ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

知らなければ、視えない。「虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)」  

虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)
小松 貴



生き物を楽しむ。
もちろん、フィールドを楽しむことが最優先だ。

だが、漫然と出かけていくと、
既知の事実に対して不必要なほど注意を払ったり、
最悪の場合、誤解することによって出発点そのものを誤ることもある。

もちろん、素の状態での驚き、発見は重要だ。
だが、観察した事実の重みや解釈については、やはり先達の知見(ある程度の議論と時の篩にかけられたもの)をふまえるべきであり、
「自分の体験のみ」に立脚し、「自分の見解のみ」を論拠として自然を理解することはできない。
過去の記録も研究も確認せず、目の前の生物の形態や行動を「理解できる」という人は、
結局、そういう「気になっている」に過ぎない。

特に、そうした誤解の上にフィールド体験だけを積んだ人が先輩になると、
ちょっと後進は困ることになる。

まずは自己の体験。
その体験を「先達の知識」に照らし、「既知の事実」と「未知の事実」に分離し、
そのうえで次の体験に臨むというのが、おそらく最も真っ当な生物とのつきあいだろう。

「フィールドに出てナンボ」というのは知人の口癖だが、
既知の事実を「既知だ」と知ったうえで、実際に自分の眼で視ることによってこそ、
新たな発見や疑問を抱くことができる。

いわば、「自己の体験」と「先達の知識」は、車の両輪のようなものだ。
そして本書は、「虫のすみか」という切り口において、
この車の両輪を見事に回し、新たな「先達の知識」として結晶化された一冊である。

収録されている項目は35。種としてはもっと多い。
アリジゴク、ハンミョウの幼虫(「ダーウィンが来た!」でも取り上げていた)、ミノガ(ミノムシ)、オトシブミといった身近な昆虫から、
グンタイアリ、アリ植物(植物体の中にアリが住む空間がある)などのような海外の昆虫、
また海にすむ昆虫など、日頃知ることがない生活が紹介されている。

しかもオールカラー。数多くの写真が用いられており、各項目の楽しさは抜群だ。
その一方、各項目は基本的な紹介に続き、「探す」、「よもやま話」という項が建てられており、
本書に示された「既知の事実」を、僕らが体験するための手引きとなっている。

更に、各項目ごとに参考文献が列記されているのも特徴だ。

これらによって、フィールドにおいても、机上においても、
本書を出発点として、各人がそれぞれの道に進むことが可能となっている。

「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」とはよく言われることだが、
虫のすみかという極めてマイナーな分野(ただし、その生態・形態を理解するためには最も重要な部分の一つ)について、
本書は時の経過を経るごとに、高い評価を得ることと思う。

なお、著者には「裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)」という著書もある。
未読だが、こちらはより著者の個人的体験が前面に出ているようだ。
こちらも楽しみたい。

なお、著者のブログはこちら。「Ⅲ月紀・修羅
世界の生物に対する著者の「体験」が見られる。

【目次】
1 大地にすむ
2 植物にすむ
3 珍奇な環境にすむ
4 昆虫じゃない虫たち



▼識別に特化するなら、こちらも手軽。
(レビューはこちら )

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