ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

発酵なくして和食なし。「発酵はマジックだ」  

発酵はマジックだ
小泉 武夫



和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語 (河出ブックス)」(レビューはこちら)、漫画「もやしもん」と読むと、やはり発酵に興味が湧く。ということで読了。
著者は東京農大の名誉教授。実際は違うらしいが、「もやしもん」 の舞台モデルでは、と言われた大学の醸造科学科で教鞭をとられていた方である。

発酵に関する話題としては、酒・麹と、もちろん「和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語 (河出ブックス)」と重複する話題も多い。
だがこれは、結局は麹菌オリゼーの素晴らしい能力、そしてそれを最大限に引き出して発展させた日本人の先人の知恵によるところが大きく、その素晴らしさに再度感動するところである。

また本書では、鰹節、納豆、漬物、酒や肉の発酵にまで視野が広がっている点が楽しい。
そういう視点で改めて日本食を見ると、伝統的な食品は発酵食品だらけである。

ところが現在、同じ発酵食品でも、日本的な発酵食品は避けられ、
チーズなど西洋的な発酵食品が日本人の食生活に普及している。
時代の流れといってしまえばそれまでだが、
長い日本人の知恵と工夫の歴史を知れば、日本の発酵食品を避ける食生活が、いかに勿体ないものかが実感できるだろう。

【目次】
第1章 発酵とは何か
第2章 発酵の主役・微生物
第3章 麹と酒と日本人
第4章 発酵がつくる調味料
第5章 納豆、鰹節、種麹に見る日本人の知恵
第6章 漬け物大国日本
第7章 魚と肉の発酵食品
第8章 発酵食は健康食
第9章 北極から南極まで世界の発酵食
第10章 地球と人類を救う発酵革命


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category: 菌類

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

水の消毒という面において、水が少ない地域(ヨーロッパ圏)ではアルコールを混ぜることで消毒し、水が豊富な地域(アジア圏)では煮沸消毒が発達した、と「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4140812567/kagawanoyacho-22/" target="_blank" >迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか</a>」で読んだ覚えがあります(それがアルコール分解能力の差に影響している、として)。
確かに食物の衛生面では、清浄な水があれば(基本的には)良く、発酵・貯蔵食品においても唐辛子を多用する絶対的な必要性はありません(日本の漬物が良い例ですね)。
むしろ唐辛子による発汗作用、当時のスパイスの流通度、ワサビの普及度等々、日韓の差には他の理由が有りそうです。
アスペルギルス・アワモリは発酵過程でクエン酸を生じ、これが雑菌の繁殖を抑えるとのことですので、雑菌由来とは考えにくいでしょう(そもそも雑菌を抑えなければ酒にならないですし)。仰る通り、味の差はアスペルギルス・アワモリの系統差や、原料(米や水)や環境(仕込みや貯蔵)の差が由来ではないでしょうか。

BIRD READER #aYDccP8M | URL
2016/09/03 20:15 | edit

 酵母などの微生物にとっては、どちらも同じ行為ですから、確かに上手い落としどころですね。

 水キムチは私も余り食べた記憶が無いです。あまり塩辛さもなく、これが?と思うモノはごくたまにありました。が、友人に「唐辛子が来るまで漬物はどうなっていたのか」と訊いたところ、答が「水キムチ」でした。恐らく冬季に上手く漬けて居たのでしょうね。
 唐辛子の持つ辛さは人種・民族・民俗を超えて喜ばれたことと、かつその静菌作用も尊ばれる由縁ではないか、と言う説を風聞しました。その前段に、インドならガラムマサラがあったことを玉村豊男は書いており、四川省を中心とした中国の辛い物は山椒があったのか、と言うのは中国各所で経験しました。玉村氏はこれほどまでに喜ばれる唐辛子がなぜ日本には定着しなかったことを疑問視していましたが、静菌作用と言う防腐という衛生仮説を導入すると、きれいな水が簡単に得られる日本では必要が無かった、という事が考えられます。韓国の農村部は日本と見間違えるほど似ていますし、平野の無い急流の多い場所であると考えると、水を多用することで衛生を保てたはずで、何故唐辛子が?と言う件に関しては、人々が美味しいから、と思うからでしょうか。日韓の分かれ目が何処にあるのかは、未だわからずです。
 そして、韓国人の友人に秘密の具材は何なのかと訊いたところ、「秘密」でした。口噛酒とはまた別のようです。口噛み酒に近いのは、糠漬けではないかと私は思います。泡盛にたくさんの味があるのは、蒸留の前段でアルコール発酵で入り込む雑菌のせいではないかと言う話を巷で聞いたことがあるのですが、これは口噛み酒に近い考えとなります。が、現実にはアスペルギルス・アワモリを継代する中で生じる遺伝的或いは表現型の変異で、雑菌の入るような酒蔵・醸造所は無いんじゃないか?と言うのが私の考えです。

M氏 #- | URL
2016/09/03 19:03 | edit

コメントありがとうございます。
ご指摘の点、本書では「人間にとって良いことをしてくれる現象」が発酵という理解で良いとし(「発酵とは何か」という定義問題は1頁余りしか割いていません)、むしろ、発酵と腐敗の間で、人間がいかに発酵を理解し、そのうえで確実に発酵に持って行くテクニックを見出してきたか、という点に注目して展開していきます。
発酵と腐敗という点に深入りしないのがミソですね(発酵だけに。つまんないギャグでした)。

ところで、朝鮮半島への唐辛子の伝播と拡大は、以前から興味深く思っていましたが、
現キムチの前身の「水キムチ」という存在は知りませんでした。ありがとうございます。
ところで「各家庭の秘密」とは、やはり口噛み酒と同じテクニックなのでしょうか。

BIRD READER #- | URL
2016/09/03 17:39 | edit

そういえば、ソウルには「キムチ博物館」があり、「民俗博物館」にもキムチを漬ける展示がありました。共に唐辛子が来た後で、水キムチが辛いキムチへと革命的に変わったことをもっと推してほしい、と思ったのでしたが。この展示で壺に入れるモノを見て韓国人の友人曰く「これに各家庭の秘密を加えるので味が違う」と言っていました。この辺は代謝過程の残余と乳酸発酵の賜物な訳ですが、乳酸菌=善であるとは限らない(ラクトバチルスが常に善玉とは限らない)にの、どうやってコントロールするのか、ちょっと疑問に思いました。この「発酵と腐敗の間」をどう上手く発酵に誘導するのか、と言うのが、個人的には「発酵」のマジックだと思ったりします。日本酒を冬仕込むのはそのような操作のタネの一つだと思いますが。
 巷では「発酵」と「腐敗」は全く違うモノのように扱われている(らしい)、という事を某学会の最後に行われたパネルディスカッションで聞いたときには、ちょっと待て、と思ったモノです。有難くも注釈をパネラーの一人がつけてくれましたが、第一章できちんと書かれていたでしょうか?ちょっと心配です。

M氏 #- | URL
2016/09/02 19:16 | edit

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