ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「自分がやってみたい」が、一番大事だ。「宇宙を撮りたい、風船で。」  

宇宙を撮りたい、風船で
岩谷圭介



「将来何になりたいか」という質問は、今も昔も苦手だ。
自分が何が好きで、何が得意で、それがどんな職業に活かせるかが分かる子どもなんて、
ほんの一握りだろう。

また、教師や大人の問いかけの意図が、子どもらしい夢を聴こうとしているのか、
現実的な認識の有無を確認しているのか、それも分からなかった。

様々な分野で活躍する人について、
「彼/彼女は、子どもの頃から具体的な夢や目標を持ち、努力していました」と語られるが、
多くの人の場合は、おそらくそうではない。
彼らは好きなこと=得意なこと=仕事に成り得ること という方程式が成立した、
ごく一部の人間なのだと思う。

多くの人は、妥協のうえでの仕事、お金を稼ぐための仕事なのではないか。
僕はそう割り切って仕事を選ぶことも是と思っているが、
どうも日本では、「お金のために仕事をするなんて」「仕事だから仕方がない」など、
お金とのトレードオフ以上の価値を仕事に求めがちだ。納得できない。

そういう圧力が高いと、「仕事」が自身の存在理由そのものになる。
逆に、自身の存在理由が分からなければ、納得できる「仕事」はできないことになる。

フリーターやニート等を無条件に肯定する気もないが、
不要なまでに「仕事」に重きをおいて、その重圧故に仕事を選べない人も多いだろう。

本書著者も、バック・トウ・ザ・フューチャーのドクのような発明家になりたいと思っていた。
ところが現実には「発明家にはなれない」と知り、将来に対する夢も目標も失ってしまう。

その結果、目標を模索するための浪人、留年などを行う。
家族が暖かく見守っていたから著者は救われているが、
多くの家庭では、著者のような葛藤を甘えと呼び、強制的に社会に出すだろう。
その結果、ドロップアウトすることも少なくない。

ただ、仕事は単に、お金を稼ぐ手段。
大事なのは自分がやりたい事、好きなことを探し、追求することだ。
そこに第三者の評価はいらないし、お金を稼ぐ必要もない。

それが理解できれば、自分の人生を歩むことができる。

著者は、「発明することが好きだ」という自身の方向性と、
風船で宇宙からの写真を撮った人がいる(自分もやりたい)という欲求をもとに、
誰も歩んだことがない道を進み始める。

本書は風船で宇宙からの写真を撮るというプロジェクトの概要だが、
むしろ、人生が見えない一人の人間が、
自分の好きなことを、ひたむきに追求し続けることの大事さを伝える一冊だ。

「ふうせん宇宙撮影」については、何も先行例が無いなか、
高度30,000メートルまでに達する頑丈さ、
自動的に切れも安全に落下システム、
関係部局との調整など、
振り返ってみれば、どれも難しい話ばかりだ。

だが、それを一歩ずつ解決する姿勢、まさにトライ・アンド・エラーで、
著者は見事な世界を魅せてくれる(本書でも、カラー写真が多数掲載されている)。
そこには先人としてのおごりは無く、誰でも同じようにチャレンジしてほしい、という思いがある。

著者のホームページ「ふうせん宇宙撮影」でも、美しい写真、ノウハウが多数紹介されており、YOUTUBEでも動画がアップされている。

著者のYOUTUBEのチャンネルはこちら

ただ、実際に「ふうせん宇宙撮影」をやろうとすれば、かなり難しいだろう。
著者が言うとおり、打ち上げる場所として最適なのは道東であり、
交通費だけでも大きな負担となる。
そのうえ、製作、関係部局との交渉等々、
軽く「やってみよう」という世界では、ない。

だが大事なのは、こうした自身の夢を追求することだ。
それが「ふうせん宇宙撮影」でなくとも、よい。
多くの人は、日常の瑣末事にまぎれて、消耗しながら生きている。

その中で、改めて「自分のやりたいこと」を、誰の眼も気にせず、
好きなようにトライすること。
それが、「生きる」ということであり、人生の楽しさだと、本書は伝えてくれる。

【目次】
第1章 風船で宇宙を見る!
第2章 夢は転がってはいない
第3章 「やってみて」はじまった
第4章 失敗は教えてくれる
第5章 「達成した」その先へ
第6章 「ふうせん宇宙撮影」の扉を開く
第7章 手を伸ばした先にある宇宙の姿
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