ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

次世代にも、生き物を丁寧に見る習慣を。「楽しい昆虫採集」  

楽しい昆虫採集
奥本 大三郎,岡田 朝雄



生き物を殺傷することが好きなのではない。
だから、対象を全く殺傷する必要が無い野鳥観察を趣味としたし、密猟対策にも取り組んできた。

だが、小さいころから、昆虫の種類も知りたかった。
けれども、真面目に昆虫を知ろうと思うと、どうしても捕獲して、図鑑と見比べなければならない。
その過程で、どうしても昆虫は死ぬだろう。
それを無にしないためには、標本にする必要があるが、そんな知識も技術も無かった。

現在でもデジカメがあるが、マクロ撮影に耐える機材の購入と、
識別点を過不足なく撮影する知識となると、やはりハードルが高い。

一人で昆虫を学ぶには、どうしても昆虫採集と標本化が必要だ。

その時出会ったのが、「ぼくらの昆虫採集 」(レビューはこちら )。
待っ正面から昆虫採集を説明する、稀有の本であった。

本書は、その前身と言える一冊。刊行は1991年と、もう20年以上前になる。
著者は奥本 大三郎氏と岡田 朝雄氏だが、
本来の著者となるはずだった奥本氏は多忙のためエッセイ的なもののみに留まり、
後半、岡田氏が技術的な解説を行っている。

ぼくらの昆虫採集 」よりも、より細かな内容が多く、また採集禁止区域等の資料的内容も多い。

残念ながら刊行から時間が経過しているため、採集禁止区域等の情報については古くなっているものの、
昆虫採集という趣味を持つ人が近くにいない場合、よき先達として本書は活用できるだろう。

「昆虫なんて」という感覚が多くの方にはあると思う。
また、「殺して標本にするなんて」という嫌悪感もあるだろう。
だが昆虫を的確に知ることで、僕自身、
野外を歩くときに「鳥の視点」だけでなく、「虫の視点」が得られたと感じている。

例えば「鳥の視点」だと、ある林があれば、それを全体としてとらえる。
その上で、この突出した樹上には囀る種類、この樹はイカル、ここの茂みは夏はキビタキ・冬はルリビタキ、
この草が両脇にある林道はホオジロ類、この道はツグミ類…という把握の仕方だ。

だが「虫の視点」だと、樹一本、草一本が問題となってくる。
そうすると、この樹にはハムシが多い、「だから」カラ類が通過しやすい、という見方になってくる。
自然を重層的に視ることが可能となる。

もちろん、まだまだ僕は入口にたったばかりだが、
この楽しみは、20年以上前、野鳥を始めた頃のようなワクワク感がある。

それにしても、「ぼくらの昆虫採集 」 の刊行は、2011年。本書は1991年。
20年に一回のペースでしか、総合的かつ真っ当な昆虫採集入門書は刊行されない、ということになる。

野鳥にしろ昆虫にしろ植物にしろ、「その存在を知ること」が、保護の第一歩だと僕は思う。
だからこそ、昆虫については、昆虫採集という「責任の重い知り方」をきちんと知ってほしい。



【目次】
第1章 人はなぜ虫を捕るか
 虫の掴まえ方
 書類を捨てて野山に出よう
 捕虫網の研究
 蝶の罠
 虫のだまし方
 虫の殺し方
 標本の作り方
 昆虫採集の実践記―マダガスカル採集旅行 ほか
第2章 昆虫採集入門
 おもな昆虫採集法
 簡単なチョウの飼育法
 採集旅行
 採集禁止の昆虫
 標本の作り方
第3章 資料編
 日本産蝶類一覧表
 日本産クワガタムシ一覧表
 昆虫関係器具の店・標本商・専門書店
 昆虫の図鑑類と雑誌
 昆虫関係の学会と学会誌
 研究会・同好会と会報
 博物館・昆虫館一覧
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