ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

プロフェッショナルの眼を疑似体験。「野生動物カメラマン」  

野生動物カメラマン
岩合 光昭



岩合光昭氏といえば、最近ではにゃんこの写真を良くみる。
だが、ちょっと前にはスノーモンキー、さらに前にはペンギンの写真屋さんという印象があった。





特にスノーモンキー、僕も想像すらしていなかったシーンであり、
世界で最も北限に生息する我らがニホンザルの魅力を、たった一葉の写真で表現したものだ。

そして本書は、こうした野生動物カメラマンとしての岩合氏が、
それぞれの被写体を追う過程での体験、発見を綴ったものだ。
(だから、にゃんこを被写体としてきた体験は含まれていない。)

その発見は、地道に、長い時間を動物に密着するカメラマンならではのもの。
例えばサバンナでは、ハイエナが夜明け前に狩りを行うシーンに遭遇し、
ライオンがそれを横取りする状況を観察する。

夜明け後、観光客が訪れた時にはライオンが餌を喰い、まわりをハイエナが取り囲むという
お馴染みの状況となっており、
「ハイエナがライオンの残し餌を狙っている」という図式となる。
だが、実は狩りが上手いのはハイエナのようだ、と岩合氏は語る。

またペンギンを追っている際には、
親と同じ大きさまで成長したオウサマペンギンの雛が、
親鳥が戻ってくると背を屈めて身を小さくするという。
岩合氏は「おそらくわざとだ」と、親により餌を求めるしぐさと解釈する。
もちろんそれが事実かどうかは更なる検証が必要だとしても、
そうした細かな動きに気づくかどうかというのは、やはり見る「眼」の細やかさだ。

もう一つ、その「眼」が発揮された対象に、同じくオウサマペンギンの脚がある。
岩合氏によると、オウサマペンギンの脚の太さが左右で異なっている個体が多いという。
餌か、傾斜か、育ちか、それはわからない。
イギリスの鳥類学者に尋ねても、「そんなところは見ていない」というようだ。
だが、確かに写真では太さが異なるものもある。
一般的な鳥類に比して、ペンギンの脚の径は太く、また潜水や氷上移動など、
脚を使うシーンは極めて多い。
そこに何か有意な差があるとすれば、そこには何か理由があるはずだ。

いずれにしても、こうした細やかな眼を持った野生動物カメラマンの日常を、
自身の言葉で語ってくれる本と言うのは、日本ではなかなか少ない。
カラー写真も多数満載され、ライオン、アザラシ、クジラ、ペンギン、ニホンザルと、
様々な野生動物をじっくり堪能できる。
また同時に、一歩間違えば命を失う、野生の厳しさも伝える写真の数々。
手頃に本ながら、期待以上の時間を提供してくれる一冊だ。
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category: 動物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

こんにちは。コメントありがとうございます。
実際のところ、撮影者が気づいているかどうかは、やっぱり撮影した写真に影響しますね。
というか、日常でもきちんと視ていないなあと反省することばかりです。
必要なのは、やっぱり対象に対する興味や愛情、尊重かなと思います。

BIRDREADER #- | URL
2016/06/26 11:37 | edit

おもしろく読みました。
やっぱり観察眼がないとただの写真ですから知っていて写し込む力が質を大きく変えるんですね。参考になります。

nitta245 #- | URL
2016/06/25 17:18 | edit

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