ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本の「ものづくり」の歴史の一つが、ここにある。「振子気動車に懸けた男たち」  

振子気動車に懸けた男たち (交通新聞社新書)
福原 俊一



僕は香川県坂出市生まれ・育ちである。
かつての坂出駅(まだ木造だった頃)には、何本も線路が広がり、いつも多くの汽車や貨物列車があった。
ただ、子供の頃は国鉄時代に汽車に乗る機会は殆どなく(生活圏が坂出市で完結していたので)、
速く、遠くまで行く特急列車は、夢のような存在だった。

だが、四国は大歩危・小歩危や四国山脈のように、中央部はかなり起伏の激しい地形である。
そのため道路も線路も湾曲し、トンネルも多い。

そのため特急列車も、僕が生まれた頃は、まだ実際には「速い」ものではなかったようだ。

だが高速道路の延伸、そして国鉄が民営化された時代、JR四国は特急列車の高速化に取り組ことになる。

そこで求めたられたのが、高速でカーブに進入した際に、遠心力で外側に振られる車体を内傾させることにより、
高速のまま通過するシステムを持った車両。すなわち「制御付振子気動車」だった。

振子気動車そのものは、国鉄において「自然振子」というメカニズムで開発がなされていたという。
だが自然振子では高速・狭いカーブになると乗り心地が悪くなり、限界もあった。

そこで技術的に停滞していたが、JR四国ではその振子挙動を制御することで、
全く新しいシステム開発に取り組むことになる。

限られた期間、国鉄分割化により削減されたマンパワー。
だが、JR四国として分割されたことによる危機感と、
一方で「JR四国内に特化すればいい」、すなわち寒冷化対策等を気にしなくても良いというメリットもあり、
ついに「2000系」、岡山-高知間の「南風」、高松-高知間の「しまんと」として結実する。

その後、瀬戸大橋の開通に伴っての電化、アンパンマン列車としての展開等、
地元民として振り返れば日常の風景だったが、確かに着実なJR四国の新列車の歴史が綴られている。

四国外の方にとっては面白味のない話題とは思うが、
「列車」の技術開発という、なかなか知ることができない世界の歴史が丁寧に綴られており、
鉄道屋の「情熱」を垣間見ることができた一冊であった。
おそらく四国外の方が読んでも、楽しめるものと思う。

ただ、「◯◯が最初である(と言うと、△△ を忘れるなと、という指摘を受けると思うが…)」という、
やや独特の言い回しが数か所あり、くどく感じてしまった。読むリズムが途絶える感があり、勿体ない限りである。

なお、香川県の鉄道史については、「私鉄の廃線跡を歩くIV 中国・四国・九州編(キャンブックス)」(レビューはこちら)に詳しく、参考となる。

【目次】
序章 分割そしてJR四国の発足
第1章 制御付振子気動車の幕開け
第2章 国鉄時代に開発が進んだ制御付自然振子
第3章 開発がスタートした振子気動車
第4章 振子気動車の新技術
第5章 高松~高知2時間運転の夢
第6章 TSE2000系のデビュー
第7章 2000系量産車の登場とダイヤ改正
第8章 JR四国の2代目振子車両8000系
第9章 予讃線電化を支えた技術屋の奮闘
第10章 アンパンマン列車と次世代車両8600系


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