ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ちょっと知りたい雑草学  

ちょっと知りたい雑草学
日本雑草学会
【興味をそそられる度】★★☆☆

ちょっと知りたい雑草学ちょっと知りたい雑草学
(2011/09)
日本雑草学会

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「雑草」に関する、複数の著者による本。
雑草の調査方法から始まり、
外来種や帰化植物との関係や、雑草と作物の関係など。
単なる「防除のしかた」だけでなく、雑草がどのように有用か、
という観点もある。
P45、規制緩和が外来種の増加の原因のひとつであること、
P58、コムギの改良に雑草が関与していたこと、
P80、雑草と作物を比較すると、多くは雑草の方がより効率的な光合成メカニズムをもっていること、
などを新しく知った。

手軽な本であり、軽く読むには最適である。
ただしどうしても寄せ集め的な印象は否めない。1,900円という価格はちょっと高すぎるだろう。

なお、後半に防除剤メーカーの方の章がある。
個人個人の考え方があるのだが、
どうしても「防除剤は安全なのだ」という主張のための文章となっていると感じた。
メモにも入れているが、
天然物質の比較表において、天然物質中最強毒から記載するのはフェアではないだろう。




【目次】
第1章 雑草のくらし
第2章 雑草から学ぶ自然のしくみ
第3章 雑草をコントロールする
終章 座談・雑草との共存を目指して

【メモ】
P40
弥生時代の稲栽培や、作物導入に伴い帰化した植物
=「史前帰化植物」前川文夫,1943
 カナムグラ、イヌタデなど。


P45
昭和~平成にかけて
家畜飼料の穀類が大量に輸入され、規制緩和に伴い直接飼育現場に持ち込まれるようになった。
=混入種子が糞に混じり、畑に撒き散らされる事例が増大。畑に新参雑草が大繁殖。

P58
コムギ
1960-70年代、水や肥料をたくさん与えても大きくなりすぎず倒れることがなく、高い収量を上げる品種が開発される
この品種によるコムギ増産=人口の急増に対応=「緑の革命」
品種改良にかかわったノーマン・ボーローグ博士は、ノーベル平和賞を受賞。
この「大きくなりすぎない性質」は、日本のコムギ在来品種の遺伝子によね

P60
1万年ほど前に、
二粒系コムギ(一つの小穂に穎果を二粒つける)+タルホコムギ(雑草)
=コムギ(普通系コムギまたはパンコムギ)
この系統を明らかにしたのは、木原均博士

P80
水田の雑草 タイヌビエは、イネよりも成長が早い。
イネはC3(3は小さく下に書く)植物(C3型の光合成 カルビン・ベンソン回路のみ)
タイヌビエはC4植物(カルビン・ベンソン回路とC4回路)

C4植物の方が二酸化炭素の取り込み能力が高い
ex)夏の晴天時
C3植物:光の最大値の20~30%で光合成が頭打ちになる
C4植物:50~100%まで光を利用できる
作物の多く=C3植物、トウモロコシやサトウキビはC4植物

P108*
天然物質と除草剤成分の比較表(LD50)
天然物質 ボツリヌス毒素、テトロドトキシン、ニコチン、カプサイシン、カフェイン、食塩
除草剤成分 アラクロール、アトラジン、ベンスルフロンメチル、グリホサート

意見:数値はともかくとして、比較表にボツリヌス毒素、テトロドトキシなどの最強毒を記載して、
天然物質にも危険なものがある、と示すのは意図的なミスリードではないか。
また、ニコチン・カプサイシンや食塩も「摂りすぎると毒になる」から、天然だから安全という穂毛ではない、という論理になっている。しかし、ニコチンはもとより、食塩を体重50kgで150g一度に摂取するのはありえない。この章の筆者も「まずいないでしょうが」と書いている。その通り、天然物質は致命的な量まで摂ることはまずない。
しかし除草剤は、不適切な使用により大量に残ることはありうる。
また、化学成分が複合的に作用した場合の影響もありうる。
筆者は本章で、「天然物だから安心とはいえない」とまとめている。
その先には「だから人工物である除草剤のみ心配して、むやみに天然物に頼るのはおかしい」
「だから人工物である除草剤も使用してよい」という方向にもっていく感じがある。

しかし、「天然物の安心性」と「人工的化合物の安心性」は、全く別の話である。
表に現れている通り、筆者はことさらに天然物の潜在的な危険性を上げているが、
それにつられて、安易に「人工的化合物」の方が安心だ、と思わないようにしたい。
「天然物」の安心性が減れば、「人工的化合物」の安心性が高まるというものでもないことには注意しておきたい。


P139*
「第3章にも書きましたように、販売されているほとんどの除草剤は劇物でも毒物でもない普通物で、動物に対しては食塩と同程度の毒性しかありません。また、環境中の生物、とくに魚類や甲殻類、藻類といった水生生物に対しては、環境中の予測濃度が毒性値を上回ることのないように使用方法が定められ、それに違反して使用した場合には逮捕を含む厳しい罰則を受けるしくみになっています。」

意見:農業従事者は守るだろうが、家庭菜園でそこまで守るかどうか。また家庭菜園から流れ込む水路・池などはどうなのか。安易な使用によって適量を超え、自己消費した場合、その過程の子どもから影響がでかねない。そうした危険性を除草剤は持っているのであり、その点、天然物(特に食品)とは全く異なる。
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