ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「◯◯リュウ」を巡る、様々なドラマ。「ニッポンの恐竜」  

ニッポンの恐竜
笹沢 教一



化石はロマンだ。言い切ってしまおう。
アンモナイト
就職し、自身の稼ぎで自由にモノが買えるようになった頃。僕は化石を買った。

本ブログでもいくつか紹介しているが(例えばこのレビューの回)、
前掲のアンモナイトの他、下の三葉虫、その他恐竜の骨等々、よく見かける種類はおおむね購入している。
そういえば糞化石も購入していたのに、いつの間にか無くなっているのが悲しい。
たぶん引越し時に、誰かにただの石と思われたのだろう。残念。

Flexicalymene ouzregui(フレキシカリメネ ウーズレグイ)
Flexicalymene ouzregui フレキシカリメネ

だが、やはり自身で発掘したい。それは無理だろうと思っていたが、実は香川県にも和泉層群という化石産出層がある。
今は下火となっているが、数十年前の砕石が盛んだったころには、多数の化石が採集されている。
塩江では、カメ化石Mesodermochelys undulatus も発掘されている。
カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)レビューはこちら に詳しいし、「香川県高松市塩江町の上部白亜系和泉層群より産出したオサガメ科化石」という報告も読める。


そうすると、「やってみる」べきだろう。
化石をやっている知人はいないので、過去の文献、地質図、ネット情報等々で場所を探り探り、今のところいくつか見つけることができている(と思っている)。
IMG_9357
(部分拡大はこちら)
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化石 甲殻類化石?

化石 ウニ類?

他、植物化石もいくつか得ている。
下手の横好きに過ぎないが、香川県産のアンモナイトを見つけたいところだ。

かように、「化石なんて日本では難しい」というのは、先入観に過ぎない。
まずは探すことだ。
そしてその結果、発見されるのは、貝や植物だけではない。
ロマン中のロマン、恐竜も発見され得る。

日本各地には熱心なアマチュアも多く、奇しくも本年、四国で相次いで恐竜化石の発見ニュースが続いた。
(うち一つは、再発見とでもいうものだ。)

◯香川県初の発見となる恐竜化石(胴体の背骨1個)
(大阪市立自然史博物館のプレスリリース)
中生代白亜紀後期カンパニアン期(約8300~7200万年前)の地層(和泉層群)から、ハドロサウルス類の背骨の一部が発見された。
この化石は、1986年10月21日、金澤芳廣氏(丸亀市在住)によって、香川県さぬき市の山中で発見された。
2013年からの大阪市立自然史博物館と金澤氏との和泉層群の共同化石調査を契機に、2015年9月に金澤氏の標本一式が寄贈され、その中で発見されたもの。
金澤氏も骨化石とはわかっていたが、恐竜とまでは確認できていなかったとのこと。

金澤氏は化石探索の状況をYOUTUBEにもアップされていて、いつもワクワクして拝見している。

別の骨化石も発見されているようだ。


◯徳島・勝浦町で最古級恐竜化石">徳島・勝浦町で最古級恐竜化石
(徳島新聞の報道) 
白亜紀前期(約1億3千万年前)の地層から、草食恐竜ティタノサウルス形類の歯の化石が発見された。
これは、阿南市在住の田上親子が、2016年7月3日に勝浦川支流植物化石を採集中に発見したもの。

こうした恐竜、かつては「◯◯リュウ」という愛称で呼ばれた。
国立科学博物館のフタバスズキリュウはその白眉と言えるものだ。
DSC_0698.jpg
だが、そうした「◯◯リュウ」の多くは、過去に発掘された恐竜等であり、
多くは最初に発掘され、そして唯一の個体である。

そのため、近年の恐竜ブームにあっても、羽毛恐竜などの世界的にも新しいトピックに関する本は多いが、
こうした「◯◯リュウ」の物語は、かなり少ない。

その中で、本書は「◯◯リュウ」にのみ着目し、その発見から現在に至るまでを記録するという、非常に価値の高い仕事の成果である。

本書では、様々な「◯◯リュウ」が紹介されるが、それぞれが不思議な物語を背負っている。
タイプ標本が行方不明とになっている「イナイリュウ」。
恐竜と騒がれたものの、後にモササウルス類と判明したが、初期に恐竜として天然記念物指定してしまったために
混乱が続いているエゾミカサリュウ。
上掲のとおり、1968年の発見以降、国立学博物館の「顔」とも言うべき存在になっているにも関わらず、
記載論文は何と38年後の2006年となったフタバスズキリュウ。
知っている(と思っている)、町おこしで陳腐化した感もある「◯◯リュウ」それぞれに、
知られざる物語があったのだ。

また同時に本書は、こうした「◯◯リュウ」の研究について、日本の研究基盤が非常に脆弱であることも示す。
しっかりした研究機関や自然史博物館の不足。資金不足。研究者不足。
それによる研究の遅延が、恐竜等を研究することの評価の低迷に繋がり、予算不足となる。
その結果、研究機関等が不足するという悪循環のスパイラルだ。

自然史系でも、基礎系のいわゆるナチュラル・ヒストリーにおいては、
標本を収集し、それを研究することが大前提だ。
だが標本の収蔵・管理には物理的なスペースと、継続的な予算が必要である。
それが不足している現在、全国有数の研究者やハイ・アマチュアのが所有している標本は、ともすれば散逸しがちだ。

現実に、香川県の自然史標本は県外へ流出しており、この夏も香川県産化石を徳島県立博物館で観覧した。
そして上記のとおり、ハイ・アマチュアである吉澤氏が採集したコレクションも大阪へ渡った。
香川県にはまだまだ多くの分野のハイ・アマチュアの方がおられるが、
これらの方々のコレクションが散逸すれば、香川県の自然史研究にとって測り知れない損失になる。
自然史に関係する標本は、まずは地元、少なくとも県レベルで統一して保管することが、生物分布を研究するうえでも重要だろう。
もちろん目玉的な標本であれば、「町おこし」として、資金が投入される可能性はある。
だがその観光資源としての価値が減じれば、「お荷物」になりかねない。

その例がエゾミカサリュウだ。
地域振興を担う行政的立場と研究者としての立場に苦しんだ三笠市立博物館の早川浩司氏は、
若くして博物館から退職した(その後、病により41歳で亡くなっている)。

彼は、「(化石研究は)決してまち起こしのためにやっているわけではありません」と遺している。

町おこしが主か、日本の古代世界の研究が主か。
こうした選択を一地方都市が強いられるのも、国が基礎研究に正しく経費を配分していないためではないだろうか。

経済発展、景気浮揚、社会福祉等々。それぞれの課題と予算は必要である。
だが、基礎的研究は、それらと単純にトレードオフされるべきものではない。

「◯◯リュウ」を巡る様々なドラマは、日本に眠る大きなロマンと、現実的な閉塞感を突きつけている。

【目次】
第1章 消えたイナイリュウ
第2章 日本最初の恐竜モシリュウ
第3章 もう一つの「日本初」ニッポンリュウ
第4章 エゾミカサリュウがたどった運命
第5章 リュウの昭和史とフタバスズキリュウ
第6章 手取層群と平成の恐竜たち
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