ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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知られざる戦争遺産。「陸軍登戸研究所“秘密戦”の世界―風船爆弾・生物兵器・偽札を探る」  

陸軍登戸研究所“秘密戦”の世界―風船爆弾・生物兵器・偽札を探る
山田 朗 明治大学出版会



第二次世界大戦中の日本の秘密軍事組織といえば、七三一部隊が有名である。
定番として、森村誠一による「新版 悪魔の飽食 日本細菌戦部隊の恐怖の実像!<悪魔の飽食> (角川文庫)」(もちろん読んだのは元版だが)、「『悪魔の飽食』ノート」を(事前知識無しに)中学生だか高校生だかで読んだのだが、「戦争」にしろ「科学」にしろ、とにかく「大義名分」さえあれば、人間はとことん残虐になれる-というか、感覚がマヒするのだなと驚嘆した。

ただ、「桜花」のような大形の特攻兵器に日本の技術開発は進み、
また、スパイ技術など「小手先の」技術開発は少なかったのだろうと思い込んでいた。

そんな時、大陸間爆弾「風船爆弾」の存在を知り、改めて日本の戦時中の技術開発も多岐にわたっていたのだなと感じた。

その「風船爆弾」、陸軍の秘密科学研究所「登戸研究所」において開発された。
登戸研究所は、正式には「第九陸軍技術研究所」。
第一科から第四科まであり、概ね次の所管となっていた。
 第一科は特殊兵器(風船爆弾等)、電波兵器の開発。
 第二科はスパイ器材、毒薬、生物兵器。
 第三科は偽造紙幣製造。
 第四科は第一・二科のフォロー等を行っていた。

「風船爆弾」はもちろん登戸研究所の成果だが、
第二科は使われることがなかったが散布可能な牛痘ウイルス、帝銀事件にも用いられたかと言われる遅効性の毒薬・青酸ニトリル、
第三科も中華民国の偽造紙幣を大量に製造するなど、他科も多くの成果をあげている。

本書は、その「登戸研究所」の施設が残る明治大学が設立した「平和教育登戸研究所資料館」について、
各展示室のコンセプトや展示紹介を行いながら、
現在把握できている登戸研究所の概容を説明していくもの。

後半には、登戸研究所の「秘史」が発掘される契機ともなった高校生による平和学習など、
多岐にわたる内容となっている。
しかし一方で、「これこれの主旨の展示パネルとなっている」など、
この一冊で登戸研究所がわかる、という内容にはなっていない。
すなわち、いわゆる資料館の展示概説でもないし、
また総括的な本でもなく、やや中途半端な位置づけとなっている。

登戸研究所については、当時の研究員その他による類書もいくつか刊行されているが、
資料館といういわば当時者的位置にありながら、
大学という客観的論述が可能な立場であるだけに、本書はもっと深く、
資料的価値を追究したものでもよかったのではないかと思う。

ところで、以前NHKの「所さん!大変ですよ」で、「まさか…愛用の農具が“幻の秘密兵器”だった!?」という回があった。
長野県の農家が愛用している農具、
実際には「火が噴き出すように燃焼する棒」なのだが、これが確認の結果、
「登戸研究所」の開発品だったことが判明している。

登戸研究所は神奈川・登戸にあったのだが、戦争末期、長野・駒ヶ根市に疎開的に移設されている。
戦争終了後、開発した品や記録は徹底的に破壊されたらしいが、なぜか流出していたらしい。
第二次世界大戦における日本の技術開発については、まだまだ謎が深い。

【目次】
第1章 アウトラインを探る―登戸研究所とは何か
第2章 時代背景を探る―登戸研究所と戦争の時代
第3章 登戸研究所の全体像を探る
第4章 風船爆弾の実像を探る
第5章 生物兵器・スパイ兵器の謎を探る
第6章 証拠なき世界を探る
第7章 偽札印刷の真相を探る
第8章 “秘密戦”のその後を探る
第9章 戦争の記憶をどう継承するかを探る
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