ちょっとヨクナレ ~読書と日記~
自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録
今年も、刺された?「なぜ蚊は人を襲うのか (岩波科学ライブラリー)」 
2016/10/19 Wed. 09:56 [edit]
なぜ蚊は人を襲うのか (岩波科学ライブラリー)
嘉糠 洋陸
青い空、白い雲、花火やプール。
「夏」と言うと思い出すモノは多いが、「蚊」が最初に浮かぶ人は少ないと思う。
しかし、いつの間にか刺されていたり、寝苦しい夜、耳元でプ~ンと飛んだりと、煩わしいったら無い。
それほど身近な「蚊」だが、いったい僕らは何を知っているのだろうか。
あまり身近な問題として意識していない日本脳炎。
アメリカでは蔓延したが、幸いにも日本にはまだ(単発例はあるが)侵入していない西ナイル熱。
犬のフィラリアはあるにしても、
少なくとも日本では、長らく蚊と伝染病をセットで考える必要は無かった。
だが、2014先8月に代々木公園で発生したデング熱は、別であった。
温暖化が進むことによる、冬季の最低気温の上昇。
グローバルかつ迅速な人・物の世界的な移動。
蚊が媒介する伝染病は、これから増加はすれども、減少することは決してないだろう。
本書は、そうした「伝染病を媒介する蚊」を研究する方によるもの。
「昆虫としての蚊」でないことがポイントで、
蚊が標的を発見するメカニズム(臭い、熱、二酸化炭素が行動にどのように作用するか)、
蚊による吸血行動を誘引する諸因子、
病原菌(例えば糸状虫)が蚊の中でどう増殖し、いかに吸血行動での移動に備えるか、
など、目のつけどろが凝縮されているのがポイントである。
また一方、西アフリカでの蚊採集など、著者による蚊研究の現場記録が合間に挿入されており、
「「伝染病を媒介する蚊」を研究する人」という、たぶん想像もつかない職業の姿を見ることもできる。
この両者が相互に左右することで、
蚊による伝染病のうち、人類にとって長く、おそらく最大のものであるマラリアが、
なぜこれほど蔓延し、一方で徹底した予防や根絶が困難なのかが見えてくる。
デング病ですら、その「代々木公園株」は、東京へ行ったこともない兵庫県西宮市の人(1例)まで伝播した。
また、ヒトスジシマカは欧米・アフリカへの侵入が問題となっているが、
その由来は日本のものだ。
(越冬卵を作れるヒトスジシマカは日本の系統だけで、古タイヤの輸出に伴って侵入したようだ。)
蚊による被害は、今後も拡大し続ける。
とすれば、敵を知ることは、何よりも重要だろう。
なお、本書で気になった部分のメモ。
・吸血性の蚊の起源は、約2億 千年前のペルム紀頃。現在もカエルを吸血する蚊がいることから、
当時もカエルを吸血していたのかもしれない。
→蚊の起源なんて考えもしなかったぞ。
・蚊に何度も吸血されると、蚊の唾液腺成分に特異的なIgG抗体が作られる。
この抗体は、IgE抗体よりも先に唾液腺タンパク質などに結合するため、アレルギー反応が起きなくなる。
この現象を減感作、または脱感作という。
一晩で200回刺されるようなマラリア流行域の住民は、ほぼ一年中唾液腺成分を注入されているため、
常にIgG抗体が体内に存在するようになり、いくら蚊に刺されても痒みが起きない。
→だからマラリア流行域の人は、蚊に刺されることを気にしない(気づかない)のか。
・脊椎動物は、生まれつき備わっている自然免疫系と、多様な抗体産生による獲得免疫系を持つ。
しかし蚊などの節足動物は、自然免疫系しか持たない。
→全ての動物で同じと思っていた。
・同じ人が色違いのシャツを着ると、黒、青、赤、緑、黄、白の順に良く蚊を引き寄せた。
→黒は避けていたが、緑は着ていたぞ。
【目次】
1 その蚊、危険につき
2 蚊なりのイキカタ
3 標的を発見!
4 蚊が血を吸うわけ
5 病気の運び屋として
6 蚊との戦いか、共存か
嘉糠 洋陸
青い空、白い雲、花火やプール。
「夏」と言うと思い出すモノは多いが、「蚊」が最初に浮かぶ人は少ないと思う。
しかし、いつの間にか刺されていたり、寝苦しい夜、耳元でプ~ンと飛んだりと、煩わしいったら無い。
それほど身近な「蚊」だが、いったい僕らは何を知っているのだろうか。
あまり身近な問題として意識していない日本脳炎。
アメリカでは蔓延したが、幸いにも日本にはまだ(単発例はあるが)侵入していない西ナイル熱。
犬のフィラリアはあるにしても、
少なくとも日本では、長らく蚊と伝染病をセットで考える必要は無かった。
だが、2014先8月に代々木公園で発生したデング熱は、別であった。
温暖化が進むことによる、冬季の最低気温の上昇。
グローバルかつ迅速な人・物の世界的な移動。
蚊が媒介する伝染病は、これから増加はすれども、減少することは決してないだろう。
本書は、そうした「伝染病を媒介する蚊」を研究する方によるもの。
「昆虫としての蚊」でないことがポイントで、
蚊が標的を発見するメカニズム(臭い、熱、二酸化炭素が行動にどのように作用するか)、
蚊による吸血行動を誘引する諸因子、
病原菌(例えば糸状虫)が蚊の中でどう増殖し、いかに吸血行動での移動に備えるか、
など、目のつけどろが凝縮されているのがポイントである。
また一方、西アフリカでの蚊採集など、著者による蚊研究の現場記録が合間に挿入されており、
「「伝染病を媒介する蚊」を研究する人」という、たぶん想像もつかない職業の姿を見ることもできる。
この両者が相互に左右することで、
蚊による伝染病のうち、人類にとって長く、おそらく最大のものであるマラリアが、
なぜこれほど蔓延し、一方で徹底した予防や根絶が困難なのかが見えてくる。
デング病ですら、その「代々木公園株」は、東京へ行ったこともない兵庫県西宮市の人(1例)まで伝播した。
また、ヒトスジシマカは欧米・アフリカへの侵入が問題となっているが、
その由来は日本のものだ。
(越冬卵を作れるヒトスジシマカは日本の系統だけで、古タイヤの輸出に伴って侵入したようだ。)
蚊による被害は、今後も拡大し続ける。
とすれば、敵を知ることは、何よりも重要だろう。
なお、本書で気になった部分のメモ。
・吸血性の蚊の起源は、約2億 千年前のペルム紀頃。現在もカエルを吸血する蚊がいることから、
当時もカエルを吸血していたのかもしれない。
→蚊の起源なんて考えもしなかったぞ。
・蚊に何度も吸血されると、蚊の唾液腺成分に特異的なIgG抗体が作られる。
この抗体は、IgE抗体よりも先に唾液腺タンパク質などに結合するため、アレルギー反応が起きなくなる。
この現象を減感作、または脱感作という。
一晩で200回刺されるようなマラリア流行域の住民は、ほぼ一年中唾液腺成分を注入されているため、
常にIgG抗体が体内に存在するようになり、いくら蚊に刺されても痒みが起きない。
→だからマラリア流行域の人は、蚊に刺されることを気にしない(気づかない)のか。
・脊椎動物は、生まれつき備わっている自然免疫系と、多様な抗体産生による獲得免疫系を持つ。
しかし蚊などの節足動物は、自然免疫系しか持たない。
→全ての動物で同じと思っていた。
・同じ人が色違いのシャツを着ると、黒、青、赤、緑、黄、白の順に良く蚊を引き寄せた。
→黒は避けていたが、緑は着ていたぞ。
【目次】
1 その蚊、危険につき
2 蚊なりのイキカタ
3 標的を発見!
4 蚊が血を吸うわけ
5 病気の運び屋として
6 蚊との戦いか、共存か
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