ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

写真を読む力を学ぼう。「今森光彦ネイチャーフォト・ギャラリー  四季を彩る小さな命・日本の昆虫」  

今森光彦ネイチャーフォト・ギャラリー  四季を彩る小さな命・日本の昆虫
今森 光彦



野鳥写真では、一般には対象種をより大きく撮影したものが、一般ウケする。
「なかなか見られない野鳥を、こんなに明瞭に撮影するなんて、すごい!」という感覚だろう。

鳥屋の間でも、大きく明瞭に撮影した写真を否定することは、普通ない。
ただ、それは写真としての出来ではなく、「この種の記録を残した」行為に対する賞賛も含まれている。
図鑑写真的な記録を残したことを、否定する必要は全くないためだ。

いずれにしても、「見づらい野鳥」という被写体の特性が、写真を評価するときに大きく関与する。
(単に、ヒトを写しただけでは評価されないことの裏返しだ。)

ところが、それを自身の「写真」に対する評価と勘違いしてしまう。
そうすると、新しい賞賛を得るためには、「より大きく」「より珍しい種を」撮影するしかない。
その結果生まれるのが、常軌を逸した野鳥写真家である。
 撮影後の野鳥を、クラクションを鳴らして飛ばそうとする者(撮影した人間が少ない程、評価が高まるためか)。
 撮影のために樹木を伐採する者。
 巣やヒナに異常に接近したり、執着する者。

どんな趣味の写真の分野にも、そういう勘違いした輩はいると思う。

僕は、写真に対して何かを語れるほどの知識も感性もないが、
少なくとも、物語を感じさせない写真は、「作品」としての価値はないと思う。

本書は、今森光彦氏の作品集。

普通の写真集と異なるのは、まず、なぜこうした写真を捕ろうとしたか、
その上でどんな悩み、テクニック、苦労があったかという舞台裏や、
作品の初出データ、被写体の昆虫の情報、撮影データなどが見開き2頁にまとめられている。
ここでは、写真はモノクロのほんの小さなスペースしか与えられていない。
そして次の見開きで、初めてカラーで掲載されている。

写真は写真だけで語れば良い、というのは真っ当な話だ。

だが一方で、媒体が何であれ「作品を読む」には、やはりそれなりの知識と経験が必要である。
特に、被写体が特殊であればあるほど、「読み手の技量」のハードルは高くなる。

メッセージを含めた写真は、メッセージを伝えられなければ、意味がない。

本書は、いわば、ギャラリーで作者の解説付きで観賞するようなものである。

だからこそ、昆虫には全く興味が無い方に、一度読んで見てほしい。
今森氏がどんなメッセージを、どんなテクニックを駆使して伝えようとしているかが、
はっきりと分かるはずだ。
そしてそれは、他の写真を「読む」力にもなるだろう。

【目次】
キリギリスの孵化
レンゲとモンキチョウ
オオカマキリの影
ショウリョウバッタのひげ時計
ウドの花とキアゲハ
ヨツボシトンボの死
チューリップ畑のツマグロオオヨコバイ
巣に帰ってきたミツバチ
明け方のゲンジボタル
昆虫の顔
アブラゼミの羽化
ウリ畑で羽化するトノサマバッタ
ベニイトトンボとオンブバッタ
ノコギリクワガタと夕日
ため池のショウジョウトンボ
水面に浮かぶスジブトハシリグモ
水の輝きとハッチョウトンボ
岩のすき間で鳴くスズムシ
山からおりてきたアキアカネ
コバノガマズミとハラビロカマキリ
落ち葉に隠れるアカエグリバ
キタキチョウの越冬
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category: 昆虫

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