ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

底辺を流れる粘り強さとタフな心。やはり只者ではない。「戦場カメラマンの仕事術」  

戦場カメラマンの仕事術 (光文社新書)
渡部 陽一



戦場カメラマン・渡部 陽一氏。
朴訥な喋り方と「戦場カメラマン」というギャップで評判だったが、
氏の「戦場カメラマン」 としての情熱、歩みを詳しく知る機会は殆ど無かったと思う。

本書は、「仕事術」というタイトルどおり、戦場カメラマンとしての心がけやノウハウが綴られている。
だが、もちろんそれが日本における日常に役立つ訳ではなく、
単にビジネスマン向けのセールス・タイトルに過ぎないので、
「仕事術」を求める層にとっては、正直期待外れだろう。

むしろ本書は、そうした独自の仕事術-ノウハウを得るまでの過程を綴るため、
渡部氏が戦場カメラマンになるに至る人生が綴られている。
そこから「面白いキャラクター」としての渡部 陽一氏ではなく、
「戦場カメラマン」としての渡部氏を知り、理解できることが重要だ。

単なるカメラマンと、「戦場カメラマン」は大きく違う。
紛争地に赴き、自身の感性を信じ、現地の方々を信じ、時には騙される。
自らのルールと経験を頼りに動き、フリーとして写真を公表する媒体を探す。
恐ろしくタフな世界だ。
あの「朴訥な渡部氏」とは、真逆の世界とも思える。

しかし本書を読み、また第二章のジャーナリストによる渡部氏評を読むと、
実は渡部氏の静かな情熱が、底知れぬ「粘り」を発揮していることに気づかされる。

「戦場カメラマン」であるからは、その写真でのみ評価するべきかもしれない。
しかし、多くの人が眼にしてこそ、その写真に価値と意味が生まれる。
(だからこそ、渡部氏もメディアへの露出に取り組んできた。)

本書は、改めて渡部氏の存在と、その写真に注目する機会となる一冊になるだろう。

渡部氏の公式サイトは、こちらである。
またオフィシャルブログ「戦場からこんにちは」では、日々の記事と写真がアップされている。

日本だけでも、最近は天災が多く、また日本近隣でも多くのテロが起こっている。
戦場カメラマンが伝えてくれる世界は、もう「遠い世界」の話ではない。


【目次】
●第一部 僕が見てきた世界
第一章 取材は準備から始まる
第二章 戦場カメラマンになろうとは思わなかった
第三章 現場で学んだ取材の作法
第四章 戦場取材のリアル
第五章 戦場では活字が心の癒しになる
●第二部 僕が出会った日本のジャーナリスト
山本皓一(フォトジャーナリスト)
松浦一樹(読売新聞社)
渡辺照明(産経新聞社)
原田浩司(共同通信社)
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category: 戦争

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

コメントありがとうございました。

ご意見を踏まえて考えてみると、
本書はフリーランス的な職業の方には、
具体例として良いかもしれません。

一方、サラリーマン的な職業における「仕事術」とは異なると。
読み手の立場、年代等によって、
かなり参考になる面が異なる一書と思います。

村上隆氏の「創造力なき日本」は、全く射程外の本でした。ご紹介ありがとうございます。

BIRD READER #- | URL
2016/08/15 17:08 | edit

 私も読みました。私の感じでは、仕事をする前にその仕事自体を知って実行する術としてどんなことが必要か、を戦場カメラマンになる前、なるため、なってから、の一例として提示して、パーツを置換していくことで、個々人自身がその仕事に付こうとするときの構え方、仕事に就いてからの処世術などに使えるな、と言う感を得ました。こう書くとなんか構造主義的でイマイチですが。私は日本でも人脈が広い訳ではないですが、中韓の研究者と共同研究をしていく前とやっている中で、著者程性根が悪い人と渡り合う事は無かったですが、でも彼らと付き合うために必要な事は何かを考えてみると、著者の半生を賭けてきた職業のやり遂げ方というのには、腑に落ちることが多かったです。
 職に就いてからその職の仕事術には、おっしゃる通り、あまり意味が無いでしょう。というか、その手の本なら他に山とある(そして意味があるとは思えない)ことですし、日本では経験しがたい戦場と言う異空間をチップス的に知ることができるかも、程度かも知れません。でも、地球上には戦場・紛争・暴動が常に存在し、その中に外から飛び込んで何を見ているのか、などを知るきっかけになれば、また別の読み方も違うか?と思ったりします。
 個人的には、ある程度独立性の高いミッションを与えられている場合には、芸術家としてはどうよ?とよく言われている感のある村上隆氏の「想像力無き日本」(文春新書)が、ミッションを助力を得つつ行には良いのではないか、と思う事があります。

 といって、私は仕事術とか自己啓発とか、所謂給与所得者(このくくりだと私もその一人ではありますが)を狙った本をまともに読んだことが無いので、上述の考え方がどれくらい普通で、どれくらい特殊かは分かりませんが・・・

M氏 #- | URL
2016/08/12 18:38 | edit

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