ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

不思議な植物に出会いたい。「森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界」  

森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界
塚谷 裕一



腐生植物、といっても正直、何のことか分からなかった。

植物といえば、葉緑素を持ち、光合成を行う生きもの。
だが中には、葉緑素を失い、他者から栄養を奪うことで生育する植物がある。

「葉緑素が無い」というと、キノコ等の菌類かなと思うが、菌類ではない。
歴とした植物なのだ。そして、栄養源を奪う相手が、菌類なのである。

そうした独特の生き様を持つ植物を、総じて「腐生植物」と言う。
特定の科に限定するわけではなく(ある科全てが腐生植物というのは有る)、様々な科に、こうした種が存在している。
被子植物だけでも520種以上(10科以上)というから、知らないだけでかなり普遍的な生き方なのだろう。
一般的な植物と菌類の間というか、本当に生物というのは、あの手この手を使ってニッチを見いだすものである。

さて、この腐生植物、かなり発見することが難しいという。
というのも、葉緑素を持たず、光合成を行う必要がないため、葉を持つ必要が無い。
そのため多くの場合、花をつけ、種子を散布するまでの時期のみ、地上部で見いだされるのだ。
そしてその開花期間は、かなり短い。

また、色が独特。
有名なギンリョウソウ、幽霊茸という別名があるが、葉緑素を持たず真白である。
かと思えば赤や黄色などがあって、ちょっと「植物」という眼で見ると見過ごしそうである。

形も独特。タヌキノショクダイなんて、何がどうなっているのか分からない。
森で見たら、たぶんキノコと思って見過ごしそうだ。
(タヌキノショクダイは、徳島県那賀町で記録が有る。那賀町観光協会がflickerに画像をアップしているので、
ご覧いただきたい。)

さらに、大まかに言うと腐葉土が多く、菌類が豊かな土地にのみ発生するため、
その出現場所が限定される。しかも小さかったり、同じ場所でも連続しての発生は難しいという。

フィールドに多く出る者でも、恐らく菌類や、ごく小さな土壌生物を追っているような人くらいしか、
遭遇する機会すらないのではないだろうか。

本書はそうした腐生植物を専門とする著者が、腐生植物の生活史、
また日本各地・世界各国における腐生植物の発見状況等、フィールド体験を、多くのカラー写真と共に紹介するもの。

上記のとおり、通常の生活の中で腐生植物を見つけることは極めて難しいだろうから、
本書でその多様な姿を見られるだけでも、なかなか得難い経験である。

腐生植物のひとつであるツチアケビは、種子散布は鳥類によるという。
その真っ赤で多肉質の果実が、ヒヨドリやシロハラに好まれるようだ。
留鳥のヒヨドリ、冬鳥のシロハラは野鳥の中では個体数も多い普通種だし、
そのためかツチアケビは、腐生植物としては割とよく見られる種という。いつか巡り合いたいものだ。

腐生植物は、まだまだ新種が見出される可能性が高く、日本国内においても、その産地に空白地帯が多いようだ。
知らなければ、探しようもない。
本書により腐生植物の存在を知れば、これからの森歩きの愉しみが一つ増えるだろう。
そしていつか出会い、その幸せを噛みしめたいものである。

【目次】
1 腐生植物のことはじめ
2 腐生植物のくらし
3 腐生植物は新種の宝庫
4 腐生植物の探しかた
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 植物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/682-777123a6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム