ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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絶望的な状況の中でも、希望を掴む闘いができる。「ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録」  

ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録
ジェレ・ロングマン



2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件。この事件でハイジャックされた飛行機は4機。
うち、ユナイテッド93便のみが攻撃対象に達せず墜落した。

その大きな要因は、滑走路の混雑により(日常的な出来事である)ユナイテッド93便のみが約40分遅れで飛び経ったことにある。

この遅れによって、ハイジャックに遭遇し、家族や会社等と連絡を取った搭乗客は、2機がニューヨーク世界貿易センターに突入した事実を知った。
全てが同時進行であれば、搭乗客に判断する材料が得られたかどうか、わからない。

だが現実には、搭乗客は事態を知り、自分たちの人生を自身でコントロールするための行動を起こした。

同時テロという「想像もしなかった敗北を喫したアメリカに、一つのまぎれもない勝利をもたらしてくれた」と筆者が位置付けていることから分かるように、この「行動」は、アメリカという国と国民にとって、ユナイテッド93便は一つの希望の兆しになっている。

本書は、パイロット2名、客室乗務員5人、ハイジャック犯4人を含む乗客37人について、それぞれ人生を辿りながら、その性格や家族を詳細に語っていくものだ。

著者は、多くの人々(もちろんハイジャック犯は除いて)を、誠実で、勇敢で、行動力に溢れる人物として描いている。
それをプロパガンダや美談と言うことはたやすいが、彼らが犠牲者であること、そしてユナイテッド93便のアメリカにおけるシンボル的な意味を考えれば、こうした書きぶりになることはやむを得ない。
単純に、日本でも同様な書物が記されたとき、あえて犠牲者の欠点を書き連ねる筈はない。
誰でも長所と欠点は有り、本書は各人の長所を積極的に評価しているに過ぎず、これをプロパガンダと騒ぎ立てる方がおかしいだろう。
犠牲者は全て、普通の人々だ。

そして本書は、想像もつかない事態に追い込まれた普通の人々の、
最後の時間-多くは機内ではなく、通話先の人々との最後の時間-を記録した本である。

もちろん、何があったかを正確に再現することはできない。
また記憶違いや我々の知らない配慮によって、事実と異なる証言がなされていることもあるだろう。
だが概ねこのように事態は推移したと考えられる。
そして、ユナイテッド93便を始め、多くの普通の人々が同時テロ事件と、それを契機として始まった戦争・紛争・テロで命を失っていることも事実だ。
果たして進むべき未来はこれで良いのか、ユナイテッド93の乗客に、胸を張って現代を語ることができるのか。
それを問う一冊である。


(付記)
同時多発テロ事件は、リアルタイムで知りました。
何が起こっているか分からない混乱、錯綜する情報。
当時、何機も「行方不明機」の情報があり、ユナイテッド93便と確定した情報を知ったのは後日だったと思います。
犠牲者の中に一人の日本人が含まれていましたが、その出身地と名前を聞いた瞬間の衝撃を、今も覚えています。
 友人に似すぎている。 本人ではないにせよ、友人の肉親に違いない、と。
その予想は、残念ながら的中しました。

歴史に残るだろう悲劇的な出来事だけど、僕にとっては「海外のテロ事件の一つ」だった9.11は、間接的ながら、ごく身近な出来事となりました。

数千人の犠牲者の存在を考えれば、日本でも直接的に関係ある方も多いと思います。
そして間接的に犠牲者や遺族の方に連なる方の数は、膨大な数になるでしょう。

世界レベルのニュースになる事件・事故に、日本人の誰もが無関係であり続けることは、もはや困難ではないかと思います。

残念ながら、9.11に限らず、様々なテロ・災害・事件に対して、無責任な陰謀論や、無節操なジョークを聴くことも少なくありません。

そうした言動を楽しむよりも、今も起こり続けている事件・事故に対して、何ができるか、少なくとも自身の言動が、犠牲者や関係者をさらに傷つけたり貶めたりしてはいないかを、自問すべきではないかと思います。
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category: 事件・事故

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