ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

現生人類のグレート・ジャーニーを再現する。「日本人はどこから来たのか?」  

日本人はどこから来たのか?
海部 陽介



(2016年3月現在、本書を検証するプロジェクトが、現在クラウドファンディング中である。
 詳しくは末尾、またはこちら「国立科学博物館 新たな冒険!3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」にて。)

現生人類の歴史を辿ろうとすると、大きく3つのテーマの答えが必要となる。
一つは、いかにして現生人類に進化したか。
もう一つは、なぜ(さまざまな原人・旧人の系譜から)現生人類だけが生き残ったのか。
もう一つは、いかにして世界中へ広がったのかである。

もちろん、それぞれ独立したテーマではなく、相互に関連した結果、現生人類のみが生き残ったのだろう。

これらについて、これまでも様々な説が提唱されてきたが、特に近年、
DNAの分析技術や分子生物学の発展、またその周囲の様々な科学的知見の蓄積により、
従来のように、遺跡だけではなく、
様々な分野からの検討材料が増加している。

また、インターネットの普及もあるだろうが、
考古学的資料の範疇に留まらず、様々な分野の論文等に、世界中の研究者が相互にアクセスし、
よりグローバルな視点からの研究も可能となったようだ。

そのおかげで、これまでには無い大局的なテーマについて論じられることが多くなったように感じる。

そして本書は、そうした先行研究を丁寧に精査しながら、
また、世界中の遺跡や人骨化石等-それも、年代判定が確実なものに限って-を用いて、
日本列島に暮らす現生人類が、いつ、いかなるルートで到達したのかというテーマ、
すなわち「アフリカから日本列島に至るまでの現生人類の旅」を、鮮やかに復元してくれるものだ。

非常に拙い概略だが、その旅を紹介したい。

著者によると、ユーラシア大陸に進出した現生人類は、 4万8000年前頃、ヒマラヤ山脈の南北に分かれた。
そしてそれぞれの集団は、独自の文化、石器技術を発展させながら、次第に東へ拡散していく。
その過程で、様々な旧人・原人と遭遇したかもしれない。
それらを経て、1万年後、東アジアのどこかで、南北ルートは再開し、その文化が混合する。
その混合文化の主が、南ルートで培った航海技術をもって進んだのが、対馬ルート。
今から3万8000年前頃と考えられる。

一方、北ルートの一部はそのまま東進し、サハリンから当時繋がっていた北海道へ進出する。
こちらは2万5000年前頃だ。

そして南ルートの一部は、その航海技術を用い、偶発的な漂流ではなく明確な意図をもった航海として、
台湾から100km離れた与那国島へ進出し、琉球列島に拡散する。

ユーラシア大陸を横断する2つのルート。日本に至る3つのルート。
そして想像以上に高い航海技術の存在など、
これまでになくダイナミックかつ具体的な説なのだが、
単なる思い付きではなく、細かな遺跡、人骨化石、石器技術、文化等の諸資料を踏まえながら、
堅実に、そして丁寧に展開されていくのが、本書の読みどころである。
さながら、推理小説を読むような論理展開と、
冒険小説をよむようなグレート・ジャーニー。

「日本人は大陸から渡来した」という大雑把な話や、「均一な縄文人」という先入観を打ち破り、
本書は極めて鮮やかな日本列島進出史を、僕らの前に描いてくれる。
しかも同時に、
この日本には1万以上の旧石器時代の遺跡があり、世界的にも優れた研究土台があること、
また伊豆半島-神津島間の、黒曜石を求めた往復航海が、現時点では世界最古(3万7500年前頃)であり、
それがとりもなおさず、日本に渡来した人類が高い航海技術をもっていた傍証ともなることなど、
日本の旧石器時代に対するイメージも大きく更新してくれる。

冒頭に掲げた3つのテーマのうち、
「いかにして世界中へ広がったのか」というテーマについて、
現時点での最新学説の一つを、ワクワクしながら楽しめる一冊だ。

さて、本書のルートの一つ琉球ルート、
また旧石器時代に高い航海技術をもっていたという点について。
著者自身が、これらの説を実感・検証するため、2016年4月から台湾からの航海プロジェクトも行うという。
国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト
その資金を現在、クラウドファンディング中。
4月12日までのため日数がないが、人によってはとても魅力的な特典が購入できる。
興味深いプロジェクトなので、ぜひ一度、ご確認いただきたい。

【目次】
はじめに 私たちはどこから来たのか?
第1章 海岸沿いに広がったのか?
第2章 私たち以前の人類について
第3章 ヒマラヤ南ルート
第4章 ヒマラヤ北ルート
第5章 日本への3つの進出ルート
第6章 対馬ルート、最初の日本人の謎
第7章 沖縄ルート、難関の大航海
第8章 北海道ルート、シベリアからの大移動
第9章 1万年後の再会
第10章 日本人の成立
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