ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

臭いッ!だけじゃもったいない。「カメムシ: おもしろ生態と上手なつきあい方」  

カメムシ: おもしろ生態と上手なつきあい方
野澤 雅美



洗濯物を取り込む。
何だかコゲ茶色の丸々っとした虫がついている。マルカメムシだ。

僕はG(正式名称を書きたくもない、あの黒いヤツ)がとても苦手で、
道端に転がっているだけでも1m以内には入りたくない。
カメムシの仲間は、そこまでもないのだが、
何にせよ、「つまむと臭い」というのが困る。

そのくせ、家庭菜園とか昆虫採集をしていると、最も頻繁に出会うのが
たぶんカメムシとハムシではないか。

これほど身近な昆虫ということは、生物学的に言うと
大成功したグループと言える。

しかし、臭いムシに脚光が当たることは少なく、
あまり本屋でも図書館でも「生物」としてのカメムシに取り組んだ一般書は見かけなかったのだが、
登場したのが本書。タイトルからして、「おもしろ生態と上手なつきあい方」である。

第1章では、まずはカメムシの多様性が紹介される。庭・畑はもちろんのだが、
野山、山地、田にも住む。店舗の白米だけを購入している方は、多分見た事が無いだろうが、
自家栽培した米を入手している方には、カメムシの食害による斑点米はお馴染みである。
また、地表・地中にもいるということ、これは驚きであった。どこにでもいるのである。

第2章は、そうした多様なカメムシの生態について。食性、冬越し、繁殖等々だ。
カメムシは蛹にならない不完全変態を行う昆虫だということは知っていたが、
多くは5回の脱皮(1齢~5齢幼虫まで)を経る、という。
そのため、野外で見るカメムシには同種でもステージで姿・形が異なり、
バラエティに富んでいるのだ。

またあの臭いニオイである。多量の放出では外敵への攻撃・忌避物質として、
少量なら集合や分散の合図としてと、これも種によって様々な使い分けがなされている。
ニオイは単一の化合物ではなく、ヘキサナールやオクソヘキサナールなどの揮発性の高いアルデヒド群や、
それらを揮発させにくくしたり、滑らかにする炭化水素等、種によって多くの化合物がブレンドされているという。

特にヘキサナールはダイズや草の「青臭い」ニオイの原因物質だが、これがカメムシの体内で合成されているのか、
それとも生物濃縮によるものかは分かっていないという。

ただこの強烈なニオイ、あまりにも密閉空間だとカメムシ自身も死ぬくらいであり、
かなり危険な防御策と言える。

その他、本書では外来種として分布を拡大しているカメムシや、
最近よく見かけるサシガメ類、そして見た目が鮮やかなキンカメムシの仲間なども紹介しており、
カメムシの多彩な世界が堪能できる。

第3章は、そんなカメムシの見つけ方、捕まえ方、
またカメムシを調べることによって地域の自然を調査する方法などが紹介されており、
まさにカメムシ研究入門書と言える内容となっている。

惜しいのは、様々なカメムシが紹介される一方で、種名による索引がないこと。
「他の図鑑やネットで知ったカメムシが出ているか」という使い方は難しい。

それでも、カメムシというマイナーだが極めて身近な昆虫を知ることは、
確実に、自然に対するアンテナの拡大に繋がる。
こうした本は、各小学校に必置すべきだろう。

ちなみに野鳥で有名な氏原氏、「決定版 日本のカモ識別図鑑 」(レビューはこちら)などの図鑑を刊行されているが、
同氏はカメムシも守備範囲にされている。サイトは、「カメムシも面白い!!」だ。
昆虫ブログも多々あるが、野鳥の世界では的確な識別に定評がある氏を信頼し、まずはこちらを紹介しておく。

【目次】
1 身近なカメムシとことんウォッチング
2 おどろきの素顔と暮らしぶり
3 カメムシと上手につきあう
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category: 昆虫

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