても、こんな機械が古代ギリシャにあったなんて、本当に驚くばかりだ。

【目次】
1 海底より現れしもの
2 ありえない
3 「戦利品」
4 科学史は塗りかえられた
5 大胆な推理
6 十九世紀のコンピュータがふたりを結びつけた
7 すべては解読の名誉のために
8 最強の布陣
9 みごとな設計
10 アルキメデスの影
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category: 歴史

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

haru様

コメントありがとうございます。
「失われた福音 −『ダ・ヴィンチ・コード』を裏付ける衝撃の暗号解読」、面白そうですね。
早速読みたい本リストに追加しました。積読タワーが2列になったので読めるのはまだ先と思いますが…楽しみが増えた、ということですね。
実在したイエス・キリストという「人」の痕跡には、かなり興味があります。
その点では、
「キリストの棺 世界を震撼させた新発見の全貌」という本もまた、なかなかエキサイティングな内容です。
それにしても、あまりにも宗教的にアンタッチャブルなので、実像が解明され、それが定説にまで昇華されることは、かなり難しいんでしょうね。


BIRD READER #aYDccP8M | URL
2017/02/22 20:56 | edit

認めない? イエスの結婚

こんにちは! haruです。
読書量とジャンルの広さに驚いています。v-12

以下の本はどうでしょうか。
『失われた福音』シンハ・ヤコボビッチ、バリー・ウィルソン(共著)、守屋彰夫(翻訳監修)
です。
私はクリスチャンではありませんが、
イエスに興味があって読んでみました。
なぜ、バチカンがこの本の不買運動を展開したのか、
読んでみてよくわかりました。
イエスが神の子と信じてきた正統派のクリスチャンにとっては
許しがたい事実が書いてありましたから。

でも…。イエスが結婚してたって、子どもがいたって、
信じる気持ちは変わらないと思うのですけどね。

ご興味ありましたらご一読を!


https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%A6%8F%E9%9F%B3-%E2%88%92%E3%80%8E%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%80%8F%E3%82%92%E8%A3%8F%E4%BB%98%E3%81%91%E3%82%8B%E8%A1%9D%E6%92%83%E3%81%AE%E6%9A%97%E5%8F%B7%E8%A7%A3%E8%AA%AD-%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%81/dp/4434226312

haru #CTKsfg.g | URL
2017/02/22 16:10 | edit

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