ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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惑星学は、これからの夢だ。「銀河系惑星学の挑戦―地球外生命の可能性をさぐる」  

銀河系惑星学の挑戦―地球外生命の可能性をさぐる (NHK出版新書 477)
松井 孝典



冥王星が惑星ではなくなった、というニュースは記憶に新しい。
「惑星の定義が明確に定められ、その定義に冥王星は該当しなかった」というのが理由であり、
なんとなく納得していた。

だが、その裏にある必然性-なぜ「今になって」惑星の定義が明確にされたのか、という点については、
さほど意識が及んでいなかった。

冥王星に類似した天体・エリスが発見されたからだ、というのもあるが、
ではなぜ「今になって」エリスが発見されたのか。

また、ネックになった定義-「その軌道上に他の天体が無いこと」が、なぜ「今になって」明確になったのか。

これらの疑問に答えるためには、
現代の惑星学-太陽系内の惑星研究はもとより、太陽系外の惑星も含めて-の日進月歩の発展と、
そこから得られた「惑星」の成立に対する知見の蓄積が非常に大きい。

言い換えれば、「今になって」決めたのではなく、「今だからこそ」定義が決められたのだ。

本書は惑星研究の歴史を縦軸に、
またその時々の研究成果から得られた惑星・恒星の形成から消滅に至るまでのメカニズムを横軸として、
現時点の「銀河系惑星学」の研究状況をコンパクトに纏め上げたもの。
前半はやや天文学史的側面が強いが、後半になるにつれ、惑星・恒星形成の最新理論に踏み込んでいくため、
流れとして把握しやすい。

また、そうした銀河系惑星学の研究の結果、
「太陽系は宇宙で特別な存在ではない」という前提で探索がなされた結果、
実際に多くの系外惑星が発見されながらも、
一方では太陽系が特異な系であること-
 例えば巨大なガス惑星(木星)が10年以上の周期で公転したり、
 ほとんどの惑星が中心星(太陽)の赤道面と同じ軌道面にあること -が
明らかにされている。

これが、ここ数十年の研究成果であるのだから、
これからの数十年間で、いったいどれ程の発見があるかと思うと、ワクワクする限りである。
それを楽しむためにも、本書は手元に置いておきたい。

なお、最終章あたり、地球生命が宇宙から来たと言うパンスペルミア説についても触れられている。
本書著者は、「スリランカの赤い雨 生命は宇宙から飛来するか」という著書において、
稀に振る「赤い雨」には細胞状の物質であること、隕石は確認していないが、爆発音があったことから細胞状の物質を含んだ彗星が大気圏内で爆発したことが原因であり、地球生命が宇宙から来たと言うパンスペルミア説を補強する材料である、
というスタンスの主張があるという。
(僕は未読であるため、誤った認識かもしれない。興味がある方は原書を確認されたい。)
これについては批判的な見解が多い。
著者も本書では、「細胞状物質はシアノバクテリアに近い細胞であり、地上のシアノバクテリアが一度宇宙空間まで運ばれ、紫外線を浴びた結果赤くなったものが再び戻ってきた」というストーリーを示している。「完全宇宙由来」というものからは後退した認識のようだ。
何が事実かはもちろん分からないが、地上の生命体がかなり上空まで巻き上げられていることは事実であることから、
パンスペルミア説にしろコンタミネーション(試料汚染)にしろ、
まずは地球由来の生物がどこまで巻き上げられるのか、どのように変化するのか(しないのか)を調査する必要があるのではないか。
成層圏あたりで生命が見つかるたび、地球外生命だとか違うとか議論されるが、それ以前の問題だろう。

【目次】
はじめに──惑星の謎を解けば宇宙がわかる
第1章 SFに追いついた天文学──惑星探査の現状
第2章 人と惑星──コペルニクス的転換が起こるまで
第3章 太陽系の誕生
第4章 惑星系はこうして生まれる
第5章 惑星の新しい定義とは
第6章 銀河系惑星学を拓いた二大発見
第7章 生命を宿す星はあるのか
おわりに


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