ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「このままでは正しく行動できない」と知ることが、第一歩だ。「生き残る判断 生き残れない行動」  

生き残る判断 生き残れない行動
アマンダ・リプリー



冷戦というグローバルかつ分かりやすい対立構造の時代は、もう一昔前となった。
だが現在が平和で安全な時代かといえば、
多発するテロ、天災、宗教対立や移民問題等、日々世界のどこかで火の手が上がっている。

過去と違うのは、一般人が、そうした災害・紛争に巻き込まれる可能性が高まっていること。
日本の一地方だから大丈夫という話はなく、いつ、どこで何が起こるか分からない。

そのような状況において、一般人にも「生き残る判断」が求められるが、
果たして人は災害に直面した時、どのように考え、行動するのか。

本書は1977年のアメリカ・シンシナティ市郊外におけるビバリーヒルズ・サパークラブの火災、
1982年のエア・フロリダ90便墜落事故(ポトマック川旅客機墜落事故)、
2001年の9.11同時多発テロ、2004年のスマトラ沖地震、2005年のハリケーン・カトリーナなど、
それぞれの災害中の特徴的な人物にスポットをあて、災害の中で人がどう判断し行動するかを探っていくものである。

本書を読めばただちに「生き残る判断」ができるようになるかといえば、もちろん無理だろう。

だが、災害の中で人は-自分も、他人も-正しい判断をするのが困難であるという認識をスタート地点にできれば、
無知ゆえ「生き残れない行動」を回避できる可能性は高まるだろう。

また、「自分が生き残るかどうか」ではなく、
「誰かを助けられるかどうか」というシチュエーションに直面する可能性も高まっている。
そんな時、いかに行動できるかは、それこそ平時の訓練や意識に大きく左右されるだろう。

本書は東日本大震災以前に執筆されているが、本書が提示した様々な課題は、
振り返ってみれば東日本大震災以降の様々な日本での災害の中にも見いだされる。

過去の文献と考えるのではなく、本書こそ、「歴史から学ぶ」教材として最適の一冊だろう。

なお、9.11の際、モルガン・スタンレー証券の社員が特異的に多数生存したことから、
同社は事前に知っていたとか、同社の自作自演である等の陰謀説がある。
だが本書を読めば、同社の避難の成功は、
・モルガン・スタンレー・ディーン・ウイッター社は1993年の世界貿易センター爆破事件を経験していたこと
・同社の警備主任である元陸軍のリック・レスコラは、当時、知人とビル爆破テロ対策を進言したものの採用されず、
 結局は想定どおりの爆破事件が発生し、的確な対処ができなかった経験があること
・これらから、同社は新しいワールドトレードセンターに入居後、リック・レスコラの主導のもと、
 徹底して実効的な避難訓練を重ねてきたこと
・9.11当日、同氏が主体となって避難を完了させたこと
という、リスク管理、特に避難担当者による積極的かつ日常的な訓練が、避難の成功に結び付いたことが分かる。

これは、東日本大震災は本書刊行後に発生したが、いわゆる「釜石の奇跡」が奇跡ではなく、日常的な訓練や防災教育の成果であったことに通じるものだ。

リック・レスコラは9.11の際、更に逃げ遅れた人を探すためか再びビル内に戻り、そのまま行方不明となっている。

9.11陰謀論を叫ぶのは自由だが、
リック・レスコラが文字通り命を架けて示した、彼の信条である8つのP、
Proper Prior Planning and Preparation Prevents Piss-Poor Performance
(適切な事前の計画と準備は、最悪の行動を防ぐ)
を伝える方が、遥かに重要だろう。

【目次】
「人生は融けた金属のごとくなって」
第1部 否認
 立ち遅れ―北タワーでのぐずついた行動
 リスク―ニューオーリンズにおける賭け
第2部 思考
 恐怖―人質の体と心
 非常時の回復力―エルサレムで冷静さを保つ
 集団思考―ビバリーヒルズ・サパークラブ火災でのそれぞれの役割
第3部 決定的瞬間
 パニック―聖地で殺到した群集
 麻痺―フランス語の授業で死んだふりをする
 英雄的行為―ポトマック川での自殺未遂
新たな直感を生みだす
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category: 災害

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